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2021年06月01日 05:00
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近畿大学内科学教室内科部門主任教授の工藤正敏氏らの国際共同研究グループは、肝機能不良の進行肝細胞がん(HCC)患者に対するニボルマブの有効性と安全性を検討する第Ⅰ/Ⅱ相多施設共同非盲検非比較試験Check-Mate040を実施。その結果、有効性は肝機能良好の患者と同等で、安全性にも問題がなかったことをJ Hepatol(2021年5月26日オンライン版)に報告。肝機能不良の進行HCCに対するニボルマブの有効性および安全性を証明したのは、世界初。
肝機能不良例に対する検討は不十分
進行HCCの一次治療として、日本では2009年にソラフェニブが、2018年にはレンバチニブが、2020年にはアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法が承認されている。米国では、2020年3月にソラフェニブ治療歴を有する患者の二次治療としてニボルマブ+イピリムマブ併用療法が承認された。しかし、いずれも肝機能良好例を適応としており、肝機能不良の進行HCC患者に対する有効性および安全性は十分に検討されていなかった。
研究グループは、2016年8月~17年10月に世界27施設で登録した肝機能不良(Child-Pugh分類B)な進行HCC患者49例を対象に、ニボルマブの有効性と安全性を検討するCheck-Mate040試験を実施。今回発表されたコホート5では、49例に対し許容できない有害事象または病態進行が見られるまでニボルマブ240mgを2週間ごとに投与、客観的奏効率(ORR)について肝機能良好な患者262例と比較した。対象の年齢中央値は67歳〔四分位範囲(IQR)62~72歳〕で、24例にソラフェニブの治療歴があった。ニボルマブの投与期間中央値は2.3カ月(同1.0~8.3カ月)だった。
肝機能良好患者と同等の効果
解析の結果、ORR12%(95%CI 5~25%)、病勢制御率55%(同40~69%)、奏効までの期間の中央値は2.7カ月(IQR 1.4~4.1カ月)、奏効持続期間の中央値は9.9カ月(95%CI 9.7~9.9カ月)、全生存(OS)は7.6カ月だった。治療関連のGrade3/4の有害事象出現率は24%だった。さらに、客観的奏効が得られた患者6例中、4例はChild-Pugh分類Aまで肝機能が改善した。
同試験の肝機能良好な進行HCC患者(Child-Pugh分類A)262例における成績(Lancet 2017; 389: 2492-2502)と比較すると、ORR20%、病態制御率61%、奏効までの期間2.7カ月、奏効持続期間12.4カ月、Grade3/4の有害事象発現率は23%と、ほぼ同等であった。
またOSについては、Child-Pugh分類Bの進行HCC患者にソラフェニブを投与した観察研究で示された5.2カ月を上回っていた(J Hepatol 2016; 65: 1140-1147)。
以上の知見から研究グループは、肝機能が低下した進行HCCに対するニボルマブの有効性および安全性は肝機能良好患者とほぼ同等でること、ソラフェニブよりも生命予後の延長効果が高いことが示唆されたとしている。また、「肝機能不良の進行HCCに対する新たな治療薬になりうる」と大きな期待を示している。
(須藤陽子)
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