特集『DX180社図鑑』(全20回)の#1では、社会問題ともなりつつあり、あなたの企業も人ごとではない「基幹システム更新問題」に迫る。
スーパーの店頭から日本人の国民食ともいえる「プッチンプリン」が消えて3カ月。江崎グリコを襲ったシステムトラブルはいまだ完全復旧のめどが見えない。
大手ERP(資源統合管理計画)システム、SAPの導入に伴うシステム移行による障害で主力商品群の出荷が止まり、2024年12月期決算の業績予測を下方修正するに至った。SAPへの移行プロジェクトによる障害でここまで長い間業務が止まるということは前代未聞だ。
グリコはSAPの最新バージョンであるS/4HANAを既存のシステムに替わる新基幹システムとして導入していた。システム移行の主幹事はデロイト トーマツ コンサルティングが担当し、構築作業を複数のITベンダーが分担して行っていた。19年12月に22年12月までの予定で始まったプロジェクトだが、納期は1年以上延び、予算は215億円から342億円に膨らんだ。難産の新システムはようやく稼働したものの、目も当てられない事態となってしまったわけだ。
実は、基幹システムの移行に伴うトラブルは大手企業で数多く起きている。グリコの例は対岸の火事ではない。
基幹システムを更新することを「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と位置付ける企業も多く、往々にして大型化するプロジェクトはITベンダーやコンサルティング会社にとっても太い飯の種となる。だが一方で、基幹システム更新はさまざまな面から非常に困難で、企業にとって重大なリスクをもたらすものになっているという事実も浮き彫りになった。
『プッチンプリン出荷停止のグリコだけじゃない!基幹システム問題を抱える企業リスト「SAPで大混乱」「7年遅れ」「コスト2.4倍」…』では、ダイヤモンド編集部の調査により判明した、基幹システム更新でトラブルを抱える上場企業の実名リストを公開する。不動産や運輸、製紙メーカー、食品系など、さまざまな企業が並んでいる。
さらに、そもそもなぜ基幹システム更新は難しいのか、SAPシステムの更新に伴う問題点などを具体的に示していく。そして取材の結果、仮にトラブルなしに基幹システムを更新できたとしても、一部の企業では数年後にさらに巨額費用が必要になるかもしれないという、新たなリスクも判明した。
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