味の素(株)九州事業所 九州事業所長 谷 昌浩

事業の背景

昭和18年鈴木食料工業(株)から出発した味の素(株)九州事業所は、発酵法による「味の素Ⓡ」の生産を契機に数々の発酵品目の多角化を行い、九州工場は世界最大級のアミノ酸発酵工場へと発展してきました。
同社の主力製品であるアミノ酸製品を製造する過程で大量の副産物が発生します。
この副産物は、液体肥料、粘結剤、菌体、固肥として有効活用されてきました。ただ、液肥に関しては輸送コストの問題、固肥に関しては水分を飛ばす際に使用する重油の高騰により採算があわないなど多くの課題を抱えており、同事業所としても2010年に新事業グループを立ち上げ、これらの課題を解決し、副産物をより有効に活用する取組を始めました。
    
菌体                  アミノ酸副生液

挑戦とK-RIPの有効活用

●エコ塾の参加&登壇
「『発酵副産物の有効活用』については、まだ認知度が低いため、まずは多くの方に知ってもらうことが大事だ」と考えました。
北九州市で開催される環境見本市「エコテクノ」で、K-RIPのマネージャーと出会い、そこで初めて「エコ塾」の存在を知りました。異業種の方が多く参加する「エコ塾」を通じて、同社の副産物を使い共同研究等をしてくれるパートナーを探したいと思い、登壇を希望されました。
まずは、平成24年1月に開催された「エコ塾」に聴講者として参加しました。その回で登壇した企業と交流会で知り合い、その後何度も連絡を取り合い、農家を紹介してもらったりするなどして、平成25年1月に同社のコンサルタントに就任することになりました。
同社は平成24年2月にK-RIPへ入会し、その翌月に「エコ塾」に登壇しました。
登壇の当日は、想像もしなかったような業種の方から同社製品について関心を持ってもらい、異業種の方と人脈形成ができました。その繋がりの中で、同社の液肥に関して販売代理店契約を締結することができました。その他には、現在も共同研究が続いている案件もあります。また、「エコ塾」に登壇したことで、HPの検索機能で上位にヒットするようになり、当日参加していない企業でもそれを見て問い合わせが来るようになりました。
この「エコ塾」での登壇をきっかけとして、同社の新事業(アグリ事業)は、さらに加速していくことになります。

将来のヴィジョン

●「九州力作野菜・果物」プロジェクト
このプロジェクトは、九州地域の有効副産物を積極的に活用し、九州の農業を元気にするバリューチェーンを関係者全員で「力作」するプロジェクトです。
具体的には、本目的に共鳴する企業や農業生産者が協同して、九州地域の有用副産物を混合した栄養価の高い堆肥を製造し、この堆肥を使用して育てた野菜や果物を「九州力作野菜」「九州力作果物」ブランドとして、九州域内のイオングループにて販売します。まずは、当社のアミノ酸発酵工程で発生する有用副産物である「アミノ酸発酵菌体」を活用し、始動します。
 今後は、長期的に「九州力作野菜・果物」プロジェクト協同体の参加者を増やし、「九州力作野菜」「九州力作果物」ブランドの農産物をより多く供給・販売していきたいと考えています。
本事業は九州ニュービジネス協議会主催の「九州ニュービジネス大賞」で「奨励賞」を受賞しました。
また、環境省後援の「低炭素杯2014」にて「最優秀ストーリー賞」を受賞しました(1600件エントリー)。

Topics

●佐賀市発 食と下水道の連携(下水汚泥肥料のイノベーション)
~下水道の資源循環を確立し消費者の食に貢献する“P菌体混合肥料”~
佐賀市の下水道は資源循環を推進しています。その中で処理水の農地還元、季別運転による海苔養殖漁場への栄養塩水の供給、消化ガスメタン発酵発電、消化反応後の脱水汚泥の堆肥化など、全国に類を見ない炭素循環システムを構築しています。とくに堆肥については、長年にわたり研究を重ね、佐賀市はもとより全国の農業生産者から高い評価を得ています。
一方、地場企業である同社は、工場で発生する発酵副産物の資源循環利用を模索。JAや自治体と連携し、発酵副産物の農業利用への有効性及び安全性を確認してきました。
今回この二つのプロジェクトが手を結び、農家にさらに良質の堆肥を提供し、消費者の「食」に貢献するため、佐賀市下水処理場堆肥センターの堆肥に当社の発酵副産物(P菌体)を混合した、「P菌体混合肥料」を製造しました。

企業名
味の素(株)九州事業所
代表者
九州事業所長 谷 昌浩
創業
1943年(九州工場建設)
資本金
79,863千円(本社)
住所
佐賀県佐賀市諸富町大字諸冨津450番
主な事業
調味料原料、医療品・化粧品の原料、甘味料の原料、各種肥料の製造