2018年11月19日月曜日

まるでチャングムの誓いのハイテク化!グローブ型触感センサーを開発し、漢方医師の触診データ化を実現(富士通&富士通研究所&北里研究所)

勉強の為に転載しました。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2015/12/10.html

2015年12月10日
富士通株式会社
株式会社富士通研究所
学校法人北里研究所

グローブ型触感センサーを開発し、漢方医師の触診データ化を実現

業界で初めて漢方専門医の技を定量化し、未病発見に貢献
富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:田中達也、以下、富士通)と株式会社富士通研究所(本社:神奈川県川崎市、代表取締役社長:佐相秀幸、以下、富士通研究所)、学校法人北里研究所 北里大学東洋医学総合研究所(法人本部:東京都港区、理事長:藤井清孝、以下、東洋医学総合研究所)はこのほど、共同で触診時の漢方医師の触感をデータ化するグローブ型触感センサーを開発しました。
一般に、漢方で病変や体調を知るための触診は医師固有の知識や経験に基づくため、診断内容をほかの医師が客観的に把握するためのデータの作成が困難でした。
今回、診察時の手触り感を損ねない程度に柔軟な薄膜圧力センサーを開発しました。センサーを指の腹に装着し、触診時に医師が触った感覚を数値化した圧力データと医師の手の軌跡を連動させることで触感を定量化し、データとして記録することが可能になります。これにより漢方専門医の触診を大量に蓄積・客観化して医師の触診支援に繋げるとともに、未病の発見に貢献できます。
開発成果の一部は、科学技術振興機構(JST)が推進する文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)、プログラム:安全高品質な漢方ICTを用いた未病制御システムの研究開発」によるものです。
本成果は、12月8日(火曜日)からニュージーランド・オークランドで開催の国際会議「IEEE.International Conference on Sensing Technology 2015(ICST 2015)」にて発表します。

開発の背景

日常生活に制限のない健康寿命を延長するため、漢方医学では、疾病に至る前の段階で「疾病に向かっている状態」を発見し、それに対応することが重要と考えられています。漢方医は、西洋医学で診ると疾病には至らないものの完全な健康状態ともいえない未病状態を検知することができますが、漢方医学の診断基準は問診・脈診・舌診・腹診などによる漢方医の主観に依存することが多く、これまで明確化されていませんでした。

課題

漢方医療において、腹部に直接触れて診断する触診は病変や体調を知る重要な判断材料とされますが、その最終判断は医師の経験や知識に依存するため、例えば、診断基準を漢方医の継承や育成などに活用するには診断の形式知化や客観化が必要です。
また、医師の触診の感触をICTによってデータ化し、客観的にとらえて活用するためには、医師側にも患者側にも、違和感のない程度に柔軟で高感度なセンサーの実現が重要です。
図1 漢方医療の触診の様子
図1 漢方医療の触診の様子

開発した技術

今回、富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所は共同で、触診の現場において、手触り感を損ねることなく、触感のデータ化が可能なグローブ型触覚センサーと触診位置を検出して硬さのデータ取得が可能なシステムを試作開発しました(図2)。
図2 グローブ型触感センサー(左)、触感データ取得システム(右)
図2 グローブ型触感センサー(左)、触感データ取得システム(右)
開発した技術の特長は以下のとおりです。
  1. 高感度で低消費電力なフレキシブルセンサーの開発
    電界が無くとも正負の電荷が分かれる性質をもつ誘電体薄膜(エレクトレット)を圧力検知素子として用い、加圧時に内部の電荷の状態が変化する特性を利用して、高感度な圧力センサーを実現しました(図3)。
    圧力検知の素子周囲を高絶縁膜で覆う構造にして、加圧時の電荷の漏れを最小限に抑え、圧力を最初に加えた時点から電圧応答が継続するように設計しました。また、誘電率の低い絶縁材料を使用することで、圧力を検知する素子の電気容量を小さく抑え、加えた圧力に比例する電圧の出力を増大させることで、高感度を実現しています。
    触診時の医師の手触り感を損ねることなくセンシングするために、ポリマーフィルム(注1)を使って薄さ100から300マイクロメートルの薄膜化を実現し、柔軟性を高めています。
    こうした技術により、患者に触れる圧力検知素子自体の駆動電源が不要で、高感度と安全性の高さを両立しています。
    図3 フレキシブル圧力センサーの概要
    図3 フレキシブル圧力センサーの概要
  2. 触感センシングと同期して手の軌跡を高精度に検出するシステム
    グローブ先端の指先部に反射マーカーを取り付け、マーカーの動きを検知する近赤外線カメラにより、医師の手の動きを約0.2ミリメートルの精度で検知するシステムを構築しました。10ミリ秒ごとに触診の位置を取得可能で、圧力センサーから取得したデータと組み合わせることで、触診の正確な位置と圧力を同期して記録することが可能です。

効果

今回試作した触感データ取得システムを用いて、東洋医学総合研究所において触診を模したデータ取得実験を行いました(図4)。加えた圧力に対する応答は線形の特性を示し、平均すると1キロパスカル(kPa)あたり120ミリボルト(mV)の出力が得られました。これは、1ミリメートル角のセンシング面積に約0.1グラムの力を印加すると120mVの出力が得られることを意味します。試作した回路は連続的に約10mV程度のノイズが発生しますが、加圧時にノイズの10倍以上の出力が得られることから、微小な触診圧力変化にも十分な反応を示していることが分かります。これにより、圧力センサーとして実際の触診に限りなく近い数値データを取得できることが確認されました。
図4 フレキシブル圧力センサーの応答特性
図4 フレキシブル圧力センサーの応答特性

今後

富士通、富士通研究所、東洋医学総合研究所は、センサー感度のさらなる向上や手のひらなど圧力センサーの適用範囲拡大を検討し、開発技術により漢方専門医の触診をデータ化し大量に蓄積・客観化して、医師の触診の支援に繋げていきます。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以上

注釈

注1 ポリマーフィルム:
電極の保護と絶縁に用いられる薄膜。

本件に関するお問い合わせ

株式会社富士通研究所
ものづくり技術研究所
電話 046-250-8224(直通)
メール kampo-glove@ml.labs.fujitsu.com
学校法人北里研究所
北里大学東洋医学総合研究所
EBMセンター
電話  03-5791- 6346(直通)
メール omrc-ebm@insti.kitasato-u.ac.jp

  • 効果に関する表記を訂正しました。(2015年12月15日訂正)
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