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2016年12月5日月曜日

総務は1人で十分こなせる


進化した自動化技術で大企業でも省人化は可能

総務部や人事部をはじめとした間接部門。なくてはならない存在だが、コストアップ要因と見なされることも多い。そんななかITを駆使することで1人で総務部門をこなす会社があった。

 間接部門が仕事の“邪魔”をする──。そんな不満を持つ直接部門の社員が増えている。実情に合わないルールを導入する一方、形骸化した古い仕組みは固守しようとする。

 「存在意義を守るため、無理に仕事を作っている」。これが多くの直接部門社員の見立てだ。

 過去を振り返って見ても、間接部門は企業の要であるにもかかわらず「コストアップ要因」と見なされることが多かった。では間接部門をどこまでスリム化することが可能なのか。基幹システムを販売するスマイルワークス(東京・千代田)の坂本恒之社長は「クラウドを駆使すれば大企業でも1人で十分こなせる。できない理由があるとすれば、仕組みの問題ではなく、部門の既得権益だろう」とみる。

 この考えを実践している企業がある。スキャンマン(杉本勝男社長)という会社だ。アルバイトを含め50人のメンバーがいる企業で、この会社の総務部門は久保田ゆみえ氏しかいない。電話の取次から案件管理まで何でもこなす。

 こんな芸当が可能なのは10のクラウドサービスを使いこなしているからだ。中小企業の総務の仕事は多岐にわたるが、久保田氏の場合、大別すると次の8つの作業が中心で、それぞれクラウドを使いこなし、たった1人で業務を遂行する。以下、具体的に見ていこう。

スキャンマンの久保田ゆみえ氏はクラウドをこなし1人で総務業務をこなす

①社外文書作成(請求書、見積書、納品書など)
⇒Misoca「Misoca」使用(直接部門がデータ入力すれば、書面作成から郵送まで代行)

②経費精算
⇒グーグル「Googleスプレッドシート」使用(直接部門が基本データを入力すれば、自動計算・処理)

③社員教育
⇒スタディスト「Teachme Biz」使用(業務用マニュアルの編集代行)

④電話応対
⇒NTTコミュニケーションズ「050plus」使用(スマートフォンを設定すれば、どこにいても代表電話が取れる)

⑤契約書のリーガルチェック
⇒弁護士ドットコム「クラウドサイン」使用(契約の締結や管理を代行)

⑥労務管理・勤怠管理
⇒LINE「LINE」使用(アルバイトの勤務希望や出勤管理はLINEで集約)

⑦出入金管理
⇒ネットプロテクションズ「NP後払い」使用(債権管理代行)

⑧業務報告書、日報管理
⇒グーグル「Googleドキュメント」使用(直接部門が書き込み経営陣が直接閲覧)

総務は1人で十分こなせる

進化した自動化技術で大企業でも省人化は可能

 どうしても業務量が集中するときはキャスター(東京・渋谷、中川翔太社長)が提供するオンラインアシスタントサービス「キャスタービズ」を使い、経理業務や入力作業を依頼する。これ以外でも久保田氏は作業することはなく、管理業務に徹する。そもそもクラウドサービスをフル活用することを前提に業務プロセスを設計しているため、無駄がない。「規模が大きくなっても私だけでやっていけそう」(久保田氏)。

大企業でも省人化は可能

 もっともスキャンマンのような新興企業は業務手順を整備する段階でクラウドを導入しているので、間接部門を小さくしやすい。だが大企業でも省人化は可能だ。企業規模を問わず間接部門のスリム化に役立つ技術として注目されているのがロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)だ。実際のロボットに作業させるわけではない。クリック操作や文字入力、コピーアンドペースト、ソフトの起動といった人間が行うパソコン操作を自動化できるというもの。複数のソフトにまたがった業務処理が可能で、人がこなしていた業務を交代できる。

 例えば顧客データベースを参照し、氏名や連絡先などをコピーして受注システムへ入力。さらに電子メールを立ち上げて、宛先や件名、本文までも入力して送るといったこともこなせる。人手だと30分ほどかかっていた業務が、RPAでは1分ほどで完了してしまう。年中無休でミスもしない。ホワイトカラー職場の定型的な作業を自動化できるのだ。

 RPAに詳しいデロイトトーマツコンサルティングの信國泰パートナーは「間接部門内で人力でこなしている業務の多くはRPAに置き換えられる。クリエイティブな業務以外はなくなる」とみる。人工知能が人間の能力を超えることで起こる出来事「シンギュラティ」が2045年に訪れると言われている。その時、AI(人工知能)に様々な仕事が奪われると言われるが、2045年を待つまでもなくRPAによって定型作業は置き換えられる可能性が高いというわけだ。

 RPAで業務を自動化できれば、間接部門が肥大化することもなく、少ない人員で乗り切れる可能性を秘めている。技術の進化により間接部門は極限までスリム化できる時代が近づきつつある。

1人で管理部門を担うために使える代表的なクラウドサービス
サービス名会社名機能
freeeシリーズfreee入力自動化で経理業務や給与計算など効率化
MisocaMisoca請求書、見積書、納品書の作成し郵送まで支援
Teachme Bizスタディスト業務用マニュアルを電子化し管理
ジョブカンDonuts勤怠管理や集計、シフト作成などを面倒な作業を自動化
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