日米安保条約がある限り、アメリカは日本を何があっても守ってくれる…、というのは大きな誤解のようです。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが取り上げているのは、親密になった元米軍将校からの言葉に衝撃を受けたという著者が、「知りたくない」と叫ぶほどの現実を綴った一冊。そこには表立って語られないアメリカの「本音」が綴られています。
偏屈BOOK案内:江崎道朗『知りたくないではすまされない ニュースの裏側を見抜くためにこれだけは学んでおきたいこと』
『知りたくないではすまされない ニュースの裏側を見抜くためにこれだけは学んでおきたいこと』
江崎道朗 著/KADOKAWA
2016年、米国大統領選挙投票日の1か月前、世界中のマスコミがクリントン当選を予測する中、著者はトランプ当選の可能性を指摘する本を出版し、冷笑、揶揄されたが、当選が決まるや「トランプの台頭を正確に分析した数少ない言論人の一人」として知られるようになり、とくに経済人からの講演依頼が多くなった。おかげで、著者は評論家として仕事ができるようになったという。
著者は学者でも、ジャーナリストでも、ビジネスパーソンでもない、特異な経験を踏まえて、マスコミではほとんど報じられることのない「現実」を論ずる。その「現実」は日本人にとって、きわめて耳障りなものである。現に米軍では「国益のためなら同盟国を見捨てることがある」と教えている。「聞いてないよォ」「知りたくないよォ」と叫びたくなる、衝撃の事実が次々と暴露される。
親密になった米軍の元情報将校が「原爆のことをどう思っているか」と聞く。著者は「あんなひどい戦争犯罪は許せない。同胞をむごたらしく殺されたのだから、いつか復讐したいと思っているが、いまは(アメリカは)同盟国なので我慢している」と、若さゆえ、一対一の会話ゆえ、本音で回答した。そのとき元将校が口にした言葉は意表を衝くものだった。笑顔で「ああ、よかった」。
当然反発されると思ったが、彼は嬉しそうにそう言った。「じつは日本に来て30年になるが、同じ質問を何十人もの日本人にしてきた。ところがみな『過去のことだから忘れよう』とか『そもそも日本が悪かったし、戦争中なのだから仕方がない』などと言う。わたしが日本人だったら、民間人をあのように殺されたら黙ってはいない。そんな日本人たちが、気持ち悪くて仕方がなかった。その後、日本人と付き合いを深めていくうちに『ああ、日本人は、アメリカ人には本音をいわないのだな』と思うようになった。我々米軍の者は、いざというとき、日本のために命をかけることを義務づけられている。だが、日本人は、我々を真の仲間だとは思っていないのだ、と」。そして、彼はこう述べた。「日本人の本音を直接聞いて安心した。今後は友人として付き合おう」
アメリカ人は「友人」になると、社会的地位に関係なく、ずっと突っこんだ関係を保ってくれる。元情報将校には遠慮なく話を聞けるようになった。ベトナム戦争の教訓から、アメリカは「自助努力をしない同盟国を守ることはできない」と考えるようになったという。著者は「日米安保条約には、アメリカはいざというとき、日本を守ると書いてあるじゃないですか」と反論してみた。
すると「たとえ同盟国であってもその国が自分の国を自分で守ろうとしなければ助けに行ってもムダだし、見捨てるしかない」「条約というものは、それが国益に適うときには、守るべきだ」と米軍は軍幹部に教育していたと断言し、著者にとてつもないショックを与えた。「無条件にアメリカが日本を守ってくれると思っているとしたら、それはそう考えている日本側が幼稚なのだ。同盟はギブ・アンド・テイクであり、アメリカにとって利益になるから続くのであって、アメリカの国益につながらないかぎり、日本を守るわけがない。日米関係は、親子のような無償の愛で結ばれているのではなく、冷徹な国益の計算に基づいているのだから」。日本が何の努力もせずに、アメリカが日本を守ってくれるなんて、虫のいい話は通用しない。アメリカは同盟国を見捨てることもある。それが歴史的事実であり、彼らの認識なのだ。知りたくないではすまされない。うわ、面白いぞこの本。初めて聞くことばかり。
編集長 柴田忠男
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