Pages - Menu

Pages - Menu

Pages

2024年2月10日土曜日

電池コスト削減へ「ドライ電極」 全固体の遅れで脚光。 2024年2月9日 5:00

https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC0836L0Y4A200C2000000


https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC0836L0Y4A200C2000000


注目キーワード
「ドライ電極」は、リチウムイオン電池の新しい製造技術である。これまで必要だった電極の乾燥工程をなくせることが最大の特長だ。リチウムイオン電池の課題である莫大な設備投資や製造コストを削減できる切り札になり得る。電気自動車(EV)向け車載電池への適用を目指し、世界の自動車メーカーや電池メーカーが開発に注力している。
「ドライ電極」の概要
一般的なリチウムイオン電池の電極製造工程は次の通り。まず、正極材や負極材、バインダー(接着剤)などを有機溶媒に混ぜてスラリーといわれる流動性のあるペーストにする。次に、スラリーを集電体となる金属箔に塗工し、乾燥炉で熱をかけて溶媒を除去する。乾燥したものをプレスして所定の厚さに仕上げ、ロール状の電極とする。
このうち乾燥炉は長さが50〜100mに達する巨大な装置で、電池事業の投資額を莫大にし、二酸化炭素(CO₂)排出量が多くなる主因となっていた。ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)によると、電池製造プロセス全体で消費するエネルギーの約3割を乾燥工程が占めていたという。
リチウムイオン電池の電極製造では、乾燥工程で多くのエネルギーを消費し、CO₂を排出していた。ドライ電極はこの乾燥工程をなくせる(出所:VWの資料を基に作成)
この課題と向き合ったのがドライ電極である。「ドライコーティング」や「ドライプロセス」などとも呼ばれる技術で、電極製造プロセスから乾燥工程を省いた。有機溶媒を使ったスラリーの代わりに、粉末状の電極材料を金属箔上に塗工する。
手法はいくつかある。他社に先駆けてドライ電極を実用化した米Tesla(テスラ)は、少量のバインダーの粉末を使っているようだ。電極材料とバインダーの粉末を混ぜ、熱したローラー上で集電体と電極材料を密着させ、短時間でバインダーを溶かして塗工するとの見方がある。
テスラは、米テキサス州の工場「ギガテキサス」で造る新型電池「4680」にドライ電極を適用した。実用化では先行したが、米メディアの報道によると4680電池の生産ペースが上がらず、同電池を搭載する新型EV「Cybertruck(サイバートラック)」量産のボトルネックになっているという。

VWは26年ごろに欧州・北米導入へ

持続可能で手ごろな電池を製造する上で「ゲームチェンジャー」となる技術――。ドライ電極をこう位置付けるのがVWである。同社は2024年末までに同技術の開発を完了させ、2026〜2027年に欧州と北米の電池工場に導入する計画である。乾燥炉をなくすことで、エネルギー消費の30%削減や工場床面積の15%削減などを目指す。これらにより、年間で数億ユーロの電気代を節約できると試算した。
開発は同グループの電池会社であるPowerCo(パワーコー)が担当する。印刷機メーカーのドイツKoenig&Bauer(ケーニヒアンドバウアー)と共同で、ドライ電極の製造技術を仕上げていく。粉末状の電池材料を集電体に塗工し、「髪の毛ほどの薄さの層にする」(VW)という。
VWグループが開発したドライ電極。印刷技術を使い、電極材料を薄く均一に成膜した(写真:VW)
電池メーカー各社も実用化を急ぐ。全固体電池の量産計画が遅れていることが背景にある。"次世代電池の本命"は開発こそ盛んだが、量産の壁が高い。このため、当面は既存のリチウムイオン電池がEV向け電池の主流になるとの見方が強い。ドライ電極を使ってコストやCO₂排出量、工場床面積などを削減できれば、競争力に直結する。
中国・寧徳時代新能源科技(CATL)や韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)などをはじめとする電池メーカー各社が取り組む中で、AESCグループ(横浜市)は、茨城工場(茨城県茨城町)にドライ電極の製造ラインを構築する予定である。
茨城工場は同グループがマザー工場と位置付ける拠点。現在は「第一棟」が完成した段階で、電池の製造を2024年3月に開始する。電池製造ラインとして「第二棟」「第三棟」を計画する他、電極製造ラインも別途構築する。この電極製造ラインに「ドライ電極技術を導入し、2026年に量産を開始する」(AESCグループ幹部)という。
AESCグループは茨城工場に建設予定の電極製造ラインにドライ電極技術を導入する計画である(出所:AESCグループの資料を基に作成)
(日経クロステック/日経Automotive 久米秀尚)

0 件のコメント:

コメントを投稿