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SpinLaunchをご存知だろうか。ある “特殊”な方法でロケットを打ち上げる企業だ。 【動画】SpinLaunchは初打ち上げに成功した様子を公開した 宇宙ビジネス業界では知る人ぞ知る企業。以前はホームページが整備されておらず、秘密のベールに包まれていた。しかし、このほどホームページが整備され、さまざまな動画がアップされている。こんなにもプロジェクトが進められていたのかと驚く。 今回は、そんな話題について紹介したいと思う。 SpinLaunchとは? SpinLaunchとは、ロケットロンチ企業。ロケットをカタパルト方式で打ち上げる計画の企業だ。カタパルト方式といっても、さまざまなタイプがあるが、SpinLaunchでは、遠心力を使ってロケットを打ち上げる。 以下のイメージ画像をご覧いただきたい。斜めに設置された白色の大型の円筒があるだろう。この円筒の底面には、時計の長針のような黒い物体(Hyper Tether)が回転する。 この円筒内は真空状態になり、この長針は1分間に450回転するほど高速に回転する。そしてあるタイミングで右側に煙突のように飛び出したところ(Launch Tunnel)から、ロケットが出射するのだ。このシステムをOrbital Acceleratorと呼ぶ。 では実際のロケットはどのようなものだろうか。先端が他のロケットよりも鋭利な印象だ。 実はこのロケットは2段式。打ち上がった後、ある高度で、まずロケット外側部分が分離し、内部だけになる。そして先端に取り付けられたペイロード、2段階目部分、1段階目部分が剥き出しとなった状態で高度を上げていくようだ。 では、なぜSpinLaunchはこのような打ち上げ方式を採用するのだろうか。実は、このOrbital Acceleratorは電気によって駆動される。他のロケットに比べ、燃料は4分の1に削減、コストは10分の1に削減、そして1日に複数回打ち上げることができるようになるという。最初の立ち上げは、2024年後半を予定しているという。 そして2021年10月21日、米国のニューメキシコ州のSpacePort Americaに設置されたSpinLaunchのSuborbital Acceleratorから試験的にロケットが発射され、見事成功した。 高さは50mほど。非常に特徴的な形をしている発射台だ。実際に、発射シーンが収められた動画もあるのでご覧いただきたい。 ここで、読者のなかにはある疑問に気づいたかたもいるのではないだろうか。今までの液体燃料、固体燃料で推力を得るロケットは、振動、音響が発生する。そのため、人工衛星もそれに耐えうるよう設計され試験をパスし宇宙へと運ばれる。 しかし、SpinLaunchのロケットは、遠心力と電気で駆動するため、振動、音響の影響がない。一方で、強い遠心力が発生するためのその高Gに耐えうるよう衛星を設計しなければならないのだ。 そのため、SpinLaunchでは、この高Gに耐えうる衛星やコンポーネントの開発にも着手しているという。 いかがだっただろうか。カタパルト方式という特殊な打ち上げ法に注目していたが、深く見ていくと、SpinLaunchは宇宙ビジネス市場を変える企業となるかもしれない。 ロケットという輸送分野でも、打ち上げ方式が変わると搭載するペイロードに加わる環境が変わるため、ペイロード設計が変わるのだ。それによって、さまざまなコストが変わってくるだろう。どのような打ち上げ方式が最適なのだろうか。 齊田興哉 さいだともや 2004年東北大学大学院工学研究科を修了、工学博士。同年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入社し、2機の人工衛星プロジェクトチームに配属。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。現在は、コンサルティングと情報発信に注力。書籍に「宇宙ビジネス第三の波」、「図解入門業界研究 最新宇宙ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」など。テレビ、新聞、Webサイト、セミナー・講演も多数。
齊田興哉
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