国連報告
- 2016年02月9日
国連は8日、シリアが拘束した人数千人を絶滅させる政策を国策として実施したと報告した。国連人権理事会が設置した国際調査委員会は人権理への報告書で、アサド政権を人道に対する罪で糾弾している。
「目に見えず忘れられ――シリア・アラブ共和国における拘束死」と題された報告によると、シリア政府に拘束された大勢は拷問され、撲殺された。食べ物や水、医療を与えられずに死亡した人も大勢いるという。シリア政府は常に数万人を拘束していると疑われるが、政権側も反政府勢力も戦争犯罪を犯した可能性が指摘されている。
報告書は、2011年3月に反政府行動が始まって以降の期間を対象に、目撃者数百人から聞き取り調査を実施。反政府行動をきっかけとした戦闘が始まって以降、対立勢力に拘束された数千人が殺害されたと指摘している。
2011年3月以降、反政府勢力に従っているか、ただ単に政府への忠誠が足りないとみられた人が次々と逮捕されている。
報告書は、生存者の証言は「とてつもない規模の人権侵害が起きていることを示す、恐ろしい状況を物語る」と書き、拘束された人たちは「緊急で大規模な人権侵害の危機」にさらされていると糾弾した。
アサド政権も反政府勢力も拘束した人たちに暴力をふるっているが、事案の大半は政府系機関によるもので、政府幹部が暴力を承知し承認していたのは明らかだという。拘束された人たちの多くは、シリア情報機関が管理する場所で起きていると記録されている。
国際調査委のセルジオ・ピネイロ委員長は声明で、「政府関係者は意図的に、捕虜の生命を脅かすほど劣悪な拘束状況を継続させていた。その結果、被収容者の大量死が発生することは認識していた」と非難した。「国策にもとづくこうした行為は、人道に対する罪にあたる絶滅行為である」。
報告書はさらに、反政府勢力が捕虜にしたシリア兵を殺害していると非難。
「イスラム国」(IS)やヌスラ戦線などの過激派勢力も、人道に対する罪や戦争犯罪を犯していると指摘している。ISは複数の箇所で長期的に大勢を拘束しているという。正確な人数は不明。ISの拘束施設では拷問と処刑が「日常」と化していると報告書は指摘。正式な司法権のない「裁判所」が死刑宣告し、処刑が実施されているという。
国連人権委員会への2016年月報告より抜粋
シリア総合情報局が管理下に置く主な収容施設は、首都ダマスカス西のカフル・スーサに位置する国内治安第251支部および調査第285支部などを含む。
拘束を経験した人たちは、非人間的な状況によって拘束中に頻繁に死者が出ていたと語る。
被拘束者の拷問方法について、将校が部下に命令している様子が目撃されている。
遺体はほかの捕虜が運んだ。廊下を移動させ、支部の外へ移すまで場合によってはトイレに置かれていた。
収容施設の幹部は常に、管理下にある収容者の死亡について報告を受けていたと示す証拠を得ている。捕虜は軍病院に移送された後、集団墓地に埋められた。
2014年にはシリア当局が、リフ・ダマスカス出身の女性に、夫と息子2人の死亡を伝えた。3人は憲兵隊が管理する収容施設に拘束されていた。
この家族はティシュリーン軍病院から死亡証明書を入手。3人の死因はいずれも心臓発作と記載されていた。3人目の息子は行方不明のまま。
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