2014.08.29
全国の日本酒の口コミ・評価サイト「日本酒物語」において、今、全国の日本酒の中でダントツ1位の好評価を得ている、山口県岩国市にある旭酒造の純米大吟醸「獺祭(だっさい)」。現在は酒米不足で出荷制限が出る人気ぶりですが、日本酒全体が衰退の傾向にある中で、なぜこのお酒がこれほどのブームになったのでしょうか。その経緯を追ってみましょう。
倒産寸前の酒造会社が、まさかの一発逆転
今でこそ日本国内はおろか、海外にまでその名をとどろかす「獺祭」ですが、今から30年ほど前には、倒産寸前の地方の小さな酒造会社にすぎなかったといいます。
社長の桜井博志は、1984年、父の急逝により34歳で酒蔵を継ぐ。当時の旭酒造は山奥の小さな酒蔵で、販売不振にあえぎ「県内でも“負け組”だった」という。 |
ところが2012年、旭酒造は純米大吟醸酒のトップメーカーに躍り出た。売り上げもこの1年で56%アップの39億円。注文に対して生産が追いつかないほどの人気の日本酒になった。 |
酔うため、売るための酒ではなく、味わう酒を
地元では食べていけないという危機感から東京進出を果たし、東京の市場を開拓できたことが成功の第一歩だったという桜井社長。当時は評価の低かったという山口県の酒でしたが、量より質を重視しながら、酔うため、売るための酒ではなく、味わう酒を追求したことが功を奏しました。
会場では沢山のITコーディネータと懇親会を深めました。獺祭の旭酒造の桜井社長様とツーショット。講演も素晴らしかったです。 pic.twitter.com/3qGGwxWs7v
— ブリッジリサーチ&コンサルティング (@bridge_rac) 2014, 8月 22
酒に何を求めるかは個人によって違う。山田錦を77%も削ると、香りがよく甘みもあってフルーティーなさらさらの大吟醸酒が出来上がるが、従来の日本酒党からは「喉をすっと通って飲みごたえがない」との指摘も受ける。逆に、従来酒では気になった糠の臭みや雑味が残らない後口の良さを気に入る人も多い。 桜井社長がこだわったのは量ではなく質。社会が酒に要求する「機能性」も時代とともに変わったと指摘し、「酔うため、売るための酒ではなく、味わう酒を追求する。時代がそれを求めている」と強調する。「日本酒の従来からの客をあまり追い掛けず、日本酒を飲んだことのない人、嫌いな人を顧客にしたい」。狙っているのはアルコール離れの激しい若者や女性層だ。 |
「日本酒の従来からの客をあまり追い掛けず、日本酒を飲んだことのない人、嫌いな人を顧客にしたい」。狙っているのはアルコール離れの激しい若者や女性層だ。 |
そして、海外輸出の開拓
桜井社長はさらに、東京進出だけではシェア争い激化に巻き込まれるのが目に見えていると判断し、海外への販路を求めます。
2002年、最初に進出したのは台湾だった。一定の成果を得た翌年、米国に販売ルートを作った。日本食ブームのニューヨークで急増しているクールな日本食レストランに売り込んでいる。「飲んだことのないものはなかなか買わない。レストランで飲んでもらうのが一番手っ取り早い。最近はワインショップなどでも少しずつ置き始めている」。 |
"進出先は中東のドバイや香港、英国、フランスなどを含め世界18カ国。売り上げの約1割を海外が占めている。とりわけ、米国に続く重要市場と位置づけているのはフランスだ。「マーケットとしてはアメリカが一番大きいが、フランスは食の面におけるアメリカに対する影響力がものすごく強い。フランスでしっかり売れないとアメリカでも難しい」と話す。 そこで踏み切ったのがフランスでの出店だ。来年3月23日にパリに店舗をオープンさせる予定だ。モデルとなるのが今年5月、東京・京橋にオープンした「獺祭 Bar 23」だ。ショップとバーを組み合わせた直営店。「世界で売れなければ日本酒の将来はない」との信念で、海外売上比率を5割にまで高めることを目指す。" |
安心のお墨付き ユダヤ教の「コーシャ」の認証を取得
欧米では有名ワインの多くに、ユダヤ教聖職者のお墨付きである「コーシャ Kosher」認定マークが付いています。そのマークは、有害な添加物などの入らない安心できる商品としてユダヤ教徒以外にも支持され、販売数が格段にアップするといわれています。獺祭は、おいしいといった抽象的な評価だけでなく、取得が非常に厳しいコーシャ認証をクリアできたことで、海外で信頼を勝ち得て、売り上げを確実に伸ばしたのです。JETROによる以下の動画には、獺祭のコーシャ認証取得の様子が登場します。
▼詳しくはこちらのHPの動画をご覧ください
▼詳しくはこちらのHPの動画をご覧ください
酒米不足はIT技術で対策を!
売れすぎて問題となっている酒米不足についても、クラウド技術を駆使したデータ管理で対策を練っています。
富士通は2014年8月4日、日本酒の製造販売を手掛ける旭酒造と共同で、ITを活用した酒造好適米の安定供給に取り組むことを発表した。 |
富士通と旭酒造の取り組みは、山田錦の栽培に関わるすべてのデータをクラウドに蓄積し、生産者同士でデータを共有できるようにすることである。クラウド基盤には、富士通が提供している農業向けクラウドサービス「Akisai」を利用する。蓄積する主なデータは、生産者が日々の作業内容を記録する「作業データ」、その日の気象や土壌の状況を記録する「環境データ」、稲の育成状況を記録する「育成データ」の3種類がある。 |
獺祭は、海外での評判が日本に逆輸入されたり、山口県出身の安倍首相が2014年4月に来日したアメリカのオバマ大統領が来日した際にプレゼントしたり、またテレビで特集番組が放送されるなどして、さらに人気がブレイク。巷の居酒屋などでは「獺祭あります」の看板がお客を呼び込むウリになったりしています。たしかに、ほの甘くてクセのない味わいは、今まで日本酒のターゲット層ではなかった女性や外国人にも好まれるはず。大胆な発想転換が功を奏した、日本の誇りともいえそうです。
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