7月1日、北京で中国共産党の創立100周年を祝う記念式典が行われた。1921年にわずか五十数人でスタートした中国共産党の党員は、100年という時間をかけて約9600万人にまで膨れ上がり、世界最大の政治組織となった。
党中央組織部の統計によると、党員は1990年代生まれなど若年層が増え、大卒以上の高学歴者が約半数を占めているが、実際、どのような人が党員になっているのだろうか?
中国人が皆、共産党員ではない
中国共産党の党員数、約9600万人(2021年6月現在)を人口(約14億人)で割ると、人口の6~7%、中国人の約15人に1人という計算になる。日本では、中国人は皆、党員である(党員であることが義務である)と誤解している人がいるかもしれないが、そうではない。
2002年に江沢民総書記(当時)が企業家の入党を認め、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が党員であることが判明して大きなニュースになったこともあったが、党員になるには厳しい審査がある。もし党員になりたいと本人が望んでも、なれない場合のほうが多い。
では、どのようにして党員になるのだろうか。筆者は以前、東京都内在住で、党員だという30代の中国人の友人に、党員になる資格について話を聞いたことがある。ここ数年、審査が徐々に厳しくなっているといわれるが、基本的に審査の過程は大きく変わっていないそうだ。
友人によると、党員資格を得られるのは18歳以上で、中国の数え年で高校2年生から入党できるが、現実的には大学に入学した後という人が多いという。教師の薦めなどもあるものの、基本的には自ら立候補する。
「日本では中国共産党員=怖い組織、というイメージを漠然と持っている人が多いかもしれませんが、中国でのイメージはまったく異なります。中国では、中国共産党の党員になること=ステータスだと捉えている人が多いと思います。党に入ること自体、難しいので、それだけでも成績優秀者、人格者という証になります」(中国人の友人)
党員になるには「選挙」が必要
まず入党申請書、論文、党員の推薦状などの書類が必要で、これらを揃えたら、党規約を学び、学生会議にかけられる。成績優秀であることは大前提だが、その上、人柄、リーダーシップ、日頃の素行など総合的に審査され、最終的にはクラスや学年の公平な選挙によって選出される。
成績がよくても、クラスメートなどから信頼されないような人物は選出されないという。選出後は大学内にある党の組織で、さらに一定期間、教育を受ける。正式な党員になるまでには2年ほどの時間がかかる。これが党員になるまでの一連の流れだ。
この友人の場合、規模が小さい大学だったが、同じ年に党員になれたのは、友人を含めて数人だけしかいなかったという。まさに狭き門であり、エリートの証だ。
大手企業には必ず党支部がある
大学卒業後、友人が入社した外資系企業は社員数が500人ほどで、そのうち党員は10人。中国では党員が3人以上いる場合、党支部を設置する決まりがある。友人が入社した企業にも党支部があり、定期的な集まりがあったそうだ。
現在、党支部の組織率は国有企業では9割以上、民間企業でも5割以上といわれ、アリババ、テンセント、ファーウェイなどの大企業にはもちろんあるし、ある程度規模の大きい日系など外資系企業にもある。
国有企業のトップは党員であることが義務づけられている。民間企業でも、以前は出世するためには党に入ることが必須だといわれていたが、「近年では、日本の労働組合などと同じように形骸化が進み、党員であるというだけでは、必ずしも出世の早道になるというわけではないです」(友人)
国有企業の社員であっても、党員ではない人も大勢おり、党員でないまま働き続けても、日常業務には何ら支障はないという。
ただし、公務員の場合は、党員であるかどうかが昇進に影響する場合もあるそうだ。
友人の場合、中国で数年働いたのち、留学生として来日し、そのまま10年以上、日本で働き続けている。
「私の場合、もう長い間、党費も払っていないし、党から何か連絡が来るわけでもありません。党員の知り合いはいますが、日本に住んでいる党員同士のネットワークなどもありません。海外在住の党員は、おそらく同じような状況だと思います」という。
近年、中国では若者を中心に「党員になりたい」という人が増えており、習近平政権のもとで他人よりも上に行くために党員資格を持つことが何らかのメリットになる、と考えている人は少なくない。しかし、単に党員になるだけで出世できるほど、今の競争社会の中国は甘くはないといえるだろう。
参考記事:
中国共産党創立100年で大注目 日本の早稲田大学に留学した2人の重要人物とは……
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