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2020年7月1日水曜日

慢性腰痛に初のモノクローナル抗体薬

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 2020年06月30日 18:47
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 米・University of Rochester Medical CenterのJohn D. Markman氏らは、慢性腰痛患者を対象に神経成長因子(NGF)を阻害するモノクローナル抗体tanezumabの有効性と安全性を検討した第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験の結果をPain(2020年5月19日オンライン版)に発表。2カ月に1回のtanezumab 10mg皮下投与により、慢性腰痛患者における疼痛と身体機能が有意に改善したという。

10mgで疼痛軽減、5mgでは改善なし

 今回の試験は日本を含む8カ国の191施設で行われた。オピオイドを含む標準的な鎮痛薬を3種類以上使用しても効果が得られなかった難治性慢性腰痛の患者1,825例(平均年齢49歳、女性57.0%)を①tanezumab 5mg群および同薬10mg群(ともに407例、8週間に1回の皮下投与)②プラセボ群(409例)③トラマドール群(602例、100~300mg/日の経口投与)−の3群にランダムに割り付けて56週間治療し、その後24週間追跡した。中等症~重症の変形性関節症の症状・徴候およびX線画像所見を有する患者は除外した。
 主要評価項目は16週時の腰痛強度(LBPI、0:疼痛なし~10:最悪の疼痛)の変化とした。主な副次評価項目は16週時に50%以上の腰痛強度低下が認められた患者の割合、16週時のRoland Morris Disability Questionnaire(RMDQ)スコア(0:障害なし~24:重度障害)の変化、2週時のLBPIの変化とした。
 解析の結果、tanezumab 10mg群ではプラセボ群に比べて16週時のLBPIが有意に改善した(最小二乗平均差-0.40、95%CI -0.76~-0.04、P=0.0281、)。一方、tanezumab 5mg群では有意な改善が認められなかった(同-0.30、-0.66~0.07、P=0.1117)。
図. 腰痛強度(LBPI)最小二乗平均の変化
25723_fig1.jpg
Pain 2020年5月19日オンライン版)
 16週時に50%以上のLBPI低下が認められた患者の割合は、プラセボ群の37.4%に対してtanezumab 10mg群では46.3%と有意に高かった(オッズ比1.45、95%CI 1.09~1.91、P=0.0101)。また、tanezumab 10mg群ではプラセボ群に比べて16週時のRMDQスコアの改善度(最小二乗平均差-1.74、95%CI -2.64~-0.83、P=0.0002)および2週時のLBPIの改善度(同-0.42、-0.65~-0.19、P=0.0004)が有意に大きかった。

人工関節を要する重篤な有害事象は低頻度

 安全性の評価において、急速進行型変形性関節症を含む関節に関する有害事象の発現率はtanezumab 5mg群(1.0%)、トラマドール群(0.2%)、プラセボ群(0%)に比べてtanezumab 10mg(2.6%)で高かった。人工関節全置換術に至った患者は全例がtanezumab 10mg群だったが、7例(1.4%)にとどまった。
 以上の結果から、Markman氏らは「tanezumab 10mg投与は、難治性慢性腰痛患者における疼痛と身体機能をプラセボに比べて有意に改善したが、関節に関する有害事象の発現率はプラセボに比べて高かった」と結論している。
 さらに同氏は「世界が慢性疼痛に対する非オピオイド性鎮痛薬の開発を模索する中で、今回tanezumabの有効性が示されたことは画期的な進歩だ」と述べ、「将来的には腰椎固定術、オピオイド長期使用、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)のそれぞれのリスクと、NGF阻害薬に特有の発現率は低いが急速進行型の変形性関節症というリスクを比較する必要が生じるだろう。ベネフィットとリスクのバランスは、変形性関節症と慢性腰痛で異なると予想される」との見解を示している。
(太田敦子)

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