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2024年6月4日火曜日

カーボン系の新素材「GMS」がリチウムイオン電池の性能向上を加速する。

インタビュー
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2405/30/news008.html
 
 
 


素材/化学インタビュー(1/2 ページ)

近年、リチウムイオン電池の性能を向上するために導電助剤の改良が注目されている。そこで、今回は、リチウムイオン電池の入出力向上や長寿命化、高容量化に役立つ導電助剤用であるグラフェンメソスポンジ(GMS)を開発し、展開する3DC 代表取締役の黒田拓馬氏に同製品について聞いた。

 現在、電気自動車(EV)やスマートフォン、ノートPCなどで利用されるリチウムイオン電池は、1990年代に実用化された。1990年代は、さまざま電池メーカーが、リチウムイオン電池の性能向上を目的にメイン材料のコバルトやニッケル、マンガンといった活物質と電解液の改良を進めていた。

 しかし、近年は活物質や電解液の改良も限界に近づいてきている。そのため、サブ材料の導電助剤やバインダー、添加剤の機能向上が求められるようになっている。

 こういった状況を踏まえて、東北大学発のスタートアップである3DCは、リチウムイオン電池の性能向上を図れる新素材として、導電助剤用グラフェンメソスポンジ(GMS)を開発した。

 3DC 代表取締役 黒田拓馬氏に、創業の経緯、会社概要、導電助剤用GMSの開発背景や特徴、今後の展開について聞いた。

GMSの製品化を目的に起業

MONOist 3DCの創業の経緯を聞かせてください。

3DC 代表取締役 黒田拓馬氏
3DC 代表取締役 黒田拓馬氏 出所:3DC

黒田拓馬氏(以下、黒田氏) まず創業に関係する私の経歴に触れたい。私は、日東電工に入社し中間材料の製品化に従事した後、サムライインキュベートというベンチャーキャピタルに転職した。

 サムライインキュベートでは、さまざまな大学における研究成果の事業化を支援する業務に従事していた。この業務を行う中で、東北大学 材料科学高等研究所 教授の西原洋知氏と出会い、西原氏が開発したGMSについて知った。そして、GMSが非常に面白い材料だと思うとともに、一刻も早く世の中に出さないと、中国や韓国の企業が市場で展開しシェアを取られると感じた。

 そこで、GMSの製品化を目的に私は西原氏とともに3DCを2022年2月に創業した。大学の研究を製品化するために起業する際には代表取締役に立候補する人いないことが問題になることが多いが、私が代表取締役を務めることでこの問題を解消した。

日本、韓国、中国の大手リチウムイオン電池メーカーにGMSのサンプルを提供

MONOist 3DCの会社概要を聞かせてください。

黒田氏 当社では、リチウムイオン電池や次世代電池、キャパシターに向けてGMSを展開している。GMSは、カーボンナノチューブやグラフェンのように原子1つ分の厚みで理想的に炭素を制御できる。一方、グラフェンは、英国のマンチェスター大学に所属するアンドレ・ガイム氏らが2010年に「二次元物質グラフェンに関する革新的実験」で ノーベル物理学賞を受賞するほど注目されている材料だ。しかし、「グラフェンが量産時に積層する」という課題を解決できていなかった。GMSは3次元構造の形成というアプローチでこの課題を解消できる。そのため、国内外を問わず炭素材料の業界で注目されている。

GMSの特徴
GMSの特徴[クリックで拡大] 出所:3DC
GMSの応用範囲
GMSの応用範囲[クリックで拡大] 出所:3DC

 こういった状況を踏まえて、当社では、リチウムイオン電池の電極で導電助剤として利用されているカーボンブラックやカーボンナノチューブの置き換え品としてGMSを提案している。GMSを用いてリチウムイオン電池の性能を向上させる研究や事業の展開も進めている。現在、当社では、日本、韓国、中国の大手リチウムイオン電池メーカーにGMSのサンプルを提供している。これらのメーカーが開発している次世代のリチウムイオン電池にGMSが適用できるかを試験などで確認している。リチウムイオン電池に正式に採用されるまでにはあと2~3年かかるとみており、現在は導入のフェーズで言えば序盤だ。

リチウムイオン電池導電助剤用GMSのターゲット
リチウムイオン電池導電助剤用GMSのターゲット[クリックで拡大] 出所:3DC
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