Intelが次期ハイエンドCPU「Skylake-X」を急遽、10コア/20スレッドから12コア/24スレッドに変更する可能性が報じられました。この動きは2017年3月3日に発売されるAMDの新CPU「Ryzen」を迎え撃つためであることは明らかで、ついにCPU市場の覇権を賭けたIntel対AMDの本格バトルが始まる模様です。
[RUMOR] Intel could commercialize a 12C/24T Skylake-X - Bits and Chips
http://www.bitsandchips.it/52-english-news/8079-rumor-intel-could-commercialize-a-12c-24t-skylake-x
Intel Begins Price War With AMD Ryzen - Massive Price Cuts on Intel Chips By Retailers
http://wccftech.com/intel-amd-price-war-ryzen-processors/
Intelの「Skylake-X」はLGA 2066プラットフォームを採用する、現行のハイエンドモデル「Broadwell-E」を置き換える次期ハイエンドCPUです。当初から、最上位モデルはBroadwell-Eと同様に10コア/20スレッドでの登場が予定されていましたが、12コア/24スレッドに変更される可能性が浮上しています。Bits and Chipsのジャンマリア・フォルニ氏は、「8コア/16スレッドのRyzen 7が8コアのBroadwell-Eを上回る性能を見せているという事前情報であふれる現状に、Intelはハイエンドモデルを12コア/24スレッドに変更するだろう」と指摘しています。
あくまで噂レベルに過ぎないハイエンドモデルの仕様変更ですが、Ryzen 7がコストパフォーマンスという点でIntelを圧倒しているという事前情報があふれる中で、少なくともIntelが現行モデルのBroadwell-Eの価格改定に踏み切ることは避けられないという予想が主流となっています。
Intelが沈黙を続ける中、小売店では早くも現行のIntel CPUを大幅に値下げする動きが始まっています。Micro Centerは、ハイエンドモデルのIntel Core i7-6950Xを1899.99ドル(約21万3000円)から1599.99ドル(約17万9000円)へと300ドル(約3万4000円)の大幅な値下げを断行。
Intel Core i7-6950X Broadwell-E 3.0 GHz LGA 2011-3 Boxed Processor BX80671I76950X - Micro Center
http://www.microcenter.com/product/463389/Core_i7-6950X_Broadwell-E_30_GHz_LGA_2011-3_Boxed_Processor
Micro CenterではBroadwell-Eだけではなくメインストリームの「Skylake」シリーズや2017年1月に登場したばかりの「Kaby Lake」シリーズも軒並み値下げとなっており、Intelが正式に価格改定を行う前に少しでも在庫を減らしておきたいという小売店のもくろみが透けて見えます。
Ryzenのハイエンドモデル「Ryzen 7 1800X」は499ドル(約5万6000円)にもかかわらず1050ドル(約11万8000円)のIntel Core i7-6900Kを上回る性能を持つ以上、Intelは大幅な価格改定を強いられることになりそうです。
さらに、より安価な6コアモデルのRyzen 5、4コアモデルのRyzen 3もIntelのCore i5、Core i3シリーズにぶつける形で2017年第2四半期以降に続々と登場する予定。6コアモデルのRyzen 5 1600XはCore i5-7600Kを69%も上回る性能であることがリークされており、下位モデルでもRyzen CPUがIntel CPUを軒並み駆逐する可能性もあることから、Intelは対応を余儀なくされることになりそうです。
数年にわたってGPUに比べてめぼしい進化がなかったCPUですが、AMDの復活によりIntelがのうのうとあぐらをかいていられる状況ではなくなった模様。さらにAMDは次世代GPUアーキテクチャ「VEGA」の発表をNVIDIAの「GeForce GTX 1080Ti」の発表と同日の2017年2月28日に予定しており、GPUでもNVIDIAを追撃する構え。AMDの復活はCPU&GPU市場に性能・価格面での競争を生み出すことは必至で、2017年はPC市場に活気が戻ってきそうです。
なお、Intelはかなり追い詰められつつあり、原因の一端として「人工知能の隆盛はさまざまなチップの市場を作り出しており、Intelはトラブっている」という記事中でとても詳細に現状が分析されており、特にコア数がものを言うAI研究や機械学習において、記事執筆時点でNVIDIAが最大3584コアまで開発しているのに対し、Intelはわずか最大28コア、さらに特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路「ASIC」やあとから購入者や設計者が構成を再設定・CPU自体を再プログラミングして特定用途に特化させることができる集積回路「FPGA」でもIntelは立ち遅れており、以下のグラフを見てもわかるように、GPUがCPUを圧倒するとともに、NVIDIAがIntelを引き離すという恐るべき事態となっています。