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2022年08月26日 07:20 まいどなニュース
限定公開( 1 )
写真 「進夫さんと二人三脚でここまで来ました」と吉山さん。(画像提供:TAKECO1982さん) |
73歳で初めてのお店をオープンした吉山武子さんは、現在も元気に働き続ける80歳。彼女が営むのは日本では、まだまだ珍しいスパイス専門店です。はたして、なぜスパイスだったのか…彼女にお話を聞きました。
今でこそ、スパイスカレー専門店が続々と出店し、スーパーマーケットの一角にさまざまな種類のスパイスが並ぶようになりました。が、吉山さんがスパイスやハーブの素晴らしさを伝えるためにスパイス料理研究家として活動を始めた40年前は「スパイス?何それ」という人が大半でした。
そんな逆境のなかにも関わらずある講習会をきっかけに、スパイス一筋の人生に。彼女が営む福岡県久留米市の「TAKECO1982」で提供されるカレーを目当てに遠路はるばる訪れる人も多く、「辛くないスパイスで子供も楽しめる」「優しさの中に芯がある感じ」「スパイスたっぷりなのに、優しくて食べやすい」と評判になっています。
「スパイスを使わないなんてもったない。人生損していると思います」と話す吉山さんに、これまでのこと、そして、これからの抱負を教えていただきました。
鳥肌がたつほど感激したスパイスとの出会い
吉山さんの人生が一変したのは、約40年前。嫁ぎ先の家業や自宅近くの料理教室の手伝いをしていたある日のこと。インドのスパイスを使用したカレーを作る講習会でのことでした。
それまで作ってきた市販のルーを使ったカレーとはぜんぜん違う複雑な味わいに大感動。スパイスへの興味がむくむくと湧き上がると同時に、「妹たちや友達にも知ってほしい」と自ら振る舞うように。「みんなが喜ぶのだから、もっとたくさんの人に広めたい」と移動料理教室を開くようになったそうです。
教室に参加する人はスパイスに興味を持っている人が大半です。しかし、ひと揃えすると高額になってしまうスパイスカレーセットを買う手は止まってしまう人、家に帰って家族に作ると「これはカレーじゃないと言われた」という声なども。
決して順風満帆とはいきませんでしたが、口コミでその存在が知られるように。イベントでカレー1000食分を作ったり、カレー屋さんをプロデュースしたりなど活動の幅を広げ、65歳のときには「スパイスブレンダーの吉山武子です」と名乗るようになっていました。
念願のショップオープンは夫の介護をしながら
どんなに健康に気を配っていても、年齢を重ねていくと疲れがたまりやすくなっていきます。吉山さんも60代後半になると移動教室の開催に疲れを感じるように。引退を考えていた矢先、「それなら、移動教室を辞めて、お店を作ろう!」と東京で食品会社を営む姪が提案してきたのです。
「久留米で、スパイスだけのお店なんて厳しい。しかも70歳過ぎてからのショップオープンなんて!」と固辞していました。けれども、その一方でお店は長年の夢であったことも確か。73歳にして、ショップ「TAKECO1982」オープンという新しい挑戦に舵を切りました。
吉山さんがスパイス料理研究家として活躍の場を広げていく過程には、夫・進夫(のぶお)さんの応援がありました。「私のことを仕事人として認め、協力してくれました」と吉山さん。「しょうがなかたい、相手があることやから」と励ましてくれたこと、「なんでもやってみんとわからんよ」と背中を押してくれたことも。遠方で仕事がある時は、進夫さんの運転する車で出かけたものでした。
しかし、ショップオープンの頃には、要介護3になりました。食事やトイレの介助などが必要で、デイサービスやショートステイの間に、買い物や家事、店のことなどをおこなっているといいます。「夫の介護に追われるだけの人生だったら、私は今ごろきっとつぶれていたでしょう」と店があったことで心が救われ、また二人とも元気に過ごせた日には幸せを実感していると吉山さんはいいます。
今は、吉山さんが常駐せずともお店が営業できるように運営し、お店に行くのは週1回程度に留めているそう。「介護をしながらのショップ運営はキツイと感じることも不安なことも。毎日が綱渡りだけど、ショップのスタッフや介護施設の方々、たくさんの人に助けられながら力をもらっています。年をとっても、自分が生かされる場所があることに感謝しています」と語ってくれました。
夫のお世話が最優先、次の夢はYouTuber
フードロス減少のために福岡県産の柿で「柿チャツネ」商品化、自販機での冷凍カレーの販売、スパイス人生を綴った書籍『80歳のスパイス屋さんが伝えたい人生で大切なこと』(8月25日発売・KADOKAWA)の上梓など、できること、やりたいことをどんどん実現していく吉山さんには、今、新たな夢があります。それはYouTuberになることで、8月25日にYouTubeをチャンネルを作成したばかりです。
「教室を開いて欲しい、というリクエストもいただくのですが、今は夫のお世話が最優先。それなら、自宅で料理動画を撮影して、配信すればいいんじゃないかな、と。YouTubeなら、スパイスの素晴らしさをこれまで以上に伝えられると思います。今どきのお母さんは働いている人も多いので、動画なら見たい時に見て、ごはん作りに活かせるのではないでしょうか。スパイスでたくさんの人を元気にしたいです」。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・宮前 晶子)
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