生えない原木しいたけ
意気揚々と10月頭にセットした原木しいたけ栽培キット。
説明書によると『(セットしてから)室温にもよりますが7~15日で採り頃になります』と記載されていますが実は1ヶ月くらい経ってもまったく生えてきませんでした。
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原木の切り口にはしいたけの白い菌糸らしきものが元気にたくさんついているし、しいたけの芽らしきものも確認できていたのですぐしいたけが出てくると思ったのですがその後全く成長する様子がありません。
ここまでの管理は、
・16℃以下の冷水で24時間 浸水(原木を水に浸ける事)
・きのこ問屋の事務所内でビニール袋をかぶせて霧吹きで水やりしながら見守る
・湿っている状態をキープ
していたんですが・・・
しいたけは生えてこなかったんです。
原木を外に置いてみた
1ヶ月くらい経ってもあまりに変化が無いため、だんだん事務所で育てている環境が原木にとって良くないのではないか?と考えるようになってきました。
そういえば原木しいたけの生産地でも外にそのまま置いてるじゃないか!
そこで思い切ってきのこ問屋の建物の外で、1日中日光が当たらない場所に置き、ビニール袋も掛けずに置いてみることにしました。
雨が降れば雨水が当たるし、日陰とはいえ乾くときは乾きます。
これぞ自然の状態!
(と言いつつただの放置?)
しかし露木のこの判断はおそらく間違っていました。
外に置かれた原木は2ヶ月経っても全く変化は無かったのです。
しいたけ屋さんの見解は?
ちなみに露木は過去にマッシュルーム栽培キットでも生えなかった事があり、やっぱり僕は生産者にはなれないんだな・・・と半分諦めムード。
ただ最後の悪あがきということで原木しいたけ栽培キットを生産しているしいたけ屋、富士種菌さんにお伺いしてみました。
原木の状態を見ていただいたところ
『木は健康そうなのでまだ発生できるかと存じます』
とのこと。
な、何ですとー?!
『菌も木口(原木の切り口のことだろう)に出てきておりますし、植菌穴の部分にも活動が見受けられますので、大変恐れ入りますがもう一度浸水作業をして頂けないでしょうか。
原木を一晩浸水していただいた後、木の乾燥を防ぐために軽くビニール袋をかぶせていただき、霧吹きで水分を与えながらしばらく様子をご覧になってみてください。
ビニールは少し下側をめくっていただき、密封は避けていただくようにお願いします』
ということでした。
またなぜ原木が健康なのにしいたけが生えてこなかったのか?
メーカーの見解を聞いてみました。
『(富士種菌さんの)研究室の見解ですと、浸水時の刺激が少なかったものと考えられます。
浸水時の水の温度(15℃以下)や、浸水させ木を窒息させる刺激が少なかった、などが挙げられます。
浸水することで温度差や窒息して苦しいという刺激を菌糸に与えてしいたけを発生させますので、その点が少し足りなかったのではと思います』
うーむ、この浸水がいまいちだった可能性があるということでした。
なるほど。
でもちゃんと水温も計って時間も説明書通り24時間浸水したのですが・・・
『たしかに説明書通りに行っていただいているかと存じますので、環境などの違いから発生のスイッチが入らなかったのではと思います』
とのこと。
発生のスイッチとは面白い表現ですが非常に分かりやすい!
しいたけ菌が原木を分解しながら菌糸を伸ばしていく栄養成長から、子孫を残すために子実体(にょきっと生える、いわゆる”しいたけ”)を発生させる生殖成長に切り替えさせる必要があります。
そのスイッチがなぜかうまく入っていなかったということです。
≪栄養成長≫
≪生殖成長≫
しいたけが生えた!
富士種菌さんのアドバイス通りバケツに水を張り外で再度24時間原木を浸水してから一週間後・・・
無事、しいたけがにょきっと生えてきました!
【富士種菌さんに聞いた原木しいたけ栽培のポイント】
自然にしいたけが出るのは秋と春です。
業界では「秋子(あきこ)」「春子(はるこ)」と言いますがしいたけ栽培はいかに山や森の状況を再現できるかがポイントです。
≪秋子のパターン≫
夏(暑い)→長雨(浸水)→秋(涼しい)
≪春子のパターン≫
冬(寒い)→長雨(浸水)→春(暖かい)
なので
①浸水前後の環境に温度差がある(夏⇔秋)(冬⇔春)
②浸水で水の刺激を与える(長雨)
の2点がポイントです。
しかし、原木しいたけ栽培キットは家庭での簡易栽培を目的としていますので
②浸水で水の刺激を与える、だけで発生を狙っています。
よって、冷水へ完全に沈めるというしっかりした浸水刺激が重要です。
露木さんが再浸水してから発生が始まったのは
●偶然にも外に置いた(寒い冬)→浸水→オフィス内に戻した(暖かい春)の「春子のパターン」だったのかもしれません。
他にも森を再現しようとすれば
●朝と夜は涼しく、昼は暖かい(一日の温度差が激しい)
●朝と夜は湿気があり、昼はカラっとして風が抜ける
などもしいたけ栽培では実践されていることでポイントと言えます。
しいたけ栽培は「うんちく」や「ノウハウ」が多くいろいろと発生を工夫して楽しんで頂ければ幸いです。
(富士種菌 営業 小林 大樹さん)
にょきにょき生える様子を動画におさめようと、定点観測カメラ『レコロ』くんで撮影を試みています。
上手に撮れたら次回ご覧いただきたいと思います。
原木しいたけ栽培キット失敗編、のまとめ
①原木の中に菌糸が広がっていく栄養成長から、子孫を残すための生殖成長に切り替えないとしいたけは生えない。
②16℃以下の冷水に浸ける温度差と、しいたけ菌を24時間浸水して窒息させる刺激で生殖成長へスイッチが入る。
③1回目の浸水でスイッチが入らなければもう一度浸水を試してみましょう。
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