トルコは、過激派組織「イスラム国」との戦いや難民問題の対応で重要な役割を担う。政情の安定化が欠かせない。
トルコ総選挙で、イスラム穏健派の与党、公正発展党が勝利し、単独過半数を獲得した。6月の総選挙では過半数に達せず、連立政権作りに失敗したことから、再選挙となっていた。
内政の混乱を受けて外国資本が逃避し、通貨安を招いている。首都アンカラでは10月上旬、「イスラム国」の犯行とみられる爆弾テロが起き、約100人が死亡した。懸念を抱く多数の国民が安定政権の発足を求めたのだろう。
政府軍とクルド人武装組織の戦闘が続く中、クルド系政党は議席を大きく減らした。クルド系住民は国内人口の約15%を占め、自治権拡大を要求する声が強い。
トルコ系とクルド系の対立は日本に飛び火し、10月下旬には、トルコ大使館前で乱闘があった。
民族間のあつれきが増すことで、隣国シリアの長引く内戦やテロへの対処がおろそかになるのは望ましくない。エルドアン大統領には、国民融和に向けた取り組みが必要となろう。
2003年から首相を務めたエルドアン氏は高成長を主導し、初の直接選挙となった昨年の大統領選で当選した。大統領権限を強める憲法改正を目指している。
選挙期間中の反政府系メディアへの警官隊突入やテレビ局の放送中断など、強権的姿勢に対する批判も根強い。選挙に勝利したからといって、報道への介入まで容認されたことにはなるまい。
エルドアン政権はこれまで、シリアのアサド政権打倒を優先してきた。「イスラム国」空爆や米国との作戦協力は今夏に始めたばかりで、後手に回っていた。
今後も、トルコはクルド人武装組織に対する攻撃を続けるとみられる。だが、これでは、「イスラム国」を利するだけだろう。今年7月に中断した武装組織との停戦を改めて実施することも模索すべきではないか。
「イスラム国」の外国人戦闘員の多くはトルコ経由でシリアに越境している。逆に、約200万のシリア難民がトルコに入り、一部は欧州に向かう。約900キロに及ぶ国境の管理徹底は急務だ。
日本はトルコと歴史的に関係が深い。安倍首相は10月の首脳会談で連携強化を確認した。今月中旬にはトルコで主要20か国・地域(G20)首脳会議が開かれる。日本と米欧はテロ対策や難民問題で積極的に支援したい。
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