世界初マイクロ波マンモグラフィのプロトタイプ機が完成
痛みなく被曝せず早期発見に貢献する世界初のマイクロ波マンモグラフィのプロトタイプ機が完成。これまでの研究成果および協力企業と資本提携したことを発表。
神戸大学数理データサイエンスセンターの木村建次郎教授が創業した、株式会社Integral Geometry Scienceは、乳がん検診の精度向上に寄与する技術・マイクロ波マンモグラフィ(※1)の実用化と普及を進める資金確保を目的に、協力企業と資本提携(総額約20億円)しました。本機器は、乳房の電磁物性に基づき、これまでに行った臨床研究において、高濃度乳房(※2)を含む全てのタイプの乳房で高い乳がん検出感度を有することが示され、将来的に乳がん検診の世界標準になることが期待されています。
※ 本記事は研究成果の発表に関する報告であり、製品広告ではありません。
※ 本記事は研究成果の発表に関する報告であり、製品広告ではありません。
■現行の乳がん検診の課題、高濃度乳房とは
現行の乳がん検診において、超音波技術、核磁気共鳴画像法(MRI)、ポジトロン断層法(PET)など、様々な医療画像診断機器の中で、乳がん検診として最も優れたものとしてX線マンモグラフィが世界標準の地位を築いてきました。しかしながら、近年、その有効性が大きく疑問視されております(図1)。
■散乱の逆問題の解決とは
上記の課題に対して、乳房の体積の90 %以上を占める脂肪と、血管と細胞が密集し水分が多いがん組織との間で大きな反射が観測されるマイクロ波は、乳がん検出に理想的な波動と考えられますが、四方八方に散乱したマイクロ波の観測信号から、散乱体である乳がん組織を映像化することは、応用数学上の未解決問題ともいえる散乱の逆問題と呼ばれ、実現の前に立ちはだかる大きな原理的な壁と考えられていました。木村建次郎博士および木村憲明博士(株式会社Integral Geometry Science CEO)は多次元空間における散乱場の基礎方程式の導出と、これを解析的に解くことを世界で初めて成功し、日米欧中9か国で「散乱の逆問題の解法と画像化」の特許を取得することに成功するとともに(図5)、大学発スタートアップ、株式会社Integral Geometry Scienceを創業し、医療機関とともに、国立研究開発法人日本医療研究開発機構医療分野研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)に取り組み、世界で初めてマイクロ波を使ったマンモグラフィのプロトタイプ機を開発いたしました(図6)。
■開発されたマイクロ波マンモグラフィのプロトタイプ機の性能とは
図7にマイクロ波マンモグラフィのプロトタイプ機の外観及び測定風景を示します。
■開発経過と今後のスケジュール
マイクロ波マンモグラフィは2013年に試作機を開発。2015年に日本医療研究開発機構(AMED)の事業に採択され、原型機を開発しました。既に日米欧中9か国で基本特許が成立し、第一回日本医療研究開発大賞 AMED理事長賞を受賞(図9)、総理官邸にて表彰されました。
■資本提携企業
■株式会社Integral Geometry Scienceについて
散乱したマイクロ波などの波動から、外部からは見えない構造等を画像化することは極めて困難で、応用数学の未解決問題「散乱の逆問題」と呼ばれてきました。木村建次郎博士および木村憲明博士(株式会社Integral Geometry Science CEO)は多次元空間における散乱場の基礎方程式の導出と、これを解析的に解くこと世界で初めて成功し、日米欧中9か国で「散乱の逆問題の解法と画像化」の特許を取得。この研究成果を社会実装するため、2012年に株式会社Integral Geometry Scienceを設立しました。同社は神戸・ポートアイランドの神戸大学インキュベーションセンターに研究開発拠点を置いており、インフラ構造物の劣化を検知する非接触インフラ検査装置、リチウムイオン電池内部の異常電流を検知する電流経路映像化装置などを実用化しています。
株式会社Integral Geometry Science ホームページ
http://ig-instrum.co.jp/
■注釈
※1 マイクロ波マンモグラフィ
本機器は未承認機器であり、3年後の販売開始に向けて医療機器の承認申請を進めてまいります。
※2 高濃度乳房
乳房内にコラーゲン組織が高密度に存在するもの。コラーゲン組織はX線を通しにくく、X線マンモグラフィで撮影すると乳房全体が白く写り、乳がん組織を発見することが難しい。2017年12月31日時点で、米国内の30州では高濃度乳房の女性に対し、がん発見が困難であることを、告知することが義務化されている。高濃度乳房では超音波エコー検査を用いることが多いが、乳房は超音波が伝搬しにくい物性のため、低S/N、低コントラスト比が大きな課題である。
現行の乳がん検診において、超音波技術、核磁気共鳴画像法(MRI)、ポジトロン断層法(PET)など、様々な医療画像診断機器の中で、乳がん検診として最も優れたものとしてX線マンモグラフィが世界標準の地位を築いてきました。しかしながら、近年、その有効性が大きく疑問視されております(図1)。
50歳未満のアジア人女性の79 %、欧米人女性の61 %、黒人女性の56 %、ヒスパニック女性の55 %は高濃度乳房というタイプの乳房を持っており(図2)、X線マンモグラフィにて撮像すると乳房全体が白濁したコントラストとなるため、図3のように乳がん組織と正常組織を判別することは困難を極めます。
超音波エコー等、超音波関連技術は高濃度乳房に対してX線マンモグラフィの代替の候補として取り上げられますが、物性論の観点から考察すると、乳房の大半を占める脂肪は、その構成分子間の摩擦により、超音波は著しく減衰します。そのため、超音波関連技術は低S/N、低コントラスト比が原理的課題となっています(図4)。
■散乱の逆問題の解決とは
上記の課題に対して、乳房の体積の90 %以上を占める脂肪と、血管と細胞が密集し水分が多いがん組織との間で大きな反射が観測されるマイクロ波は、乳がん検出に理想的な波動と考えられますが、四方八方に散乱したマイクロ波の観測信号から、散乱体である乳がん組織を映像化することは、応用数学上の未解決問題ともいえる散乱の逆問題と呼ばれ、実現の前に立ちはだかる大きな原理的な壁と考えられていました。木村建次郎博士および木村憲明博士(株式会社Integral Geometry Science CEO)は多次元空間における散乱場の基礎方程式の導出と、これを解析的に解くことを世界で初めて成功し、日米欧中9か国で「散乱の逆問題の解法と画像化」の特許を取得することに成功するとともに(図5)、大学発スタートアップ、株式会社Integral Geometry Scienceを創業し、医療機関とともに、国立研究開発法人日本医療研究開発機構医療分野研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)に取り組み、世界で初めてマイクロ波を使ったマンモグラフィのプロトタイプ機を開発いたしました(図6)。
この新しい画像を作り出す数学は、波動の散乱の問題には普遍的に適用することができ、今回の乳がん計測のような医療画像診断のみならず、資源探査、老朽化するインフラ構造物計測等、遺跡探査など、あらゆる物体の可視化を目指す技術の著しい発展をもたらします。
■開発されたマイクロ波マンモグラフィのプロトタイプ機の性能とは
図7にマイクロ波マンモグラフィのプロトタイプ機の外観及び測定風景を示します。
このプロトタイプ機を用いて、これまでに神鋼記念病院、兵庫県立がんセンター、神戸大学附属病院、岡本クリニックなどの協力病院で、臨床研究を実施しました(今後、レディースクリニックやぎでも実施予定)。図8に臨床研究結果の一例として、高濃度乳房のがん患者に対するX線マンモグラフィ画像とマイクロ波マンモグラフィ画像の比較及び健常者に対するマイクロ波マンモグラフィ画像を示します。臨床研究において、高濃度乳房を含む全てのタイプの乳房で高い乳がん検出感度を有することが示されました。注目すべきはコントラスト比の高さです。このマイクロ波マンモグラフィが全世界で広く普及されることで、多くの乳がんで苦しむ女性を救うことが期待されます。
■開発経過と今後のスケジュール
マイクロ波マンモグラフィは2013年に試作機を開発。2015年に日本医療研究開発機構(AMED)の事業に採択され、原型機を開発しました。既に日米欧中9か国で基本特許が成立し、第一回日本医療研究開発大賞 AMED理事長賞を受賞(図9)、総理官邸にて表彰されました。
今年4月には厚生労働省から「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定され、承認審査期間を半減(12か月から6か月へ)されることになっています。2022年までの実用化を目指します。日本国内第一優先で実用化を達成し、欧米、アジア諸国など世界各国で承認をとり、全世界に販売拠点を形成、世界中の男性、女性がマイクロ波マンモグラフィをいつでも受診できる体制を整備する計画です。
■資本提携企業
- みやこキャピタル株式会社
- 凸版印刷株式会社
- CYBERDYNE株式会社
- 第一生命保険株式会社
- 旭化成株式会社
- 岡本交二 医師
- 日本アジア投資株式会社
- 南塚産業株式会社
- 株式会社ケイエスピー
■株式会社Integral Geometry Scienceについて
散乱したマイクロ波などの波動から、外部からは見えない構造等を画像化することは極めて困難で、応用数学の未解決問題「散乱の逆問題」と呼ばれてきました。木村建次郎博士および木村憲明博士(株式会社Integral Geometry Science CEO)は多次元空間における散乱場の基礎方程式の導出と、これを解析的に解くこと世界で初めて成功し、日米欧中9か国で「散乱の逆問題の解法と画像化」の特許を取得。この研究成果を社会実装するため、2012年に株式会社Integral Geometry Scienceを設立しました。同社は神戸・ポートアイランドの神戸大学インキュベーションセンターに研究開発拠点を置いており、インフラ構造物の劣化を検知する非接触インフラ検査装置、リチウムイオン電池内部の異常電流を検知する電流経路映像化装置などを実用化しています。
株式会社Integral Geometry Science ホームページ
http://ig-instrum.co.jp/
■注釈
※1 マイクロ波マンモグラフィ
本機器は未承認機器であり、3年後の販売開始に向けて医療機器の承認申請を進めてまいります。
※2 高濃度乳房
乳房内にコラーゲン組織が高密度に存在するもの。コラーゲン組織はX線を通しにくく、X線マンモグラフィで撮影すると乳房全体が白く写り、乳がん組織を発見することが難しい。2017年12月31日時点で、米国内の30州では高濃度乳房の女性に対し、がん発見が困難であることを、告知することが義務化されている。高濃度乳房では超音波エコー検査を用いることが多いが、乳房は超音波が伝搬しにくい物性のため、低S/N、低コントラスト比が大きな課題である。
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