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2024年1月30日火曜日

NTT、動き出した光の半導体 問われる「巻き込み力」 ネット・IT 2024年1月30日 11:57 [会員限定記事] NTTが次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」の実現に一歩踏み出す。中核となる「光の半導体」の開発に向け政府支援を得ながら米インテルなど日米韓の半導体メーカーなどと連携する。実現すれば消費電力を100分の1に抑えられる一方、量産や普及へのハードルは高い。この先は台湾勢などより多くの世界大手を巻き込めるかが焦点となる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC29AHU0Z20C24A1000000/

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC29AHU0Z20C24A1000000/



経済産業省が所管する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は30日、次世代通信規格「6G」向け通信基盤の研究開発事業としてNTTなどに計約452億円を支援すると発表した。

2030年ごろの普及が予想される6Gでの活用を見込むのが、光技術を使って少ない電力で大容量のデータをやりとりできるIOWNだ。そのためには電子処理を光に置き換えて電力消費を減らす光の半導体が必要となる。

光の半導体は電力を大量消費する生成AI(人工知能)の普及を支えるためにも重要性は高まっている。斎藤健経済産業相も30日の閣議後記者会見で「将来のゲームチェンジにつながることを期待する」と述べた。

今回決まった枠組みは半導体基板の新光電気工業や半導体メモリーのキオクシアなどに加え、演算用の半導体のインテルや記憶用の半導体に強い韓国半導体大手のSKハイニックスと連携する。海外勢からは生産技術について助言を受ける。

「まずはここから。さらに連携を広げていく」

国際連携の枠組みが整ったことを受け、プロジェクトに携わるNTT関係者はこう意気込む。光の半導体の実用化や普及は、この関係者が話した「連携」をどこまで進められるかにかかっている。

大きな壁の一つが量産技術やコスト競争力の確立だ。半導体が「産業のコメ」としてあらゆる機器に使われているのは、量産工程が確立されて安価に利用できるからだ。光の半導体も様々な場面で使われるようにするには、設計から製造委託、装置、素材など様々なプレーヤーとともに強固な供給網を築く必要がある。

「ラピダスの半導体に光電融合のチップレットやインターフェースをつけていきたい。連携は視野に入っている」「連携先は日米韓だけとは一概に言えない。台湾勢と連携しないと」――。NTT幹部の言葉からも半導体製造受託大手と連携した上で量産に目指す考えがうかがえる。

光の半導体の実現には光信号を半導体チップに入力する際に電子信号に切り替える「交換機」や、演算や記憶などを担う半導体の連携が必要となる。新しい半導体を普及させるには、製造受託大手を巻き込んで生産コストを抑えられる半導体の仕様を確立しなければならない。

世界各地で強い影響力を持つ海外勢の協力も欠かせない。NTTが国際標準化を狙って20年に立ち上げた国際団体「IOWNグローバルフォーラム」にはインテルやソニーグループなど138の企業・団体が参加するものの、半分を日本勢が占める。世界的に普及させるには多くの海外大手を巻き込めるかが焦点になる。

IOWNはエンターテインメントや街づくりなどでの利用事例はあるが、産業分野での活用は産業用ロボットの挙動を遠隔地から入力する試みなどに限られている。NTTはメーカーなどと連携して使い方を探っている段階で海外企業と連携しながら有用性を示すことが求められる。

光の半導体の生産技術の確立に向けた資金確保も課題だ。開発や生産体制の確立には膨大な資金がかかり「企業だけで取り組めるものではない」(NTT幹部)。政府からの継続的な支援を得るためには着実に成果を出し続けなければならない。

NTTは旧公社時代、NEC富士通など「電電ファミリー」と呼ばれる企業にトップダウンで指示することで技術開発に取り組んでいた。技術が高度化した現在は外部と開発に取り組み、その果実を分かち合う「オープンイノベーション」が技術革新の源となることが多い。

NTTの立ち位置もピラミッドの頂点から円の中心に移り変わっている。世界で普及するにはより多くの仲間づくりが欠かせない。

携帯電話向けインターネット接続サービス「iモード」は画期的な仕組みだったが、「自分たちの技術を押しつけた」(澤田純会長)ことで世界展開でつまずいた。IOWNでその教訓を生かせるかが問われている。

(佐藤諒、宮嶋梓帆)

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