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最高のクラシックモデルを少し身近に
text:Richard Lane(リチャード・レーン) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) 理想的な1960年代のクラシック・フェラーリを購入するなら、天文学的な大金持ちにならなければ難しい。しかも実際に運転するとなれば、リスクを考えるとそれ相応の覚悟も必要になる。 【写真】復刻されたフェラーリ330 LMB レスモッドやコンティニュエイション・モデルは他にも (91枚) 最高のクラシックモデルの価値は、青々とした芝生の上に並べられるラグジュアリーなコンクールデレガンスの影響もあって、近年では驚くほど高額になっている。一般道を走らせるとしても、保険をかけることすら難しい。 仮に誤って事故を起こしてしまったら、修理も難しいだろう。代わりのクルマなど、見つからないに等しい。 しかし、クラシックとしての固有の歴史を必要としないのなら、技術革新で特定のクルマを比較的安価に制作することが可能になった。これらの理由が、一部のメーカーで公式にコンティニュエイション・モデルを制作するきっかけになっている。 同時に、いくつかの人たちは夢のクルマを手に入れるべく、果敢に挑戦するようにもなった。今回試乗した真っ赤なクラシックレーサーは、4台しか存在しないオリジナルのフェラーリ330 LMBではない。 しかし、ほぼ同じといえる完成度を備えている。一般道で運転した体験は、極めて特別。希少で高価なモデルを運転しているという、過剰に神経を擦り切らすような必要も、それほどまでは求められない。
コロンボのV型12気筒は4.0Lに
この真っ赤なクーペは、英国ハートフォードシャーに拠点を置くベルスポーツ&クラシック社によって作られた。もともとは、エド・カーターという1人の熱心なフェラーリ・ファンによってスタートしたプロジェクトで、独自のLMB制作が目的だったという。 どちらかといえば入手しやすい通常のフェラーリ330 GTを購入した彼は、専門家チームへコンバージョンを依頼した。ところが2015年にエドは事故で他界。クルマは未完成のまま残された。 そこでベルスポーツ&クラシック社が買い取り、クルマの完成を目指すことになった。利益目的のプロジェクトではなく、レストアを専門とする職人たちによる、意思表明の作品として。 その時代で最高のスポーツカーを仕上げたいという、高い志を表している。この330 LMBの完成に投じられた作業時間は、述べ4500時間以上。入手困難な部品は、イチから作り直されている。 1960年代のフェラーリは、モデル間での共通性も高い。この330 GTの部品も、多くが利用可能だったという。 ジョアッキーノ・コロンボが設計した3.0L V型12気筒エンジンは完全にバラされ、リビルド。排気量は4.0Lに増やされ、ドライサンプの潤滑システムが組まれている。 慎重にバランス取りを行い、最高出力は7600rpmで395psを発揮することを確認。オリジナルのLMBレーサーが主張していた馬力と、ほぼ同値を引き出したことになる。
ピタリと合ったアルミ製の美しいボディ
職人の手で打ち出されたアルミニウム製のボディは、当時のフェラーリより高精度。ドアやボンネットのフィッティングはタイトで、チリはピタリと合っている。塗装の仕上げも美しい。 ウインドウ周りの部品やシフトレバーのアルミ製ハウジングなど、多くの部品が新しく制作された。既存の入手可能な部品は、充分な品質だと判断されなかったのだという。 フロントフェンダーの後ろにあしらわれている、スクーデリア・フェラーリの黄色い盾は、かつてと同様に手書きされている。近寄って見ると、重ね塗りされたペンキの凹凸がわずかに見える。 1960年代のフェラーリの多くが後にアップグレードされているように、このクルマにも同じ内容が与えられた。インテリアは豪華さを増し、交通渋滞でも涼しい顔を保てるように電動の冷却ファンが付いている。必要な防音処理も。 現代的な燃料タンクも積んでいる。漏れやすいリベット止めの、オリジナルのタンクの内側に。 トランスミッションは、ドッグレッグ・パターンを持つレース仕様の4速MTではなく、5速MT。変速しやすいように、ギアの速度を調節してくれるシンクロメッシュも備わる。 日常的な速度域であっても、ドライビング体験は唯一無二。V型12気筒は、低回転域でも驚くほど扱いやすい。回転域を高めると、素晴らしいサウンドを放つ。2021年の水準でいっても、動的性能は感心するほどに活発だ。
本物と同じくらい特別な体験
5速MTは滑らかに変速を受け付けてくれる。ブレーキは不安ないほどに強力。オリジナルのLMBには、当時としては珍しくサーボが搭載されていた。このクルマにも、もちろん付いている。 サスペンションは驚くほどしなやか。オリジナルの快適性も、当時の優れた能力の1つだった。 サイドウォールの厚いミシュランXWXタイヤは、プッシュし始めると早々にグリップを失い出す。しかし変化は漸進的で、充分に予想できる範囲。ステアリングホイールを握る手のひらには、フロントタイヤからの豊かなフィードバックが伝わってくる。 多少混んでいる一般道でも構わない。制限速度の範囲でも構わない。クラシック・フェラーリを運転するという体験は、最高にエキサイティングだ。 このベルスポーツ&クラシック・フェラーリ330 LMBは、1台限りのワンオフ。シリーズ生産する予定はない。 ベルスポーツ&クラシック社のワークショップでは、Lシリーズのディーノと275 GTBが次の作業を待っている。もし自身のクラシック・フェラーリを今回の330 LMBのように仕立てたいのなら、誰でも依頼が可能だという。 夢のクルマを少しだけ身近に手に入れることができる、手段の1つだ。本物と同じくらい特別な体験を、精巧なレプリカなら得ることは可能なようだ。
AUTOCAR JAPAN
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