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 日本マイクロソフトの売上高が1兆円を突破した。2023年11月13日発行の官報・決算公告によれば、2023年度(2022年7月~2023年6月)売上高は前年度比15.4%増の1兆223億円。売上総利益(粗利:グロスマージン)は18.7%増の2421億円、営業利益は10.7%増の465億円、純利益は21.2%増の332億円だった。

 2018年度の売上高は4567億円だったから、過去5年の平均成長率は17.5%。テレワーク向けのTeamsやパソコンの需要増に加え、クラウドのAzureが急成長した。Azureの実績は2000億円弱とみられる。

 日本マイクロソフトの決算で違和感を覚えるのは利益率の低さだ。過去5年平均を見ると粗利率は22.7%、営業利益率は4.8%。親会社の米マイクロソフトの粗利率は68.2%、営業利益率は39.9%。営業利益率の日米の開きは35.1ポイントもある。

 マイクロソフトに次いでソフトウエア世界2位の米オラクルの営業利益率は5年平均で31.5%、日本オラクルは32.9%と日米で大差ない。アクセンチュアもそのようである。

 営業利益率が低いのだから、営業経費率は高い。営業経費は売上原価と販売費及び一般管理費(販管費)からなる。5年平均の売上原価率は日本マイクロソフトが77.2%に対して日本オラクルが51.7%で開きがある。5年平均の販管費率は日本マイクロソフト18.0%、日本オラクル15.4%で大差ない。

 上場企業の日本オラクルについて、売上原価の構成比率を5年平均で見ると、ソフトの仕入れ原価に相当するとされるロイヤルティーが67%、ハードウエアの仕入れ原価が13%、その他が20%(業務委託費・賃借料など)。5年平均のロイヤルティー額は売上高の35%に当たる。

 日本マイクロソフトは原価構成を明らかにしていないが、パソコンやゲーム機などハードがあるので、売上原価に占めるロイヤルティーの比率を日本オラクルと同じ67%と仮定すると、ロイヤルティー額は売上高の52%を占める。日本オラクル並みの35%にすれば5年平均の営業利益率は4.8%から21.8%に跳ね上がる。

 ロイヤルティー額が高いため、過去5年の売上高合計が日本オラクルの4倍ある日本マイクロソフトにかかった法人・住民・事業税は日本オラクルの半分だった。日本マイクロソフト広報は「業績についてのコメントは控える」と述べた。

図 外資IT大手4社日本法人の売上高(2018~2023年度)
図 外資IT大手4社日本法人の売上高(2018~2023年度)
伸び率に差
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図 4社の全世界および日本法人の営業利益率(2018~2023年度)
図 4社の全世界および日本法人の営業利益率(2018~2023年度)
日米で極端な開き
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米マイクロソフトと日本マイクロソフトは2023年6月期まで、米IBMと日本IBMは2022年12月期まで、アクセンチュア本社は2023年8月期まで、アクセンチュア日本法人は2022年8月期まで、米オラクルと日本オラクルは2023年5月期までを記載(出所:決算報告や官報をもとに日経コンピュータ作成)
北川 賢一(きたがわ・けんいち)
新聞社・出版社を経て、1983年から日経コンピュータ記者。日経ウォッチャーIBM版と日経情報ストラテジーの2誌を創刊し、編集長を務める。現在は日経クロステック兼日経コンピュータ編集