ニコンが主力の半導体露光装置で、人工知能(AI)向けで需要が拡大する後工程への参入を急いでいる。回路の原版となるフォトマスクが不要な露光装置を後工程向けに開発中で、数年以内の発売を目指す。フラットパネルディスプレー(FPD)露光装置の技術を生かし、パネルレベルパッケージと呼ばれる大型ガラス基板を用いた後工程に対応することでファウンドリーなどへの提案力を高める。
開発を進めているのは同社が「デジタル露光装置」と呼ぶ半導体製造装置だ。フォトマスクを使わない方式の露光装置で、マスクレス露光装置やダイレクト露光装置とも呼ばれる。ニコンは2023年3月期から2026年3月期までの中期経営計画で、この装置を半導体露光装置やFPD露光装置を扱う精機事業の成長ドライバーに掲げた。同社常務執行役員で精機事業本部副事業本部長の戸口学氏は「半導体露光装置、FPD露光装置に続く第3の矢という位置づけだ」と話す。
マスクレス露光装置はフォトマスク上の回路パターンをウエハーに転写する従来の露光装置とは原理が大きく異なる。光源からの光が照明系を介して空間光変調器(マイクロミラーデバイス)と呼ぶ部品に届き、多数のミラーの角度で光の進む向きを制御する。各ミラーの角度は、形成したい回路パターンのCAD(コンピューターによる設計)データを基に露光装置内で自動制御する。変調器を通った光は投影レンズを介してウエハーやガラス基板上の感光性材料に照射され、回路パターンを反映した光の強度分布を作りだす。
露光装置を使う半導体メーカーや部材メーカーにとっては、フォトマスクを内製したり外注したりする費用や時間を削減できる。CADデータを書き換えることで露光パターンを柔軟に変えられるため、半導体の量産だけでなく「開発段階で様々なアイデアを試せる」(戸口氏)利点もある。
0 件のコメント:
コメントを投稿