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2015.10.08
少子高齢化が深刻化して久しい我が国ですが、同じ悩みを抱えていたロシアがその問題を解決しつつあります。いったいどのような方法を取ったのでしょうか。国際関係アナリストの北野幸伯さんが無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で詳しく記しています。
少子化問題が解決されつつあるロシア
私がメルマガをはじめた1999年、ロシアの人口は「年間70万人」という超スピードで減少していました。「このままだとロシアは消滅する」と、マジメに心配している学者さんもたくさんいたのです。
1999年、ロシアの合計特殊出生率は、なんと1.17(!)だった。それがですよ、2012年は1.7、2013年も1.7。死亡率の低下も手伝って、人口が「自然増」しはじめている。
ロシアの出生率 記録更新2015年6月19日 Sputnik日本ロシア保健省は、ロシアの2014年の出生率が、過去最高となったと発表した。2013年の出生率は、1990年代以降初めて死亡率を越えたが、2014年はさらによい結果が出た。自然増加数は3万3,600人で、死亡率も低下している。ロシアでは2014年、出生率が前年比0.8パーセント増となり、出生数は192万9700人から194万7300人となった。これは、新生ロシア史上、最高値だ。
「少子化問題」に苦しむ日本としては、「どうやって出生率増やしたの????」ときいてみたいですね。
「母親資本」とは?
ロシアで少子化問題が解決されつつある。人口が「自然増」に転じている。
なぜ?
その秘密の1つが、「母親資本」(マテリンスキー・カピタル)という制度です。「母親資本」とはなんでしょうか?
要は、「子供を2人産んだ家族は、大金がもらえる」という制度。導入されたのは07年ですが、当時「平均年収の2倍分もらえる」という話だった。日本の感覚でいうと、「子供2人産んだら800万円もらえる」という感じでしょうね。
しかし、もらうお金の「用途」が決まっている。主に、
・住宅関係(住宅の購入、修繕など)
・教育関係(子供の教育費)
2015年度の「母親資本額」を見ると、45万ルーブルでした。これって、日本円で「90万円」程度です。
「90万円もらえるのなら、子供2人産むわ!」
日本人の感覚では、ちょっと想像できないですね。それで私は長年、「母親資本」なんて効いてないと思っていた。しかし、実際出生率は上がっているわけで、「なんなんだろう?」と疑問に思っていたのです。
ところが最近、「モスクワから300キロ離れたところに家を買った」という人に会い、考えが変わりました。「300キロ」というとめちゃくちゃ遠く感じますが、ロシアは国土が広大。日本人の「300キロ」とは感覚が違います。
「で、いくらしたの?」と私は聞きました。「40万ルーブル」(80万円!!!)
この会話で私は「悟った」のです。
「そうか、母親資本90万円は、田舎の人にとって大金なんだ。それで『家が買えるほど』の」
要するに「2人子供を産むと、家を買える」から、出生率が増えている。もちろん「母親資本」が唯一の理由とはいいません。しかし、これが「大きな動機」になっていることは間違いないのです。
「少子化問題は●で解決できる」
●の答えは、「家」です。
「母親資本」を日本風にアレンジすれば?
とはいえ、「90万円」日本でもらっても、それで「子供2人産みましょう」とはならないでしょう。
日本で「家が買える金額」といえばいくらでしょう? 東京など大都市ではもちろん無理ですが、たとえば長野県松本市の近郊なら、2,000万円ぐらいあれば、まともな家が建ちます。
ですから、「3人子供を産んだ家庭には、住宅購入資金2000万円まで支援します」としたら、「じゃあ、そうします」という家庭も増えるのでは?
「財源どうするんだ、ボケ!」
そんな声が聞こえてきます。
別に2,000万円、一括でその家族に上げなくてもいい。「住宅購入資金のローン(たとえば20年、30年)を、2,000万円まで国が肩代わりします」
とすれば?
そうすれば、国は、20年とか30年とかかけて、3人子供を産んだ家庭に代わって、ローンの返済をしていく。すると、「3人子供を産んだ一家庭」につき、国の月々の負担は、10万円ぐらいなものでしょう(計算していませんが)。子供1人当たりの支援額は、月3万3,333円となります。
これですと、かかわる人みんなにメリットがあります。
・3人産んだ家族=夢のマイホームが手に入ってうれしい。
・銀行=国が払ってくれるなら、とりっぱぐれない。
・国=出生率が劇的に増え、未来は安泰
この話、「社会主義的だ!」と生理的に受けつけない人もいると思います。しかし、「新自由主義」的に好きにやらせてたら、少子化はとまりません。
もちろん、「子供産みやがれ!」なんて強制はできません。でも、「子供3人産むと、こんなお得なことがありますよ」というのは強制ではないでしょう?
そこで、1つの提案をさせていただきました。ぜひ総理にも教えてあげてください。
「領土問題」も大切ですが、プーチンにあったとき、「ロシアは、プーチンさんの叡智で、少子化問題を解決されたそうですね! その方法を教えてくれませんか?」
といえば、喜んで教えてくれることでしょう
image by: Shutterstock.com
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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