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フェライト磁石でEVモーター、プロテリアルが「レアアースフリー」に選択肢
プロテリアル(旧日立金属)は、電気自動車(EV)など電動車両の駆動用を想定したフェライト磁石を使ったモーターを試作し、最高出力として約100kWを得られることを確認した(図1)。同磁石は多くの駆動用モーターで使われるネオジム(Nd)磁石と異なり、希土類(レアアース)を使わない。駆動用モーターで高まる「レアアースフリー」の需要に対し、選択肢を広げる。自動車メーカーやモーターメーカーに提案を進め、2030年代前半に駆動用モーターで実用化することを目指す。
プロテリアルは2022年12月、フェライト磁石を搭載したモーターで約100kWの最高出力を得たとのシミュレーション結果を公表していた。この発表に対して「国内外からの反響が非常に大きく、実機での検証を望む声が寄せられていた」(同社)という。
シミュレーション結果を受け、同社はフェライト磁石「NMFシリーズ」を駆動用モーター向けに提案し始めた。同フェライト磁石は元々、パワーウインドーや電動パーキングブレーキ(EPB)などに使う補機モーター向けに展開してきたものだ(図2)。
同社は今回、シミュレーション結果に基づいてフェライト磁石を搭載したモーターを設計・試作し、性能試験で最高出力102kWを得た(表)。モーターの最高回転数を1万5000rpmまで上げたほか、磁石の寸法や配置、磁石を挿入するスロットの形状などを適正化することで、モーターの出力を高めた。
モーターの出力はトルクと回転数の積で決まる。フェライト磁石はNd磁石に比べ磁力が弱く、試作モーターの出力密度はNd磁石を搭載したモーターより低い。約100kWの最高出力を確保するためには、回転数を上げる必要があった。一般的にモーターを高回転化すると渦電流による鉄損注)が増えるが、フェライト磁石はNd磁石より電気抵抗が高いため同損失を抑えられる。
注)モーターの鉄心(コア)における磁束変化を原因とし、主に熱として発生する電力損失。
レアアースの中国リスクが課題に
プロテリアルの「フェライト磁石を電動車両の駆動用モーターに適用する」との提案が注目を集めるのは、レアアースの供給への懸念が強くなっているためだ。レアアースは中国に生産が集中し、同国への依存度も高まっている。米・地質調査所(USGS)によると、2022年における中国のレアアースの生産量は21万t(トン)で世界全体の7割を占めた。2021年に比べ増えている。
フェライト磁石は主成分が酸化鉄(Fe2O3)であるため、レアアースを使うNd磁石に比べて安価で、供給リスクも減らせる。Nd磁石は軽希土類のNdのほか、高温環境下での保磁力を高めるためにジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)といった重希土類を添加しているのが一般的である。
地政学リスクの回避や電動パワートレーンのコスト低減などのため、自動車メーカーや1次部品メーカー(ティア1)もレアアースを使わない駆動用モーターへの取り組みを加速させている。現在主流のNd磁石を使った永久磁石式同期モーター(Permanent Magnet Synchronous Motor、PMSM)以外のモーターを開発、実用化するメーカーが増えてきた。
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