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プロペラがない風力発電機「マグナス式風車」の開発が進んでいる。平たい羽根の代わりに自転する円柱が風を受け、強風下でも発電できるという特徴がある。台風に襲われやすい離島の再生可能エネルギー電源として注目される。 【写真】水平軸型マグナス式風車のイメージ=宇都宮大の長谷川裕晃教授らのチームが2018年に公開した論文から フィリピン北部のバタネス州。1万5千人ほどが住むバタン島の丘に今年8月、変わった見た目の風車が建てられた。高さは約20メートル。プロペラの代わりに円柱が二つ並んでいる。東京のベンチャー企業「チャレナジー」が開発した「垂直軸型マグナス式風力発電機」だ。 野球の投手が投げるカーブやシュートが曲がるのと同じ「マグナス効果」の力で発電するのが特徴だ。 自転する球や円柱が風を受けると、回転方向が風と一致する側は空気の流れが速くなるが、反対側は遅くなる。この速度の差によって球や円柱の両側に圧力の差が生まれ、風の流れと垂直方向に力が働く。円柱を複数組み合わせれば、発電機とつながった軸を回すことができる。チャレナジーの風力発電機の出力は10キロワットだ。 風力発電は風が強いほど発電量が増えるが、強すぎると羽根が壊れる恐れがある。現在主流の3枚羽根のプロペラ式風車では、風速が秒速25メートル以上で運転を止める例が多いという。 一方、マグナス式は、風を受ける円柱の回転数をモーターで変えることで発生する力を制御できるため、風が強いときは回転数を下げて強風の影響を受けにくくできる。9月の台風14号では飛来物で一部が壊れ一時停止したが、原理的には、秒速40メートルという台風の風でも発電できるとされる。 また、円柱の回転数を調整すれば木の葉が揺れるほどの秒速4メートルの風にも対応できるほか、プロペラ式より軸の回転が遅いため、風力発電の導入の妨げになっている騒音や、鳥が巻き込まれるバードストライクを減らせるとも期待される。 チャレナジーはこれまで、沖縄県の石垣島にマグナス式の発電機を設置して実際に発電させ、円柱が3本だったのを2本にして軽量化した新型をフィリピンに設置した。円柱を回すのに必要な電力が減り、発電効率が高まるという。執行役員の水本穣戸さんは「フィリピンに設置後、アジアや中南米の国から問い合わせが来ている」と明かす。
朝日新聞社
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