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2024年1月4日木曜日

トヨタ「全固体電池」未完成。コメント:ADEKAなら全固体電池を既に完成させておりますよ!

https://courrier.jp/news/archives/346125/

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2023年10月のジャパンモビリティショーで、バッテリーEVのSUVコンセプトモデル「FT-3e」を紹介する佐藤恒治社長 Photo: Tomohiro Ohsumi / Getty Images

2023年10月のジャパンモビリティショーで、バッテリーEVのSUVコンセプトモデル「FT-3e」を紹介する佐藤恒治社長 Photo: Tomohiro Ohsumi / Getty Images

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フィナンシャル・タイムズ(英国)

フィナンシャル・タイムズ(英国)

Text by Harry Dempsey, Kana Inagaki, Christian Davies, Song Jung-a

トヨタ自動車は次世代バッテリー「全固体電池」を早ければ2027年に実用化すると発表し、世界を驚かせた。この技術が実用化されれば、EVだけでなく、交通システム全体を大きく変える可能性があるという。英紙「フィナンシャル・タイムズ」が、全固体電池の持つ可能性について探った。

「ポータブル家電革命」を起こしたリチウムイオン電池


リチウムイオン電池を数十年も研究してきたソニーは1990年代、ポータブル家電に革命を起こした。小型で軽量のビデオカメラや携帯電話などの製品を生み出し、何十億人もの人々の生活を変えた。

電池はいま、世界の輸送システムを刷新し、化石燃料への依存を断つ上での中核となっている。リチウムイオン電池の製造コストは大きく下がり、電気自動車(EV)の販売は近年、飛躍的に伸びた。しかし、その技術の骨子は実用化以来ほとんど変わっていない。

しかし、30年にわたって徐々に開発が進められた結果、その形はまもなく変わるかもしれない。世界最大の自動車メーカーであるトヨタは、2023年10月半ば、「全固体電池」の技術的ブレークスルーを発見したと発表した。実用化されれば電池のゲームチェンジャーとなりうると言われてきた次世代技術だ。

同社が6月に全固体電池のEVへの投入を示唆して以来、注目が集まっており、トヨタの時価総額は15兆円程度も跳ね上がった。

もしその開発がうまくいけば、トヨタは早ければ2027年に同電池を搭載したEVの販売を始められる。より安全で、より速く充電でき、航続距離も現在の倍程度になったEVができるだろう。1回の充電で、1200kmまで走れる。

英国の電池研究機関ファラデー研究所の共同設立者で、チーフ・サイエンティストのピーター・ブルースは言う。

「全固体電池の開発競争は全世界で起きています。トヨタか他のメーカーが充分な耐久性と寿命、およびコスト競争力のある全固体電池を作ることができれば、破壊的な影響があります。電池のエネルギー密度はさらに上がり、充電時間も向上させられるでしょう」

この技術が実現すれば、現在、テスラと中国のBYDの2社が独占するEV市場が揺るがされるだろう。それは地政学的な意味も持ちうる。現在、中国がバッテリーとその原材料を独占しているため、西側諸国は不安を抱いているからだ。

さらに、全固体電池は、航空機など、幅広い輸送分野へ新たに応用できる可能性もある。このインパクトは、固定電話から携帯電話への移行と同じくらい大きなものになりうると考える人もいる。


全固体電池開発への懐疑


しかし、全固体電池技術に対して懐疑的な見方もある。科学的な基本的課題は本当に解決されたのか、本当に高速で大量生産できるのか、対象となる市場は充分に大きいのか、数々の疑問が挙げられている。

「全固体電池が非常に注目され、既存のバッテリーでは不充分だというような印象を受けたかもしれません。しかし、そんなことはありません。既存のEVの売り上げは年率20〜30%で伸びています。すでにEVに乗りはじめた人たちのほとんどが、もう元には戻れないと言っていますよ」と米投資会社カナコード・ジヌイティのアナリスト、アレックス・ブルックスは話す。

全固体電池を用いることで世界の交通をどこまで脱炭素化できるのか、トヨタの発表以降、議論が高まっている。

米国アルゴンヌ国立研究所のエネルギー貯蔵共同研究センターのヴェンカット・スリニヴァサン所長は、全固体電池はバッテリー業界における「聖杯」、つまり、長期的に達成すべき非常に高い目標だという。トヨタは研究室レベルでの実験に目処がついたとするが、それに対して彼はこう述べる。

「全固体電池のための興味深い技術革新を研究室で生みだせても、大量製造できるようになるまでにまだ大きな飛躍が必要なのか、それともすぐにできるのか、私にはわかりません」


固体で電流を通す


すべての電池は同じように機能する。イオンとして知られる電荷を帯びた原子が、電池の負極から正極まで電解質の中を通って流れることで、電流が発生する。

全固体電池が現在のリチウムイオン電池と異なるのは、電解質が液体ではなく固体という点だ。固体電解質として利用できるか、ポリマー、酸化物、硫化物などさまざまな材料でテストしている。液体の電解質は火災の危険性があるため、固体のものを使うほうがはるかに安全だ。

しかし、電解質を変えるだけで、バッテリーの性能を飛躍的に高められるわけではない。注目すべきは、リチウム金属アノードという技術開発である。現在、負極材料として使われているグラファイトの代わりにリチウム金属を使えば、バッテリーを軽量化し、航続距離を2倍にできる。

全固体電池は、長年にわたって基礎技術における課題があった。ひとつは、充放電を繰り返すと樹状突起(デンドライト)が形成されることだ。それが電池の構造に傷をつけるため、電池の性能を維持するのは難しい。もうひとつの課題は、固体材料同士を安定的に接触させるのが困難なことだ。

トヨタは10月半ば、石油化学グループの出光興産と提携し、全固体電池に応用するための硫化物電解質を共同開発・生産すると発表した。出光の木藤俊一代表取締役社長は、トヨタ自動車との共同記者会見で「この硫化物系固体電解質はバッテリーEVが抱える航続距離への不安や充電時間の長さといった課題を解決する、最有力素材であると我々は確信しています」と述べた。

全固体電池の開発に際してはさまざまな技術的課題があるが、基本的なものは克服できると、より多くの科学者が考えるようになってきている。次の課題はその大量生産だ。正極と負極のセルを、材料を傷つけずに迅速かつ高精度に積み重ねる必要がある。

トヨタの技術者たちは、この点に関しても進展があったと語る。現行のリチウムイオン電池と同じ速度でセルを積層できるようになると、彼らは自信を持って語る。

しかし、本格的な大量生産のためには、他の技術的なハードルをクリアする必要がある。9月に開催された、記者、アナリスト、投資家向けの愛知県の貞宝工場見学で、あるエンジニアは言った。「電池材料の量と品質を確保するためには、まだブレークスルーが必要です」


圧倒的な中国の影響力


全固体電池が導入されれば、世界の自動車産業の未来は変わるだろう。

現時点では、バッテリー技術と製造の両面で中国が主導権を握る。国際エネルギー機関(IEA)によると、2022年、世界のバッテリーの75%以上は中国で生産された。次世代の電池も中国が支配する可能性がある。

世界最大のバッテリーメーカーの中国CATL(寧徳時代新能源科技)は、2022年の市場シェア37%を誇る。同社は研究開発に巨額の投資をし、大量に生産していることもあって圧倒的にコスト優位性が高く、電池メーカーとして最も収益性が高い。

全固体電池の開発は、バッテリー競争で中国を追い抜ける唯一の方法だろう。この技術に投資しているのはトヨタだけではない。日産とホンダも独自に開発研究を進めている。

韓国の3大電池メーカー、LGエナジー・ソリューション(LGES)、サムスンSDI、SKオンも、2020年代後半までに開発する意向を示している。独フォルクスワーゲンのパートナーの米新興企業のクアンタムスケープと、独BMWと提携する米ソリッドパワーも、全固体電池を開発中で、同じ頃の商業化を目指している。

大阪公立大学の林晃敏教授は、現在のリチウムイオン電池と同品質の全固体電池を大量生産するのは「極めて困難」だと述べる。しかし、実現すれば「世界的に無敵の技術」になるという。

「日本の自動車メーカーがEVでの出遅れを取り戻し、リチウムイオン電池の市場シェアを失った日本が復活できるチャンスになるでしょう」と林は指摘する。

中国は電池原料も支配している。たとえば、リチウムイオン電池に使われるグラファイト(黒鉛)は中国が圧倒的なシェアを持つが、その輸出は制限されている。しかし、全固体電池ができれば、そのような中国に対する依存を減らせる。

一方、現在のバッテリーよりもさらに多くのリチウムを必要とするため、予測されるリチウム不足に対しては依然として脆弱だ。


トヨタに対する懐疑的な目


中国と韓国のライバルは、全固体電池をそれほどうまく開発できるとは思っていない。CATLに近い人物によると、同グループの研究部門では過去10年間、全固体電池の研究に取り組んできたが、コスト効率よく大量生産できる方法を見出せていないという。彼らは、トヨタがすでに完成に近づいているというのに懐疑的だ。

韓国の業界幹部も同様の考えを持つ。「製品を開発するのと、それを商品化するのは、まったく別の問題です。トヨタは10年以上前から全固体電池の量産化について語ってきましたが、その商業化目標は遅れつづけています」

技術上の課題を克服し、大量生産できるようになったとしても、全固体電池の生産コストを下げられるかは未知数だ。多くのEVに採用させ、普及して世界展開を加速させられるほどに価格を下げられるかはわからない。

生産規模を拡大すれば、コストは削減できるだろう。しかし、リチウムイオン電池も現在改良され、性能とコストは向上しつづけている。シリコンアノードの導入と改良など、技術は進歩している。

一方、全固体電池は湿気や酸素に非常に弱いため、製造コストが高くなる可能性がある。また、その複雑さゆえに、導入するEVを再設計する必要もあるかもしれない。

コストが充分に下がらない場合、全固体電池を導入するEVは、高級車か輸送用トラックに限定される可能性がある。韓国LGESのアドバンスド・オートモーティブ・バッテリー部門の責任者であるキム・ドンミョンは、全固体電池の製造は「コストがかかりすぎるため、用途は非常に限られます」と話す。

韓国製鉄のポスコグループで電池材料事業の責任者を務めるイ・ギョンソブは、すべて計画通りに進んだとしても、全固体電池を採用するEVはごく一部に限られると考えている。2035年までに市場全体のEVの10%程度にしか使われないと予測する。

トヨタの佐藤恒治社長自身も、全固体電池を、世界的なEV競争を勝ち抜くための「ゲームチェンジャー」とは言っていない。彼は全固体電池をまずは少量のハイエンドモデルに導入し、より手頃な価格の自動車にはリチウムイオン電池を用いるとしている。

「全固体電池の技術は、当社が持つさまざまなバッテリー製品の総合力を高めるという点で、非常に重要な要素です。しかし、電池そのものでクルマの価値が一義的に決まるわけではありません」と佐藤は10月の会見で述べた。

全固体電池の構成技術は、徐々に現在のバッテリーに導入され、統合されていくというのが、多くの業界幹部の意見だ。CATLはまさにそれを計画しているようで、現行モデルの2倍のエネルギー密度を持つ新しい「凝縮型」、つまり「半固体」バッテリーを4月に発表した。

世界最大のリチウム生産企業である米アルベマールの最高技術責任者、グレン・マーフェルドは次のように言う。「私たちは全固体電池の開発を目指しています。現在のリチウムイオン電池が進化を遂げ、最終的にはそのような形になるでしょう」


全固体電池が起こす「革命」の可能性


まだ技術的な障害を抱えた全固体電池が実用化されれば、その影響は極めて大きくなるという見方もある。性能が大幅に改善されれば、世界のモビリティの構造を大きく変えるかもしれない。ロボットタクシーから地域間の航空、新種のドローンにまで影響を与えうる。

「全固体電池の持つ潜在的な可能性を生かされなければなりません。古いバッテリーに取って代わるだけでなく、これまでできなかったことが可能になるでしょう」と、シカゴ大学でバッテリーを専門とするシャーリー・メン教授は言う。

「圧倒的に長い航続距離と短い充電時間という全固体電池の利点を最大限に活かし、日本の自動車会社は交通の未来を再構築しようとしているのです」

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