離婚の 原因 1 千 人 アンケートから 見えた 本当の 理由
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夫が病気の時に、義母に「何を食べさせているんだ」と文句を言われたことが忘れられない。Mさん(女性・55)は日ごろの義母の愚痴に対して不満を口にしたことはなかったが、鬱憤はたまっていた。
結婚25年目、突然「離婚をしてください」というタイトルで出張中の夫からメールが送られてきた。他に結婚したい人がいるという内容だった。夫は不倫をしていたのだ。茫然としているところに義母からも手紙が届く。内容は主に謝罪だったが、息子がそんなことをするのはあなたにも原因があると責められているような内容でもあった。夫の不倫はもちろん、姑の発言も許せない。耐えられなくなり、涙があふれ出た。
●夫婦はよいが親が面倒
離婚の原因として“性格の不一致”や“価値観の違い”はよく挙げられる項目だが、具体的に何なのか。1千人アンケートで「離婚をしたいと思ったことがあるか」と聞いた。「ある」と答えた人の「結婚による不便」で割合の高いものを調べてみると、「相手の親・親族の付き合いが面倒」が39.2%と、最も高い。次に高いのが「家事の負担が増える」で36.6%だ。リクルートブライダル総研究長の鈴木さんは言う。
「夫婦ふたりは仲が良くても、その周囲のことが面倒だと感じている人が男女共に増えている」
15年の離婚組数は約22万6千組。対有配偶者数と比べると0.7%とそれほど高い割合ではなく、若年層のほうが高い傾向にある。夫婦生活が長くなるほど、不満はあれど関係は落ち着いていくようだ。
1千人アンケートとは別にアエラネット会員向けに行ったアンケート(173人回答)では、夫婦間に起こる喧嘩の原因について聞いてみた。比較的初期に起こる喧嘩で多いのが「義親について」だった。
前触れもなく東京にやってくる義母に頭を悩ませているのは、東京に住むOさん(女性・35)だ。義母は東京観光をしたがるが一人で電車には乗れないし、「布団が寝にくい」と夫ではなくOさんにクレームが入る。夫には苦情をどんなにやんわりと言っても、必ず喧嘩になるので文句を言うのをやめたという。
「夫からの愛情は感じるし、友だちのように仲がいい。でも、義母との関係は違う」(Oさん)
義母への不満と小言の多い夫への不満が折り重なり、日常生活における夫の言動ひとつひとつにいらだち始める。今ほしいのは、自由になれる自分だけのスペースだ。
「義母はちょっと縁のある、でも他人です」
と言うのは、旧家の長男に嫁入りをしたKさん(女性・47)だ。結婚してすぐ義親と一緒に暮らし始めるといびりが始まった。何もしないと怒られて、何をしても怒られるので、
「気に入らないなら今後一切家には立ち入りません」
と言って離婚を覚悟で夫の実家を出たら夫もついてきたという。以来、夫の親の家には足を踏み入れていない。
前出の筒井教授は、1千人アンケートを見てこう指摘する。
「親と同居をすると夫婦仲は悪くなる。政府は子育て支援に3世代同居を活用しようとしているが、同居はストレスがたまってかえって夫婦関係が悪くなるのではないか」
●自立意識は中高年も
博報堂生活総合研究所の夏山さんは、結婚がうまくいくかを左右するのは「自立意識」があるかどうかだと断言する。
「当研究所の『生活定点』調査などをみると、夫婦といえども、結婚生活は個人対個人の活動だと意識している人が増えているんです」(夏山さん)
博報堂生活総合研究所の60歳から74歳を対象にした「シルバー調査」によれば、夫婦で共通の趣味を持ちたいという人は年々減っていたりと、自立意識は若い世代のみならず、長年連れ添った夫婦間でも求められているという。また60代からが再出発の時だと感じている人も多い。
Mさんは、離婚して半年後に、ブライダルゼルムが提供する結婚相談所に登録をした。そこで紹介されて出会った男性(61)と再婚。ハワイで挙式をし、現在は新しい夫と小型犬とで暮らしている。式には成人した3人の娘にも参列してもらった。
「自分は年だからと諦めないでいてよかった。今は新婚のようで初々しい気持ちです」
老後も街中で手をつないで歩いたり、いつまでも仲のいい夫婦が理想だ。
今回の1千人調査の「離婚をしたいと思ったことがあるか」という設問に、子どものいる女性の約半分が「ある」と答えている。その割合は夫婦だけの生活の人よりも高い。
●女性は男性よりクール
博報堂生活総合研究所の「生活定点」調査によれば、「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がよいと思う」と答えた人は1998年には男性で約40%、女性で約27%だったのに対し、2016年には、男性約29%、女性約19%に減少している。リクルートブライダル総研による「離婚に関する調査2016」によれば、離婚経験者において、離婚当時に自分が望んでいた割合は、男性で約29%、女性で約64%となる。女性は男性よりもクールだ。
Sさん(女性・33)も子どもが生まれて夫への積もった不満が爆発し、離婚に至った。育児と家事の大半をSさんが担い、自分は外の仕事も家の仕事もしている感覚なのに、それが当たり前のように思われていて感謝の言葉もない。限界を感じて離婚をしたいと伝えた時に、
「私だけが自由じゃなかった」と夫に不満を言うと、
「老後になれば、またふたりの自由な生活に戻れるよ」
と慰められてあきれた。
Sさんが離婚して1年、今は新しいパートナーと事実婚関係で生活をスタートさせている。Sさんは言う。
「20代のときは夫婦になってもお互いが自分の好きなことを続けられることが魅力だと思っていたけど、互いの歩み寄りがないと夫婦は成り立たない」
今のパートナーは違う。前回の反省を含めて接している部分もあり、喧嘩をしたことがないのだという。
「でも、再び結婚をするメリットが感じられない。好き同士で一緒にいられたらそれでいい」(Sさん)
結婚はふたりだけのものじゃない。それが、結婚というもののハードルを上げているのだ。(編集部・市岡ひかり、柳堀栄子)
※ AERA 2017年3月20日号
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