高校生・高専生が自由研究の成果を競うコンテスト「JSEC(ジェイセック)2023(第21回高校生・高専生科学技術チャレンジ)」の最終審査会が23年12月上旬、東京・お台場の日本科学未来館で開かれた。全国174校の634人から、過去最多の343研究の応募があり、最終審査会には高く評価された30研究が出場、成果を発表し交流した。上位入賞した研究は、24年5月に米国・ロサンゼルスで開かれる世界大会「国際学生科学技術フェア(ISEF=アイセフ)」に日本代表として挑む。ISEFへの派遣は、過去最多の10研究になる予定だ。
【花王賞】大場誠也さん、志田京太郎さん(宮城県仙台第三高1年)
白金をごく薄くのばした「白金箔(はっきんぱく)」を火であぶり、水素ガスを吹き付けると、爆発的に燃える。この現象はなぜ起きるのか。定説を覆す新しい説を示した。
自然科学部に入部した際、顧問の先生がこの現象を実演して見せてくれた。「ボンッ」と大きな音とともに炎が上がるのに驚き、現象に強く興味をもった新入生どうしで研究のコンビを組んだ。
まず調べたのは、どんな条件なら爆発が起きるのか。白金箔の大きさや火であぶってから水素を吹き付けるまでの時間など、いろいろ条件を変えて実験を重ねた。
すると、箔(はく)を3枚以上重ねて厚くした状態では、爆発には至らなかった。大場さんは「厚みを増すほど、見るからに反応が弱くなっていく。『なんでなんだろう』と2人で話し合いました」
これまでの定説は、白金の触媒作用で箔の表面にくっついていた酸素原子が、吹き付けた水素原子と反応し爆発する、というものだった。
でも、箔の厚みが関係しない。
火を使わなくても爆発、なぜ? 化学の定説覆した高校生2人が米国へ
よく知られた化学実験の定説に疑問を持ち、新たな説を示した仙台三高(仙台市宮城野区)の生徒が、5月、米国で開かれる国際大会で、成果を発表する。
研究したのは、1年の大場誠也さんと志田京太郎さん。自然科学部に入部し、火であぶった白金の箔(はく)に水素ガスが吹き付けられると、爆発的に燃える実験を見て驚いた。2人は「水素に火などのエネルギーを与えていないのに、なぜ爆発するのか興味を持った」と振り返る。
この現象はこれまで、白金の触媒作用で、箔の表面についていた酸素原子が水素原子と反応し爆発するためとされてきた。しかし、条件を変えて実験を繰り返すうちに、疑問を持った。箔を重ねて厚みが増すと、爆発が起こらなかったからだ。定説通りであれば、厚さは関係がないはず。表面だけでなく、裏面も関係しているのではないか――。試しに裏面にセロハンテープを貼ると、爆発は起こらなかった。
分析を進め、箔の裏側にある酸素が、箔に開いた小さな穴を表側に通り抜ける時に触媒作用が起き、定着した酸素原子と水素原子が反応し爆発することを明らかにした。
この成果は昨年、自由研究のコンテスト「JSEC(高校生・高専生科学技術チャレンジ)」(朝日新聞社・テレビ朝日主催)で高く評価され、特別協賛社賞の「花王賞」を受賞した。
2月21日、花王の山田泰司・研究開発部門研究戦略・企画部上席主任研究員らが同校を訪ね、賞状を贈った。山田さんは「定説をうのみにせず自分たちで仮説を立て、実験し検証した。方法もユニークでよく考えられている」とたたえた。2人は「研究をより発展させ、触媒反応を効率化し、白金の使用量軽減を目指したい」と語った。実験では、箔が柔らかくて形が不安定なことや、ハサミで切る時の静電気に悩まされたという。
2人は5月、米国・ロサンゼルスで開催される国際学生科学技術フェア(ISEF)に日本代表として挑戦する。ISEFは、例年60カ国以上から高校生ら千数百人が集う世界最大級の大会だ。2人は「この研究を世界で知られるものにしていきたい。似た研究をしている海外の高校生との情報交換にも期待している」と意気込んでいる。(村上剛)
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