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いよいよ農業の変革が始まりました。「豪農」と「テクノロジー」と「影の仕掛け人」が“令和の農業維新”というムーブメントを起こしているのです。他方、農業を牛耳ってきた旧来勢力である農協と農水省は、存在意義を問われる“緊急事態”となっています。『週刊ダイヤモンド』5月11日号の第1特集は「儲かる農業 JA、農水省 緊急事態」です。農業の主役交代の最新事情に、有力農家1230人、農協組合長165人のアンケートの回答と、総力取材で迫りました。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
年間300万の共済に家族で加入した農協役員も!
JA組合長ら434人のアンケート回答で判明
ダイヤモンド編集部は、農協の役職員にJAグループの上部団体への評価を聞く「農協役職員アンケート」を実施し、合計434人から回答を得た。
農協役職員アンケートの結果に基づき、JAグループの主要12組織(JA全中、都道府県の農協中央会、JA共済連、農林中央金庫、JA信連、JA全農、JA経済連、日本農業新聞、家の光協会、JA全厚連、全国農政連、みのり監査法人)の支持率を算出した。
全組織において、農協幹部からの支持率より、職員からの支持率の方が低くなった。共済連の農協幹部からの支持率は48%、職員からの支持率は16%で、その差は32ポイントもあり、支持率を出した12組織中、最大だった。
農協の経営を成り立たせるために、共済(保険)事業を行う幹部と、実際に共済の営業ノルマの達成を求められる職員との間には、相当な温度差があるようなのだ。
共済のノルマ推進の負担が
軽減した役職員はたった19%
2022年に、農協職員がノルマを達成するために、本来不要な共済を契約する“自爆営業”や、契約者の利益にならない不正契約が発覚したことを受け、共済連は、問題の是正に乗り出した。
具体的には、農水省が23年に示した新たな共済監督指針(職員が不要な共済契約を結んでいる実態があり、組織的にそれを強要していた場合は、不祥事件として扱い、指導や勧告を行う)を周知したり、共済契約の実態を調査したりした。だが、農協は共済連の対策を評価していないようだ。
同対策を評価した農協幹部は28%、職員は12%にとどまった。
共済連の支持率が低い要因として、共済の推進目標に“納得感”を得られていないことが挙げられる。「目標は農協が自主的に決めている」というのが建前だが、実際には、「目標は共済連から一方的に割り当てられている」と感じている農協役職員が少なくなく、その割合は、農協幹部で49%、職員では78%に上った。
さらに、農協幹部27%が「目標を高くするように共済連から圧力を受けたと感じた」と答えた。職員だけでなく、幹部も共済のノルマを負担に感じているのだ。
自らの生々しい自爆営業の体験を明らかにした幹部もいた。鳥取県の元農協役員は、「現役時代は子や孫の契約分まで含め年間300万円超の共済掛け金を払っていた。農協としてノルマを達成しなければ職員に給料を払えないので、やむなくそうしていた。役員を退いたいまでも、年間200万円は支払っている」という。
アンケートでは、農水省が監督指針を見直した後の23年度、共済の目標が軽減したかも聞いた。
「軽減した」と答えた幹部、職員は19%にとどまった。ある農協職員は、「共済の利益がなければ農協の経営が成り立たない以上、無理な推進は本質的には変わらない。ノルマが減ってもその分、他の誰かが重荷を背負わされる」と話す。
実際、共済や金融の渉外担当者にしわ寄せが行っているようだ。秋田県の職員は、「23年度に突然、共済目標を割り当てられた。私は融資担当なので、融資のお客さまからの共済契約の獲得を求められたが、支店の地域性・顧客需要に対して目標が過大だった。しかし、目標未達なら左遷を示唆された」とコメントした。共済の問題が是正されるのは簡単ではなさそうだ。
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