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東京大学は2022年5月13日、同大学院工学系研究科の研究グループが、内壁をフッ素で覆った微細なナノチューブを開発したと発表した。塩を通さずに水だけを超高速で通すことができ、海水を淡水化する技術への応用が期待される。研究成果は12日付の米科学誌「Science」(オンライン版)に掲載された。
研究グループは、内側にフッ素原子が密に結合した大環状化合物を、超分子重合と呼ばれる手法で一列に重ねることで筒状にして、内壁がテフロンのように密にフッ素で覆われたフッ素化ナノチューブを作製した。
チューブは穴の内径が0.9ナノメートル(ナノは10億分の1)。フッ素化ナノチューブの内面はマイナスを帯びているため、同じくマイナスの塩化物イオンは通ることができず、塩を通さない。また、水がこの穴を通る際、分子のかたまりがバラバラになるため、水とチューブ内壁の間の摩擦が低減して水は超高速で透過する。
世界的な水不足に対応するため、海水を淡水化する水処理膜の研究が世界中で進められているが、世界規模で飲料水を確保するには、現在の水処理膜の能力では足りず、能力を飛躍的に高める必要がある。今回開発されたフッ素化ナノチューブは、現在有力視されている「アクアポリン」の4500倍の水透過性能があった。
今回の研究のきっかけは「水をはじくテフロンのような内壁をもつナノチューブをつくったら、どうなるだろうか」という好奇心だったという。研究グループでは「フッ素化ナノチューブを同一方向に密に並べた膜を作ることができれば、圧倒的に高い水処理能力が期待できる」としている。
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