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2024年5月7日火曜日

キーエンスの商品が「高値でも売れる」意外なワケ、裏にある「2つの秘策」をOBが激白! ダイヤモンド編集部 ビジネス DOL「学びの動画」をつまみ食い! 2024.5.7 4:25

https://diamond.jp/articles/-/342418?utm_source=daily_dol&utm_medium=email&utm_campaign=2024gw

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キーエンスの商品が「高値でも売れる」意外なワケ、裏にある「2つの秘策」をOBが激白!Photo:Bloomberg/gettyimages

平均年収2000万円超、営業利益率50%、時価総額5位――。最強企業キーエンスで商品開発に長年携わったOBが「高値でも売れる商品」を生み出す秘策を伝授する。「先進機能のてんこ盛り」ではなく「引き算」が重要である理由とは?ダイヤモンド・オンラインが配信している「学びの動画」の特集『キーエンス流 営業・企画・戦略の強化書』(全20回)の内容を基に、特別にお伝えする(元の動画はこちらから)。

売れる商品を生むカギは
「てんこ盛り」ではなく「引き算」!?

「高値でも売れる商品」を生み出す上で、重要な点は何だろうか。

 業種・業界によっても異なるが、例えば製造業の世界では「最先端の機能をたくさん搭載し、充実した仕様にすること」が重要だと考える人がいるかもしれない。だが、キーエンスで長く商品企画・開発を担当した大崎道雄氏は、意外にも「引き算」が大切だと語る(※「崎」の正式な表記は「たつさき」、以下同)。

「幅広い顧客層に買ってもらおうと、機能をてんこ盛りにするのは避けた方が良いでしょう。顧客にとっては不必要な機能が含まれているかもしれません。仕組みも複雑化して分かりにくくなります」(大崎氏)

 大崎氏は1997年にキーエンスに入社し、商品の企画・開発を20年近く担当した「売れる商品の作り方」を熟知する人物だ。キーエンス退職後はこれまでのノウハウを生かし、商品開発のコンサルティング企業「Minchu」を設立。代表取締役CEOを務めている。

 大崎氏の古巣であるキーエンスはFA(ファクトリーオートメーション)関連機器の大手メーカーであり、測定器や画像処理機器、センサーといったFA用製品を手掛けている。

キーエンスの商品が「高値でも売れる」意外なワケ、裏にある「2つの秘策」をOBが激白!キーエンスOBの大崎道雄氏 

 キーエンスの強みは、コストやマージンを抑えつつ、合理性を徹底的に追求した営業体制を敷いていることだ。こうした仕組みによって、日本企業の中で圧倒的に高い「約50%」という売上高営業利益率を継続的にたたき出している。

 平均年収は2279万円(2023年3月期実績)と高年収企業ランキング上位の常連で、国内における時価総額ランキングでも5位(24年4月時点)につけている。

「他社と比べようのない商品」が
高収益につながる!

 大崎氏によると、「売れる商品」を開発する上で重要なのは「マーケットイン」(顧客が求めるモノを作る)の発想だ。徹底的な顧客分析や市場調査を通じて、顧客の本質的なニーズを把握するという「キホンのキ」がまずは大切になる。

 その上で、競合商品との差別化に向けた「引き算」が求められる。ただし、単に機能を絞ったり、スペックを落としたりするだけではライバルに劣後してしまう。ここで効果を発揮するのが、大崎氏が「ずらし」と呼ぶテクニックだ。

「ずらし」とは、この引き算をする代わりに、競合商品とは異なる(=ずらした)ポイントを強化する手法である。大崎氏の古巣・キーエンスも「ずらし」を駆使し、従来の市場にはあまりなかった「尖った商品」を展開することで、高い収益性を維持してきたという。

「商品の性能を評価する際、五角形のレーダーチャートなどを使いますよね。キーエンスの商品は、このチャートのうち1項目だけが飛び抜けています。ですが、あとの項目は平均並み。もしくは、5項目のうち2項目にはそもそも対応していません。

 似たり寄ったりの商品同士だと、顧客は価格の安い方に流れがちになりますが、『引き算』と『ずらし』によって尖らせた商品は他社と比べようがありません。キーエンスの商品が、高値でも買ってもらえるのはそのためです」(大崎氏)

 そうした「尖った商品」とは、具体的にどんなものなのか。その代表例として、大崎氏は自身がキーエンス時代に企画した「3次元測定器」を挙げる。


「卓球台サイズ」から「卓上サイズ」に…
「尖った商品」の好例とは?

 3次元測定器は、対象物の寸法や形状を「縦・横・高さ」の3軸で正確に測定できる機械だ。主に製造業を営む企業が、「設計図通りに商品を製造できているか」を検証する目的などで使用する。

 大崎氏によると、当時の3次元測定器は卓球台ほどの大きさが一般的で、企業が設置するにはハードルが高かった。オフィスや工場に「専用の部屋」が必要なレベルであり、敷地・社屋が狭い企業が気軽に導入できる代物ではなかったという。

 スペースに余裕がない企業の担当者が、3次元測定器を設置済みの近隣企業を訪問し、装置を借りて測定させてもらう例もあったという。裏を返せば、3次元測定器は製造業界で非常に高いニーズがあるにもかかわらず、手軽に購入・利用できない点が課題だった。ここに商機があると大崎氏は見抜いた。

 そこで大崎氏は、設置場所を選ばない「卓上型の3次元測定器」を企画。小型化した分、従来の機種よりも測定精度は若干落ちたが、精度はあえて「引き算」した。顧客へのヒアリングの結果、「高すぎる測定精度は不要」との声が多かったこともあり、精度という土俵で競合と勝負することを避けたのだ。

 その代わりに「コンパクトさ」という武器を尖らせ、市場になかったモノを生み出した。先述した「ずらし」の技術を使ったのである。

「そもそもサイズの大きい対象物は測定できませんし、精度以外にも不要だと判断した要素はとことん『引き算』しました。商品の完成が近づいた段階で、顧客に見せに行こうと連絡したところ、従来型のイメージが根強いせいで、小型化したにもかかわらず『トラックで持ってくるの?』と驚かれたことを覚えています」(大崎氏)

 その後、卓上型の3次元測定器を世に出すと、狙い通り「まさにこれが欲しかった」と評価してくれる顧客が多かったという。既存の商品と値段を比べられることもなく、キーエンス側で決定した価格が受け入れられたと大崎氏は振り返る。

 いかがだっただろうか。キーエンスが圧倒的な利益率をたたき出している背景には、「引き算」と「ずらし」によって「高値でも売れる商品」を生み出す企画術があったのだ。

「学びの動画」の特集『キーエンス流 営業・企画・戦略の強化書』ではこの他にも、キーエンスOBが古巣で学んだビジネスの極意を余すところなく紹介している。本記事で興味を持った方は、ぜひチェックしてみてほしい。

 高収益企業で商品開発に携わってきた大崎氏が語る、「引き算」の極意とは――。

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