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Vol . 47 No. 3(2008)
化学災害ニュース No . 45
事故・災害ニュース
化学災害ニュース No. 45
筆者が日頃収集している爆発事故関連のニュースを
一般市民の知りうる情報(報道情報)から抜粋してお
知らせする.
ニュースの形式は,独立行政法人産業技術総合研究
所安全科学研究部門爆発安全研究コアが同所先端情報
計算センターの協力を得て WWW 上で公開している
「リレーショナル化学災害データベース」(http:
//riodb.ibase.aist.go.jp/riscad/)の項目の一部を抜粋し,
以下のとおりとした.1 . 発生年月日,2 . 住所,3 . 業種,
4 . 関連物質,5 . 死傷者,6 . 概要.
事故原因など内容に関しては,事故の詳細な調査が
行われる前の報道情報であるため,その後の調査結果
とは異なる事故発生直後の推測に基づいた内容が含ま
れることをご了承願いたい.
〈金属加工工場の溶解炉でガス中毒〉
1 . 2006 年 1 月 13 日 9:00 頃
2 . 三重県多気郡大台町
3 . 鉄素形材製造業
4 . 一酸化炭素
5 . 死者 1 名,重体 1 名
6 . 金属加工工場にある高さ約 5 m,直径約 1 m の
円柱状の鋳物溶解炉で炉内の保守点検作業中に
作業員がガス中毒になった.作業員 1 名が死亡
し,1 名が重体となった.警察の調べでは,鋳
物製造時の熱で摩耗した炉の内壁の交換作業を
しており,この際に一酸化炭素などの有毒ガス
が発生したか,あるいは,酸欠になった可能性
がある.
〈核燃料再処理工場の配管から硝酸溶液漏えい〉
1 . 2006 年 1 月 14 日 17:30 頃
2 . 青森県北上郡六ヶ所村
3 . 核燃料製造業
4 . 硝酸,硝酸塩,ウラン,プルトニウム
5 . なし
6 . 核燃料再処理工場で配管から硝酸溶液約 1 . 3 l
が漏えいした.漏えい液から放射能は検出され
ず,周辺環境への影響はなかった.同社の調べ
では,ウランおよびプルトニウムを含む硝酸溶
液からウランを抽出する機器へつながる配管の
うち,酸性度を測定する機器の配管の差し込み
が不十分で,すき間から漏えいした.
〈ビルで非常発電機の点検中に爆発〉
1 . 2006 年 1 月 15 日 9:00 頃
2 . 大阪府大阪市中央区
3 . ビルメンテナンス業
4 . 不明
5 . なし
6 . 8 階建てのビルの屋上で,月 1 回行われる非常
用発電機の点検のため発電機のスイッチを入れ
たところ,数分後に爆発が起きた.直径 1 . 2 m,
重さ 30 kg の鉄製の屋根が吹き飛び,窓ガラス
などが破損した.けが人はなかった.警察の調
べでは,付近に鳥の焼けた死骸や羽が散乱して
いたことから,ダクト内に鳥が巣などを作って
いたためガスが詰まり,爆発した可能性がある.
〈製油所で原油タンク洗浄中に爆発〉
1 . 2006 年 1 月 17 日 14:20 頃
2 . 愛媛県今治市
3 . 石油精製業
4 . 原油
5 . 死者 5 名,軽傷 2 名
6 . 製油所で高さ 24 . 3 m,内径 75 . 5 m,容量 10 万
kl の縦置き円筒型浮屋根式原油タンクの内部洗
浄中に爆発が起きた.マンホール保温外板,
フォームシールに亀裂が入り,入槽用仮設足場,
キャプタイヤケーブルが焼損した.洗浄してい
た協力会社の作業員 7 名のうち,5 名が死亡し,
2 名が軽傷を負った.警察および事故調査対策
委員会の調べでは,浮き屋根が底部から 1 . 9 m
程度になるまで原油を抜き,底部 20~30 cm に
溜まったスラッジ約 810 kl を軽油により溶解さ
せ,スラッジを回収する作業を行っていた.人
体および工具に帯電した静電気,投光器および
配線の漏電などによるスパーク,鋼製工具,機
材接触による火花などが着火源となりスラッジ
から気化した可燃ガスに引火した可能性があ
る.再発防止策として,極力無人で洗浄する工
法の採用,入槽時の許可基準の安全性強化,タ
ンク内への電気機器などの持ち込み制限の強
化,協力会社とのコミュニケーションの強化な
どが公表された.
〈中学校の実験で水素が爆発〉
1 . 2006 年 1 月 20 日 0:40 頃
2 . 東京都町田市
3 . 中学校
4 . 水素,亜鉛,塩酸
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化学災害ニュース No . 45
5 . 重傷 1 名,軽傷 4 名
6 . 中学校の理科室で水素を発生させる実験中に
三角フラスコが爆発した.周辺にいた教員 1 名
を含む 36 名のうち,生徒 1 名がフラスコの破
片で手を切り 6 週間のけがを負ったほか,4 名
が軽傷を負い救急車で病院に搬送された.警察
などの調べでは,三角フラスコ内で亜鉛と塩酸
を混合し,水素を発生させる実験を行ってい
た.生徒が水素を捕集していたガラス管にマッ
チの火を近づけた可能性がある.
〈高専でポリ塩化ビフェニルを含む廃液が漏えい〉
1 . 2006 年 1 月 27 日
2 . 北海道苫小牧市
3 . 高等専門学校
4 . ポリ塩化ビフェニル
5 . なし
6 . 工業高等専門学校でドラム缶内に貯めていた
ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含む廃液約 100 l
が漏えいした.縦 5 . 2 m,横 6 . 4 m,深さ 1 . 5 m
の範囲の土壌で 0 . 004~0 . 05 mg/kg の PCB が
検出され,汚染が確認された.同校などの調べ
では,PCB を含む廃液を貯蔵していたドラム缶
の底部が腐食し,直径 1~2 cm の穴が 2 か所開
き,貯蔵建屋の床を通じて土壌へ流出した.同
校では,PCB が確認された範囲の土壌を除去
し,今後は,ドラム缶下に受け皿を置き貯蔵
する.
〈原子力発電所のポンプから放射性物質を含む水が漏
えい〉
1 . 2006 年 1 月 27 日
2 . 福島県双葉郡双葉町
3 . 発電所
4 . トリチウム,放射性物質
5 . なし
6 . 原子力発電所の定期検査中のタービン建屋地
下埋設部分でトリチウムなどの放射性物質を含
む水 1 400 l が漏えいした.外部への放射能の
影響はなかった.同社の調べでは,復水系ポン
プ用の穴 3 か所の底から水が漏えいしており,
通常この穴は,ポンプの容器に覆われているた
め点検対象になっていなかった.
〈中国の爆竹工場が爆発〉
1 . 2006 年 1 月 29 日 16:00 頃
2 . 中国・河南省林州市
3 . 煙火製造業
4 . 爆竹,玩具煙火
5 . 死者 36 名,重傷 8 名,傷者 40 名
6 . 中国・河南省林州市の爆竹工場で倉庫内の爆
竹が爆発した.同倉庫および近くの寺院が倒壊
した.寺院への参拝客など少なくとも 36 名が
死亡,8 名が重傷を負い,40 名が負傷した.旧
正月を祝うため爆竹を使用していた子供がふざ
けて爆竹工場の通風孔から倉庫内に爆竹を投げ
入れた可能性がある.同工場では,違法で爆竹
を製造,保管していた.
〈樹脂製造工場でポンプから漏えいしたジフェニル
エーテルが引火〉
1 . 2006 年 2 月 2 日 14:55 頃
2 . 愛知県名古屋市港区
3 . 有機化学工業製品製造業
4 . ジフェニルエーテル
5 . 重傷 2 名
6 . 樹脂製造工場の屋外に設置された高さ 30 cm,
直径 70 cm の熱媒循環ポンプから循環させてい
たジフェニルエーテルが漏えい,引火した.ポ
ンプおよびその周辺が損傷し,約 5 時間後に鎮
火した.ポンプ非常停止による警報発報の点検
作業に当たっていた 2 名がやけどで重傷を負っ
た.警察の調べでは,何らかの原因でポンプが
非常停止したため,作業員がノンフューズブ
レーカーを復帰して数回再起動させた際に,ポ
ンプ内部でアーク放電が発生してポンプ内側の
接液部および外側のケーシングが溶断,直径
2 cm 程度の穴が開き,高温のジフェニルエー
テルが噴出した可能性がある.
〈フェリー航行中に積載していた自動車から出火〉
1 . 2006 年 2 月 2 日 21:30 頃
2 . 紅海
3 . 外航海運業
4 . 不明
5 . 死者 195 名,行方不明者 774 名
6 . エジプトからサウジアラビアへ向けて紅海を
運航していた 11 800 トン,定員 1 400 名のフェ
リーで火災が起きた.消火作業中に浸水し沈没
した.乗員乗客 1 370 名のうち,401 名が救助
されたが 195 名が死亡した.当局の調べでは,
出航後 2 時間以内に積載していた自動車 220 台
の中のトラックの積み荷から出火した.一時港
へ引き返そうとしたが鎮火の報告を受け,航行
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を継続したところ火災が再び起きた.同船は定
員の増加を目的に改修され,転覆しやすい構造
になっていた可能性がある.また,同船には充
分な救命ボートが用意されておらず,救助船の
到着が遅れるなどし,被害が拡大した.
〈製油所の水素化分解装置で火災〉
1 . 2006 年 2 月 5 日 13:10 頃
2 . 北海道室蘭市
3 . 石油精製業
4 . 重油,灯油,軽油,水,硫化水素
5 . なし
6 . 製油所にある水素化分解装置のポンプ付近か
ら出火した.同装置,残油脱硫装置の機器およ
び配管類が焼損し,約 3 時間後に鎮火した.け
が人はなかった.事故調査委員会の調べでは,
ポンプ本体のドレン配管の材質が通常よりも硬
度が高かったため,内部流体である重油に微量
含まれる水,硫化水素および熱等による応力が
複雑に作用し,硫化物応力割れが発生した.亀
裂から漏えいした重油は,配管周辺の保温材に
染み込み,ポンプの熱により酸化反応が進行,
反応熱が蓄積し発火に至った可能性がある.再
発防止策として,類似機器の材質の硬度を点検
し,ポンプ製作検査基準に硬度測定を実施する
ことが公表された.
〈原子力関連研究施設のプラズマ溶融炉で火災〉
1 . 2006 年 2 月 13 日 15:30 頃
2 . 茨城県那珂郡東海村
3 . 学術研究機関
4 . 炭化アクリル繊維
5 . なし
6 . 原子力関連研究施設のプラズマ溶融炉で放射
性廃棄物を模擬したコンクリート片約 1 トンを
溶融する実験中に火災が起きた.溶融炉に取り
付けられていた蛇腹の一部が焼損し,約 2 時間
半後に鎮火した.けが人はなかった.同施設の
調べでは,実験開始前の点検で,直径 2 m,長
さ 1 m の溶融物排出口と受け容器を接続する蛇
腹内部のスリーブが破損していることが確認さ
れ,破損箇所を覆うように広範囲に耐熱性の低
い炭化アクリル繊維布により補修した.このた
め,排出の際に,高温の溶融物が布に付着し引
火した.また,今回の実験では,以前より溶融
物の流動性を高めており,溶融物の飛散量も増
加していた.
〈核燃料再処理工場で排煙設備のバッテリーから出火〉
1 . 2006 年 2 月 14 日 12:18 頃
2 . 青森県上北郡六ヶ所村
3 . 核燃料製造業
4 . バッテリー,ほこり
5 . なし
6 . 使用済み核燃料再処理工場の使用済燃料受入
れ・貯蔵管理建屋 2 階の常用空調機室にある排
煙設備のディーゼルエンジン始動用モータの
バッテリーが発火した.バッテリー上面 40 cm
×25 cm のうち約 2/3 が焼損した.けが人はな
かった.バッテリー製造会社の調べでは,バッ
テリー端子とバッテリー本体を固定する押え金
具との隙間は 1 mm 程度しかなく,また,隙間
へ電解液のにじみ上がりが起き,ほこりなども
蓄積していることから,絶縁が低下し漏電した
可能性がある.押え金具は,長辺と短辺をもつ
L 字型をしており,通常は端子と接触しないよ
う短辺側をバッテリー上面に取り付けるが,同
バッテリーでは長辺側が上面に取り付けられて
いた.約 10 年前に排気設備のファンモータ交
換工事に伴い,バッテリーが取り外され,その
後,元に戻す際に,押え金具を誤って取り付け
た可能性がある.
〈メキシコの炭鉱でガス爆発〉
1 . 2006 年 2 月 19 日
2 . メキシコ・サンフアンデサビナス
3 . 石炭・亜炭鉱業
4 . メタン,石炭,一酸化炭素
5 . 死者 65 名,傷者 12 名
6 . メキシコ・コアウィラ州サンフアンデサビナ
スの炭鉱でガス爆発により土砂崩れが起きた.
作業員 65 名が坑内に閉じ込められ死亡し,12
名がやけどなどを負い病院に搬送された.現地
の報道情報によると,炭坑入口から約 1 . 5~
2 . 0 km,深さ約 300 m の地点で滞留したガスに
引火した可能性がある.
〈玩具煙火製造工場の倉庫で爆発〉
1 . 2006 年 2 月 21 日 11:20 頃
2 . 福岡県八女市
3 . 煙火製造業
4 . 玩具煙火
5 . 死者 1 名
6 . 敷地面積 7 000 m2 の玩具煙火製造工場内にある
半製品 480 kg を保管する 15 m2 のコンクリート
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平屋建の倉庫で爆発が起きた.同倉庫の屋根が
吹き飛び,火の粉などにより約 20 m 離れた場
所に天日干ししていた玩具花火 15 000 発に延
焼した.同倉庫内で在庫確認をしていた工場責
任者 1 名が死亡した.
〈演劇の公演中に火災〉
1 . 2006 年 3 月 22 日 18:30 頃
2 . 東京都中央区
3 . 劇場
4 . 煙火
5 . 軽症 4 名,避難 1 600 名
6 . 花火などを使用した演劇の公演中に火災が起
きた.約 30 分後に鎮火したが,大道具および
小道具などの舞台装置が焼け,公演中止に伴い
チケットの払い戻しが行われた.煙により観客
および従業員 4 名が病院に搬送されるなど 38
名が不調を訴え,1 600 名が避難した.警察の
調べでは,演出に使用した低温花火の火花が防
災シートの間を通り,舞台の下にある道具置き
場の紙吹雪に引火した.
〈スクラップ置き場で重機使用中に火災〉
1 . 2006 年 4 月 2 日 12:46 頃
2 . 福岡県福岡市東区
3 . 鉄スクラップ卸売業
4 . プラスチック?
5 . なし
6 . 自動車,自転車,電化製品などの金属スクラッ
プおよび廃プラスチックなど約 2 500 トンを保
管する資材置き場で火災が起きた.約 18 時間
後に鎮火したが,保管していたスクラップ
2 000 トンが焼け,付近の道路は一時通行止め
となった.けが人はなかった.警察の調べでは,
作業員 5,6 名が重機を使って移動作業をして
いる際に自然発火した可能性がある.付近では
強風注意報が発令されており,消火活動が難航
した.
〈タンクローリー横転でガソリン漏えい〉
1 . 2006 年 4 月 6 日 6:00 頃
2 . 大阪府吹田市
3 . 道路貨物運送業
4 . ガソリン
5 . 軽傷 1 名
6 . 高速道路でタンクローリーが中央分離帯に衝
突横転して積載していたガソリン 16 kl のうち
約 8 kl が約 500 m2 にわたって漏えいした.火
災は起きなかったがタンクローリーが損傷し,
高速道路の上下線約 9 km が 5 時間通行止めと
なった.運転手が右手に軽傷を負った.警察の
調べでは,現場は見通しのよい直線道路で,脇
見運転などにより前を注視していなかったた
め,ブレーキをかけた前方の乗用車を避けるた
め右にハンドルをきり過ぎ,中央分離帯に衝突
した.
〈ガラス製品製造工場で溶融炉からガラスが流出〉
1 . 2006 年 4 月 6 日 10:05 頃
2 . 東京都板橋区
3 . ガラス・同製品製造業
4 . ガラス
5 . なし
6 . ガラス製品製造工場で運転中の溶融炉から液
状化した高温のガラス 7 . 5 トンが流出した.け
が人はなかった.
〈製油所の水素製造装置から水素が漏えいし火災〉
1 . 2006 年 4 月 16 日 5:40 頃
2 . 千葉県市原市
3 . 石油精製業
4 . 水素,水,二酸化炭素
5 . なし
6 . 製油所の水素製造装置内にある気液分離槽か
ら内部の水素が漏えいし,火災が起きた.同装
置および減圧軽油脱硫装置が破損し,約 3 時間
後に鎮火した.けが人はなかった.事故調査委
員会の調べでは,内部流体である水素,二酸化
炭素,水などにより気液分離槽胴板のエロー
ジョン・コロージョンが進行し,胴板が開口,
漏えいした可能性がある.また,1996 年に同
分離槽胴板の内部構造をバッフルタイプからイ
ンナーノズルタイプに変更したため流体の流れ
が変化したことや,2002 年以降に水の注入量
を増加させたことなどから局所的,加速的に減
肉が進行した可能性がある.再発防止策とし
て,管理が容易なバッフルタイプに内部構造を
戻し,設備管理を強化するとともに過去 10 年
間に構造を変更した機器およびエロージョン・
コロージョンが進行しやすい機器に関して水平
展開することが公表された.
〈中学校で火薬調製中に爆発〉
1 . 2006 年 4 月 17 日 16:00 頃
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化学災害ニュース No . 45 183
Vol . 47 No. 3(2008)
化学災害ニュース No . 45
2 . 東京都新宿区
3 . 中学校
4 . 塩素酸カリウム,硫黄,炭素粉末
5 . 傷者 2 名
6 . 4 階建ての中学,高校の校舎 1 階にある化学実
験室でビーカーを使って火薬を調製していたと
ころ爆発が起きた.実験をしていた生徒 2 名が
やけどを負い,病院へ搬送された.警察の調べ
では,化学部のクラブ活動の一環で花火の火薬
を作るため,塩素酸カリウム,硫黄,炭素粉末
をビーカーに入れてガラス棒でかき混ぜていた
ところ爆発した可能性がある.実験は生徒 5 名
で行っており,教員は立ち会っていなかった.
〈ステンレス製品製造工場の地下室からトリクロロエ
チレン検出〉
1 . 2006 年 4 月 26 日
2 . 千葉県習志野市
3 . 金属製品製造業
4 . トリクロロエチレン
5 . 不明
6 . 金属製品製造工場の敷地内の地下水から環境
基本法基準値の 110~6 700 倍のトリクロロエチ
レンが検出された.同社の調べでは,配管から
漏えいしたトリクロロエチレンが時間をかけて
地中に浸透し,地下水に混合した可能性があ
る.同社では,1994 年に表層土壌に汚染が検
出されたが,翌年の調査では地下水には影響が
なかった.その後,1997 年から 6 年間かけて
土壌の浄化処理を行っていた.
〈民家周辺の地下配管からガス漏えい〉
1 . 2006 年 5 月 3 日 4:40 頃
2 . 北海道帯広市
3 . ガス業
4 . メタン
5 . 重体 1 名,重症 1 名,軽症 2 名
6 . 民家から 3 m 離れた場所に埋設された金属製の
ガス管からガスが漏えいした.同民家にいた住
民など9名のうち,ガス中毒により1名が重体,
1 名が重症,2 名が軽症を負った.警察などの
調べでは,ガス管のつなぎ目に 2,3 cm の亀裂
が入り,地中を伝って民家へ充満した可能性が
ある.ガス会社によると,ガス管は 27 年前に
埋設され,40 か月に一回検査を実施しており,
4 月に行った検査では異常はなかった.
〈官庁地下室で放射性物質を無許可で貯蔵〉
1 . 2006 年 5 月 11 日
2 . 東京都千代田区
3 . 国家公務
4 . セシウム 137,トリウム化合物,ウラン化合物,
放射性物質
5 . なし
6 . 官庁の施錠された地下倉庫から,無届けの鉛容
器に入った放射性物質セシウム 137,瓶入りの
トリウム化合物およびウラン化合物各 2 本が見
つかった.周辺の環境や人体にただちに影響す
るレベルではないが,規制対象の約 10 倍の放
射線量が観察された.同官庁の調べでは,放射
線測定機器の調整など大気中の放射能を観測す
る目的で,トリウム化合物は 1962 年,ウラン
化合物は 1947 年より以前に持ち込まれた可能
性がある.その後の点検により同官庁では
0 . 9 g および 1 . 2 g のウラン化合物など,新た
に四つの放射性物質がみつかり,同官庁管轄の
別の場所 2 か所でウラン化合物などが見つかっ
た.
〈ナイジェリアの石油パイプラインで爆発〉
1 . 2006 年 5 月 12 日
2 . ナイジェリア・ラゴス
3 . 石油精製業
4 . 石油
5 . 死者 165 名以上
6 . ナイジェリア・ラゴス郊外の石油パイプライン
で石油を盗もうとしたところ爆発が起きた.少
なくとも 165 名が死亡した.警察などの調べで
は,周辺住民がパイプラインに穴を開け,石油
を盗もうと集まっていた際に爆発が起き,周辺
に置いていた盗んだ石油の入ったドラム缶 500
本に引火した可能性がある.同国の石油生産量
は日量 250 万バレルで,1 日に 3 万~10 万バレ
ルが盗まれているとの試算もあり,同様の事故
が多発している.
〈漂着した避難救命用信号弾が暴発〉
1 . 2006 年 5 月 14 日 17:30 頃
2 . 石川県川北郡内灘町
3 . なし
4 . 救命用信号弾
5 . 重傷 1 名
6 . 海岸でオレンジ色のプラスチックケースに入っ
た直径 4 cm,長さ 25 cm の遭難救命用の信号
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Vol . 47 No. 3(2008)
化学災害ニュース No . 45
弾 2 発が見つかり 1 発はその場で暴発し,もう
1 発はその後保管していた役所で暴発した.海
岸で 1 名がほお骨を折る重傷を負い,役所では
職員 1 名が右手に軽いやけどを負った.警察の
調べでは,同信号弾のハングルによる表記から
船から落ちて流れ着いた可能性がある.付近の
住民 2 名が海水浴場を散歩していたところ,信
号弾を見つけ,発射させようと信号弾底部の金
具を引いたところ暴発した.その後,漂流物と
して保管するため,役所で同信号弾 2 発を段
ボール箱に入れようとしたところもう 1 発が暴
発した.同信号弾は,底部の金具を引くと,内
部の火薬に着火し,落下傘付きの弾が発射され
る構造になっている.
〈ホルムアルデヒドを積載したタンクローリーが横転〉
1 . 2006 年 5 月 15 日 6:10 頃
2 . 東京都中央区
3 . 道路貨物運送業
4 . ホルムアルデヒド
5 . なし
6 . 高速道路でホルムアルデヒド 18 000 l を積載し
た 24 トンのトレーラー型タンクローリーが道
路左側の側壁に衝突し横転した.ホルムアルデ
ヒドの漏えいはなかったが,横転したタンク
ローリーの移動作業のため 55 分間上下線とも
通行止めとなった.けが人はなかった.警察の
調べでは,ハンドル操作を誤り,緩い右カーブ
を曲がり切れず側壁に衝突した可能性がある.
〈原子力発電所の仮設備でキャビティ水が漏えい〉
1 . 2006 年 5 月 16 日 15:10 頃
2 . 福井県三方郡美浜町
3 . 発電所
4 . 放射性物質
5 . なし
6 . 原子力発電所の発電機の定期検査中に仮設キャ
ビティ浄化装置のホースから放射線を遮蔽する
キャビティ水 400 l が漏えいした.同水はドレ
ン管を通じて格納容器サンプ(水溜め)まで達
した.原子炉の燃料は取り出した状態で周辺環
境への放射能の影響はなかった.作業員 1 名の
足首付近がキャビティ水で濡れたが,汚染はな
かった.同社の調べでは,作業員数名がキャビ
ティ内に保管している制御棒駆動軸を清掃する
ため浄化装置のホースの接続作業をしていた.
浄化装置が運転中の状態まま作業員がホースを
取り外したためキャビティ水が漏れだした.従
来,同作業は浄化装置が停止した状態で実施さ
れるが,責任者の指示はなく,マニュアルにも
記載されていなかった.再発防止策として,同
浄化装置のホースを取り外す際には装置を停止
することなどをマニュアルに記載し,同浄化装
置およびその他の仮設備の運転状態が識別でき
るよう表示するとともに作業前の打ち合わせで
運転状態を関係者に周知させることが公表され
た.
〈製油所の軽質残渣油タンクが爆発〉
1 . 2006 年 5 月 21 日 15:00 頃
2 . 神奈川県川崎市川崎区
3 . 石油精製業
4 . アスファルト,軽油,可燃性ガス
5 . なし
6 . 製油所の軽質残渣油であるアスファルトタン
クで爆発が起きた.同タンクおよび周辺の建屋
のガラス等が損傷し,約 3 時間 45 分後に鎮火
した.事故調査委員会の調べでは,運転を開始
するためアスファルトの排出先タンクを切り替
える作業中で,作業員は責任者に排出先のタン
クのバルブを開けたことを報告したが,責任者
は排出を停止するタンクのバルブが閉止された
ものと勘違いした.このため,高温の軽油がア
スファルトタンクへ混入し,軽油が混入したア
スファルトは酸化および熱分解を開始し,可燃
性ガスがタンク内に滞留した.同時にタンク内
壁のフェームと呼ばれるアスファルトから発生
する蒸気が固化した付着物が自然発火し,タン
ク内の可燃性ガスに引火した可能性がある.再
発防止策として,複数の作業員によるバルブ開
閉のチェック,逆流防止弁の設置などが公表さ
れた.
(独)産業技術総合研究所
加藤勝美,尾和ハイズィック香吏,
阿部祥子,和田有司
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