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[ここにもニッポン]<1>
広い庭とプール付きの一軒家が成功者の証しとされる米ロサンゼルスで、日本のカプセルホテルから着想を得た極小空間での暮らしが若者たちをひきつけている。極力少ない持ち物で生活費を節約しながら暮らす「ミニマリスト」たちだ。
ハリウッドの裏通りにある共同宿泊施設「ポッド(さや)シェア」。ベッド1台分の空間は、三方を壁に囲まれ、テレビやコンセントなど必要最低限の設備だけ。ドアやカーテンすらない。
カプセルホテルは世界的な建築家、黒川紀章(1934~2007年)が70年の大阪万博で「未来の住宅」として「空中テーマ館住宅カプセル」として発表したのが起源だ。建築史家の倉方俊輔・大阪公立大教授によると黒川紀章は、東京・銀座の集合住宅「中銀カプセルタワービル」(72年)を設計後、79年に世界初のカプセルホテル「カプセル・イン大阪」を生み出した。終電を逃したサラリーマン向けに全国へ広がった。
欧米で2010年代、居住と仕事の空間を共有する「コリビング」が普及した。ポッドシェアはその先駆けとして12年に設立され、ノートパソコン一つで旅しながら働く「デジタルノマド(遊牧民)」のオアシスとなった。滞在期間に制限はなく、長期賃貸住宅としても利用できる。
ロサンゼルス中心部は近年の物価高騰でワンルームの平均家賃が月2000ドル(約30万円)を超える。ポッドシェアは900~1100ドル(約14万~17万円)と手頃だ。
創設者のエルビナ・ベックさん(39)は85年、旧ソ連のモスクワ生まれ。「ベルリンの壁」崩壊後の90年、米ニューヨークに移り住んだ。貧しいロシア人の中で育った。「共産主義の名残とも言える『分かち合い』の良さをみてきた」。大学卒業後、女優を目指してハリウッドに来た。08年のリーマン・ショック後の不況で家賃の支払いに苦しむ中、「同じ境遇の人と助け合いたい」と考えた。
インターネットで日本のカプセルホテルが目に留まった。斬新な空間設計に魅力を感じた。「犬小屋のように中に入るスタイル」を変えるため、プラスチックではなく木材を使い、開口部が広い横長のデザインに改めた。プライバシー重視派のため、日本のカプセルホテルそっくりの部屋も二つ設けてみたが「棺おけみたい」と不人気だ。
ポッドシェアは新型コロナウイルス禍で急速に広がったリモートワークの生活にも合致し、カリフォルニア州で6店舗を展開する。ニューヨークなど旅行者の多い都市部ではカプセルホテルそのものも増えている。
ハリウッドのポッドシェアでは、ロサンゼルス育ちの2人の若者に出会った。駆け出しのコメディアン、エイブリー・ハリソンさん(23)は、チケットが1枚10ドルのショーに出演する傍ら、深夜はバーで働く。両親との折り合いが悪く、3か月前に実家を飛び出した。「シンプルな生活様式を好む自分にとってここは一番快適だ」という。
「安い物件を探していた時、ここを見つけて住まない手はなかった」という料理人のステファン・アブラミアンさん(30)は「豊かになっても10のベッドルームがある家で暮らしたいとは思わない。僕の生活に必要なのはパソコンとベッドだけだから」。