https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nnw/18/041800012/011900234/
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「大量にデータを生み出す都市部にデータセンター(DC:Data Center)を設置したくても土地が少なく運用に必要な電力も足りないため、設置を見合わせるケースが出てくる」(NTTの高杉耕一未来ねっと研究所フロンティアコミュニケーション研究部部長)。
AI(Artificial Intelligence、人工知能)などを中心としたデータの蓄積・利用が広がる中、DC需要も大幅に増えている。一方で、冒頭の発言で挙げた課題が顕在化し始めている。この課題解決を目指し、NTTは新たなDC間接続の技術開発を進めている。
現在のDC間接続(DCI:Data Center Interconnection)はDC同士が1対1で接続し、その接続関係は固定的だ。しかも、一般的に約30km圏内にDC同士が存在しなければ遅延が大きくなって、分散したDCの一体的な運用が難しくなる。このことから都市部への大規模DCの集中を招き、土地や電力などの問題につながっている。
そこでNTTは次世代ネットワーク構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)▼」で培っている技術を適用し、多対多でDCを接続でする「データセンターエクスチェンジ(DCX:Data Center Exchange)」に挑んでいる(図1)。これにより都市部に集中していたDCの分散化も進める。2024年度にPoC(Proof of Concept)▼をし、2027年度前後での顧客提供を目指す計画だ。
「DCはデータドリブン社会においてニーズがますます高まるとともに、膨大な電力を消費していくことになる。DC分散で課題を解決していきたい」。先だって2023年11月に開いたNTT R&Dフォーラム2023で、同社の島田明社長はこう語っていた(図2)。
100km離れても一体的な運用
具体的にDCXとは何か。まず主な構成要素には、DCとキャリアコントローラー、光信号の経路を切り替えるスイッチなどがある。
キャリアコントローラーとは、各DCの接続を制御するソフトウエアで、DC間の接続に合わせて指示を実行する。DC間には光スイッチなどで構成するDCX網があり、そこで接続関係を調整する。
既存技術では接続関係が固定化されていたが、キャリアコントローラーとスイッチなどを利用することで、任意のDCと接続が可能になるわけだ。DC間はIOWNの柱として開発を進める「APN(All-Photonics Network)▼」で接続する。
DCXを適用したDC同士であれば、「距離が100km以下で往復遅延1ms以下に抑えられる」(NTTの片山陽平未来ねっと研究所フロンティアコミュニケーション研究部主任研究員)。つまり、DC間に約100kmの距離があっても、DC同士をまるで1つのDCとして仮想的に運用できるようになる(図3)。
DCXが実現すると、DCの規模拡張・接続などの柔軟性が格段に高まる。約30kmに押し込まれていたDCの設置がより広範囲で実現できるからだ。
これによりDCが大規模化に頼る構図から中・小規模の大きさで分散していく方向へと移行し、土地や電力などの問題を緩和できる可能性を秘めている。より狭い土地にDCを設置できたり、地方の再生可能エネルギーを有効活用できたりするかもしれない。
IOWN構想の仕様を検討するIOWN Global Forumを介して、「セキュリティーや災害の観点から1つのDCだけにデータを集めるわけにはいかない」という声も顧客からNTTに届いているという。
またNTTは物理的な信号経路の接続を自動的に設定できる技術を開発したと2023年10月に発表済みだ。従来、熟練作業者が数時間かかる作業を数分に短縮できるため、大量の分散型DCができても現場の作業負担を小さくできる。
DCの都市部集中は日本だけでなく、世界各国が抱える問題だ。そのため、NTTはDCX・分散型DCの実現を目指し、国内だけでなく、米英での設備の試験導入も2023年度内で完了させるという。将来的には日米英以外の国での導入も進めていく計画だ。
当然、技術的な課題がないわけではない。NTTが想定する分散型DCはキャリアコントローラーからの指示を受けて接続関係を構築する。同技術を運用していくには、キャリアコントローラーからの指示を受け取る送受信機もDC内に設置することになる。NTTの高杉部長は「DCに設置する送受信機に関する技術の標準化、多様な製品の準備などが課題になる。ユーザーが利用したい技術・製品をそろえなければならない」とする。
NTTが2019年に打ち出した次世代のネットワークと情報処理基盤の構想を指す。大容量のデータ通信がさらに増える2030年代を見据え、ネットワークから端末までの全てに光技術を導入することで、低消費電力で大容量・高品質な通信環境を実現することを目指す。
概念実証。新しいアイデアやコンセプトの実現可能性を検証すること。
ネットワークから利用者の端末まで全てに光技術を適用し、ユーザー1人に対して「光の波長」を1本割り当てるというコンセプトである。オール光の実現により、「電力効率100倍」「伝送容量125倍」「エンド・ツー・エンドの遅延時間200分の1」の3つを目指す。
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