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農薬に関する法律、指導要綱、社会的役割などについて
- 日本の農薬の使用量は欧米に比べてどうなのでしょうか。日本の使用量は少ないのですか多いのですか。
- 農薬の使用量は栽培する作物や気候条件等によって大きく異なります。
栽培する作物がアメリカでは小麦、とうもろこしなどのように農薬使用量が少ない作物の栽培割合が高いですが、日本では果樹類など農薬使用量が多い作物の栽培割合が高いです。
また、同じ作物ごとで比較すれば、日本の農薬使用量が多い場合や少ない場合もありますが、それは気候条件等の違いによるためです。いずれも適正使用であり、過剰ではありません。農薬の使用量の比較は、いろいろな要素が絡み、単純に比較することは出来ません。
作物別に見ると、日本を含め世界各国とも果樹は農薬使用量が多く、大豆やとうもろこし、小麦は少なくて済み、水稲やばれいしょはそれらの中間ぐらいに位置付けられます。作物の違いを考慮せず、単純にすべての作物で使用された農薬の合計を全耕作面積で割った数字で比較すると大きな差が出てきます。例えばアメリカ農業では病害虫の発生が少なく、農薬の必要性が高くない麦類がほぼ半分を占めます。一方、日本では麦類の生産は小さいですが、病害虫の発生が多く農薬を必要とする果樹類が多いです。
同じ作物で比較すると、表1の大豆では日本は5.5kg/haでアメリカの約2倍となっています。これは日本では欧米に比べて温暖で湿潤な気候のため病害虫が発生しやすい条件にあるからです。一方、ブドウの殺菌剤では日本の農薬使用量は30.9kg/haで、アメリカとイタリアの3分の2、フランスの2分の1、スペインの約2倍となっています。また、日本に関する記載はありませんが、ばれいしょではアメリカの11.6kg/haに対し、スペインは約4分の1、フランスが約1.2倍、イタリアが約2倍となっており、国によって違いがあります。同じ作物で農薬使用量を比較すれば、日本が特に単位面積当たりの農薬の使用量が多いわけではありません。国による農薬の使用量にある程度違いがあるのはその国の気候等の違いで発生する病害虫や雑草の種類・量が異なるためです。いずれも適正使用であり、過剰ではありません。表1. 作物別にみた年間農薬使用量 作 物 国 名 栽培面積
(千ha)農薬使用量
(t)ha当たり
(kg)ぶどう(注) 日本 28 856 30.9 アメリカ 338 16,170 47.8 フランス 1,079 66,694 61.8 イタリア 1,129 50,750 45.0 スペイン 1,700 28,080 16.5 水稲 日本 2,246 24,549 10.9 大豆 日本 143 794 5.5 アメリカ 25,689 67,728 2.6 ばれいしょ アメリカ 513 5,945 11.6 スペイン 343 931 2.7 フランス 203 2,705 13.3 イタリア 138 3,071 22.3 (注)ぶどうについては殺菌剤のみ
バッテル社資料(1983年~1985年)などより
- 参考文献
- *福田秀夫『農薬に対する誤解と偏見』2000、化学工業日報社(2000)
- *日本農薬学会『農薬とは何か』1996、日本植物防疫協会(1996)
- *内田又左衛門『持続可能な農業と日本の将来』1992、化学工業日報社
- *化学工業日報社『農薬の話ウソ・ホント』1989
- *OECD database: Environmental Performance of Agriculture in OECD countries since 1990
- *OECD Environmental Data Compendium 2004, Paris, France; OECD Secretariat estimates; and national data sources
(2019年5月)
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