自動運転など次世代モビリティの実現のために重要となるのが、車両が通信ネットワークに常時接続されるコネクテッド技術です。交通を取り巻くさまざまなものや環境がつながることで、事故を未然に回避し、人々が安心・安全に移動できる未来を目指しています。
ソフトバンクの先端技術研究所と、本田技研工業株式会社および株式会社本田技術研究所(以下「Honda」)は、車両や交通インフラの情報連携により、事故リスクを予測し、運転手に通知を行う技術検証を行いました。
ソフトバンク株式会社 先端技術研究所 先端技術開発部 次世代コネクテッド開発課
藤本 八雲(ふじもと・やくも)
2021年ソフトバンクに入社。研究開発部門に所属しV2Xやデジタルツインの活用を目指した通信技術や、APIを通じた情報取得や制御についての研究開発を経て、現在はより安全で安心な交通社会実現に向けたコネクテッドカーの通信技術の研究開発を担当。
交通事故減少に向けて。自動車とあらゆるものを接続する技術「セルラーV2X」
今回の検証の背景には主に2つの課題があります。1つ目は、二輪車や歩行者など交通弱者の交通事故死が約7割を占めること。2つ目は、自動運転が実現する過渡期では、コネクテッドカーと非コネクテッドカーが混在する状況が生まれることから、さまざまな車両の挙動を予測し事故を回避することが求められることです。
ソフトバンクは、検証を行うにあたり、セルラーV2X環境の提供に加えて、道路全体の交通状況を集約するための情報連携プラットフォームを構築しました。
「V2X(Vehicle-to-everything)」は、自動車と自動車、交通インフラと自動車、など自動車とあらゆるものを接続して情報のやりとりを実現する通信技術のことを指します。LTEや5Gなど携帯電話の通信ネットワークを活用してV2Xを実現したものが「セルラーV2X」です。
道路全体の交通状況を集約するための情報連携プラットフォームは、コネクテッドカーの位置・速度情報、車両情報に加えて、高速道路に設置されている路側センサーから観測された非コネクテッドカーの位置・速度情報も集約しています。それらの情報を統合し、デジタル空間上で車同士のリスクを事前に予測して運転手に通知することで、運転手がリスクの予兆を認識して事故を未然に回避するという仕組みとなっています。
今回の検証では、通信機能を持たない車両(非コネクテッドカー)の情報も路側センサーから取得していることが特徴と言えます。
また、私たちが構築した情報連携プラットフォームからリアルタイムに配信される情報をもとに、数秒先の行動について予測しているのが、Hondaさんが研究を行っている「リスクアルゴリズム」です。
LTEや5Gを活用することで、リアルタイムに事故リスクの予測と通知が可能に
今回の検証は、中日本高速道路株式会社が建設中の新東名高速道路の一部区間で行っている「高速道路の自動運転時代に向けた路車協調実証実験」の一環で実施しました。高速道路を走行する二輪車が、運転手の不注意による急な車線変更で周囲の車両にリスクが生じるシーンを想定しています。
二輪車(コネクテッドカー)とその前方を走行する車両(非コネクテッドカー)との車間距離が短くなった場合に、二輪車が隣接車線の後方車両(コネクテッドカー)を見落とし、車線変更を行うことでリスクが発生するユースケースを検証。想定されるリスクには、二輪車と隣接した車線にある後方車両との衝突や、後方車両の急制動が含まれます。LTEや5G(第5世代移動通信システム)のセルラーV2X技術を活用し、運転手の行動を予測しながら、想定されるリスク情報を通知することで、事故を未然に回避できることを確認しました。
路側センサーのデータと車両からのデータに遅延時間の差があり、デジタル空間で正確に再現できないことが課題でした。その対策として、時刻のずれや遅延時間を吸収するシステムを構築したんです。
コネクテッドカーや路側センサーが増えて道路全体の情報共有が可能になることで、事故を未然に防ぎ、安心して運転できる環境を提供できると考えています。
今回の検証実験の詳しい様子は、動画をご覧ください。
- セルラーV2Xを活用した車両や交通インフラの情報連携による事故リスクの予測と通知に成功~非コネクテッドカーを含む情報を集約してデジタルツインで再現し、事故リスクを予測して車両に通知~(2024年6月20日 ソフトバンク株式会社 プレスリリース)
(掲載日:2024年9月26日)
文:ソフトバンクニュース編集部
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