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■ソニーとホンダがモビリティの革命に向けてタッグを組んだ
2022年3月4日は、日本の自動車史において重要な日付になるかもしれません。
言うまでもなく、ソニーとホンダが「モビリティ分野における戦略的提携に向けて基本合意」を発表。両社の社長が記者会見を開き、「高付加価値のエレクトリック・ビークル(EV)を共同開発・販売し、モビリティ向けサービスの提供と併せて事業化」していくことも宣言したのです。
本田宗一郎氏が興したホンダ、井深大氏らが創業したソニー。いずれも戦後日本を引っ張った、当時の新興ブランドであり、現在では自動車業界、家電業界においてそれぞれ高いブランド力を持つ企業となっています。
そんな両社が高付加価値な電気自動車という領域において提携するというのです。まるでマンガの世界のようなドリームタッグの誕生です。
もちろん、ソニーが自動車業界に参入しようというのは、CESにて試作車を公開したことや、ソニーモビリティという新会社を設立したときからわかっていたことです。ただ、自動車産業というのは生産工場、販売ネットワーク、アフターサービスなどのハードルが高く、既存の自動車メーカーと協業することで参入するであろうともいわれていました。
そのパートナーとしてホンダを選んだというカタチになったわけです。
●ブランドイメージが似ている両社だけに相乗効果も期待できる
ソニーとホンダは、元祖クールジャパンというべき似たブランドイメージを有しています。また、創業時に二人三脚的な体制(本田宗一郎と藤沢武夫、井深大と盛田昭夫)だった点も似ています。ホンダのスーパーカブ、ソニーのウォークマンといった社会を変えるプロダクトを生み出したという点でもシンクロします。
そうした部分は、記者会見でもアピールされていましたが、いずれにしてもソニーとホンダというタッグであれば、市場は自然に受け入れることでしょう。
両社が共同開発という電気自動車がどのような名前になるのかは、現時点では公表されていませんが、ソニーの単独ブランドになるにせよ、ソニーとホンダで新ブランドを立ち上げるにせよ、スタート前から十分なブランド価値が期待できるというものです。
じつは、こうした事例は自動車業界には先例があります。それがダイムラーとスウォッチが組んだ「スマート」で、結果的にはダイムラー傘下のブランドとなりましたが、登場時から十分以上のブランド力を持っていました。
ホンダとソニーの組み合わせであれば、スマートを超えるスタートが切れることは確実です。
●JV設立からの生産委託という手法は他社とのコラボでも使えるか
さて、具体的な提携については、両社が出資した合弁会社(JV)を2022年内に設立、同社が車両の企画、設計、開発、販売などを行う想定となっています。このJVはファブレス企業となる見込みで、製造は、初期モデルについてはホンダの製造工場が担うことを想定していると発表されています。
量産開始は2025年。家電のスタートアップ企業の感覚でいうとローンチまで3年というのはもたもたしているという印象も受けるででしょうが、新型自動車の開発期間と考えると、異例の短さといえます。
おそらくプラットフォームやパワートレイン(バッテリーやモーターなど)といった部分は、ホンダがすでに開発を進めている次世代電気自動車向けの技術を応用すると考えられます。その上で、ソニーが得意とするサービスプラットフォームやエンターテインメント性を付加価値として載せていくというカタチになるでしょう。
そう考えると、2022年3月でS660の生産を終了するホンダオートボディー(三重県にあるホンダの車両製造工場・旧 八千代工業 四日市製作所)での少量生産からスタートするという未来が想像できるのは筆者だけでしょうか。
また日本で生産するとも限りません。ソニーとホンダというブランドの強みを活かすには北米市場もメインターゲットとなるでしょうが、そちらでもNSXを生産してきた専用工場PMC(オハイオ州)が手すきになるという見方もできるかもしれません。
いずれにしても、初期は少量生産から始まるでしょうが、その点についてはホンダは十分に対応できるといえるでしょう。
なお、今回の提携によってホンダはソニーだけをパートナーにして電気自動車の開発を進めていくと考えるのは間違いです。記者会見でも発言がありましたが、ホンダは北米ではGMとパートナーシップを組んで、電気自動車の開発を進めています。またホンダ独自の電気自動車についても開発を止めるわけではありません。
ところで、設計図レベルまで商品を作り込み、それをホンダの工場で量産するというのは、かつての本田技術研究所と本田技研工業の関係に近く、ホンダにとっては手慣れた手法ともいえます。
もし、ホンダとソニーが手を組んだようにJVを設立するというスキームを他社との連携でも使っていいということになれば、ホンダは多くのパートナーとJVを設立して、電気自動車の委託生産をするというビジネスモデルを発展させるかもしれません。そのパートナー候補のリストにAppleという名前があっても不思議ではないはずです。
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