https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02732/012500001/?n_cid=nbpnxt_mled_itmh
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競争力の源泉となるシステムは自らの手で開発する。こうした考えに基づいてここ数年、ユーザー企業によるシステム内製が大きなトレンドになっている。これまでは外部のシステムインテグレーター(SIer)に丸投げしていたシステム開発を、ユーザー企業自らが手掛けるのだ。
ただ、自社でシステムを開発してこなかった企業がいきなり開発を始めるのはハードルが高い。加えて、ソフトウエアエンジニアの深刻な人材不足という問題もある。
こうした問題を解決すると期待されているのが「生成AI(人工知能)」だ。生成AIを使えば、システム開発を始めるハードルを大幅に下げられ、システムを内製しやすくなる。
ユーザー企業が生成AIを生かすパターンは2つある。1つは生成AI対応の開発支援ツールを利用すること、もう1つは生成AI自体を組み込んだシステムを内製することだ。このうち内製化のハードルを下げるのは、前者の開発支援ツールの利用である。
開発支援ツールは、生成AI対応のノーコード/ローコードツールとプログラマー向けのコード補完サービスに大きく分かれる。まず、ノーコード/ローコードツールを見ていこう。
言葉で指定するだけでアプリを自動生成
生成AIに対応したノーコード/ローコードツールに共通している特徴は、「言葉で指定するだけでつくりたいものを自動生成できる」という点だ。これまでシステム開発にはプログラミング言語が必要だったが、代わりに人が話す言葉(自然言語)を使えるようになる。
ノーコード/ローコードツールには、業務部門の現場による開発、いわゆる市民開発向けのものと、ERP(統合基幹業務システム)の周辺システムなど比較的大規模なシステム開発向けのものがある。
生成AIに対応した市民開発向けツールには、米Google(グーグル)の「AppSheet」や米Microsoft(マイクロソフト)の「Power Apps」がある。AppSheetの生成AI機能が「Duet AI for AppSheet」、Power Appsの生成AI機能が「Copilot in Power Apps」だ。
これらの特徴は、欲しいアプリを言葉で指定するだけで、アプリそのものが生成される点だ。これをひな型として、現場の要望に合わせた細かい調整を加えることもできる。Power Appsはもともとは少量のコードの記述が必要なローコードツールだが、生成AI機能により「ローコードから(コードの記述が不要な)ノーコードにシフトし、市民開発を加速する」(日本マイクロソフトの内田真美ビジネスアプリケーション事業本部GTMマネージャー)という。
AppSheetを使ってシステムを内製する1社がTBSテレビだ。同社は2023年12月に正式に導入し、現場でのシステム内製に本格的に乗り出した。試験導入段階の同年7月にハッカソンを実施し、機材管理アプリやスタッフ管理アプリなどを開発済みだ。
生成AIの利用も進めていく。同社の宮崎慶太メディアテクノロジー局イノベーション推進部長は「Duet AI for AppSheetの本格的な利用はこれからだが、この機能を活用すれば、技術部門のサポートがなくても現場だけでアプリを作成できるようになる」と期待する。また、AppSheetだけでは実装できない処理は、対話型AIサービス「ChatGPT」を使ってPythonコードを生成して補うといったこともしているという。
一方、大規模システム向けのローコードツールも続々と生成AI機能を発表している。いずれも2024年内に登場予定だ。システム全体を生成するのではなく、入出力画面を生成するものが多い。
米OutSystems(アウトシステムズ)は、ローコードツール「OutSystems」向けに「Morpheus(モーフィアス)」という生成AI機能を開発中だ。言葉による指定で画面を生成できる。開発の知識がない従業員がこの機能を利用することで、開発者の裾野が広がることが期待できるという。
ウルグアイのGeneXus(ジェネクサス)は、ローコードツール「GeneXus」に生成AIを組み込んだ「GeneXus Next」を開発している。GeneXusは、「ナレッジベース」と呼ばれる中間生成物をいったん作成し、ここからJavaやC#のコードを生成する仕組みになっている。ナレッジベースには画面の情報も含まれている。
現状のGeneXusではナレッジベースの作成にノウハウが必要だった。これに対し、GeneXus Nextでは言葉で指定するだけでナレッジベースを生成できるため、業務に詳しい現場の従業員がシステム開発に参加できるようになる。
NTTデータ イントラマートのBPM(ビジネスプロセスマネジメント)/ワークフロー系ローコードツール「intra-mart」も生成AIに対応する。言葉による指定で画面やビジュアルな業務フローのロジックを生成する機能を2024年春から提供する予定。加えて、利用データのログを基に生成AIがシステム改善のアドバイスを行うといった維持管理のための機能も同年秋の提供を目指して開発中だ。
先進的な6社の事例を紹介
システム内製を手掛けるユーザー企業のプログラマーにとっては、生成AIによるコード補完サービスも大きな武器になる。
代表的なサービスとしては、米GitHub(ギットハブ)が提供する「GitHub Copilot」がある。コードを書き始めると続きのコード候補を示したり、コメントからコード候補を生成したりする。
また、GitHub Copilotは「Copilot Chat」という生成AIによる対話機能も備えている。これを利用して、コードの意味を表示させたり、ユニットテストを生成させたりできる。
同様のコード補完機能や対話機能はグーグルの「Duet AI for developers」も提供している。同社のクラウドサービスや特定のサードベンダー製品に適したコードを生成するのが特徴だ。
開発支援ツールを使うのではなく、生成AI自体を組み込んだシステムを内製する企業もある。TOPPANは、オープンソースの大規模言語モデル(LLM)を独自に導入し、業務の効率化に生かしている。
この特集では、生成AIをシステム内製に生かしている先進的な6社の事例を紹介していく。
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