https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC315VJ0R30C24A1000000?n_cid=NPMTF000P_20240202_a18
米国政府による半導体投資支援を目的とする「CHIPS and Science Act(CHIPS法)」がようやく本格的に動きだした。同法に基づき、まず防衛関連技術を手掛ける英BAE Systems(BAEシステムズ)と半導体製造を手掛ける米Microchip Technology(マイクロチップ)に助成金を拠出する。半導体の国内製造基盤を固め、国家安全保障を強化したい考えだ。
2022年に成立した米国のCHIPS法は、地政学的リスクや半導体不足によるサプライチェーン寸断に備えるもの。米国内での半導体製造を財政支援し、先端品から成熟品までの自前確保や雇用創出を目指す。「今後1年間で数十億米ドルの資金を提供する」と米国大統領のジョー・バイデン氏は述べた。
米商務省は2023年12月11日、BAEシステムズの事業会社であるBAE Systems Electronic Systems(BAEシステムズES)に対して約3500万米ドル(1米ドル=147円換算で51億4500万円)の助成金を提供する予備的覚書に署名したと発表した。
BAEシステムズESは助成金により、製造する戦闘機「F-35」などに必要な半導体の生産量を4倍にする計画だ。具体的にはガリウムヒ素(GaAs)と窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)の6インチウエハーを製造する「マイクロエレクトロニクス・センター」の製造能力を強化する。
BAEシステムズに続く2件目は、マイクロ・コントローラ・ユニット(MCU、マイコン)などを製造するマイクロチップである。米商務省は2024年1月4日、同社に約1億6200万米ドル(同約238億円)を拠出する予備的覚書に署名したと発表した。
米商務省は助成金拠出の意義として、「(新型コロナウイルスによる)パンデミック時のマイコン不足は世界のGDPの1%以上に影響を与えた。国内供給のさらなる確保により、米国の経済や安保の向上に貢献する」と説明する。マイクロチップは助成金により、米国オレゴン州とコロラド州の工場の拡張などに投資。これらの工場で生産する半導体生産量を約3倍にする計画である。
なお、台湾TSMC(台湾積体電路製造)の米国工場もCHIPS法による助成金拠出を見込む。同社のアリゾナ州工場は2025年に第1工場で4nm世代、それ以降に第2工場で3nm世代半導体を製造する予定である。
(日経クロステック/日経エレクトロニクス 久保田龍之介)
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