その実力を紹介すると、最高速は412㎞/h! 0-100マイル(約96km)/h加速はなんと1.85秒とのこと。4つのモーターを搭載していて、最高出力1408kW(1914hp)、最大トルク2340Nm。バッテリーは120kWhの大容量で、満充電からの航続距離は約550km(WLTP)と、何から何まで圧倒的。
また、2023年の8月18日には、ニュルブルクリンクの北コース「ノルドシュライフェ」の20.6㎞を7分5秒298をマークし、公式な量産EVで世界最速を記録。しかも、ニュルアタックの日は条件がよい日ではなかったようなので、さらなる記録更新が期待できそう。そのほか23もの世界新記録を持つとの説明でした。
さらに圧巻の価格は200万ユーロ(約3億2000万円 ※世界デビューした2021年当時のレートでは約2億6000万円でした)で、世界限定150台。まさに、スーパーカーを超える、夢のハイパーEVです。
リマック アウトモビリってどんな企業?
日本ではリマックというメーカー名を初めて聞く人も多いのでは? リマックはクロアチアのEVベンチャー企業で、2009年に創業者のマテ・リマック氏が若干21歳で「リマック」社を設立。2011年には「リマック アウトモビリ」社を設立しました。そして、2021年にはあの名門スポーツカーメーカー「ブガッティ」を配下に収めて自動車部門の「ブガッティ リマック」を設立し、バッテリーやeアクセルなどテクノロジーに特化した「リマック テクノロジー」と共に「リマック グループ」を形成しています。
ことにリマック テクノロジーは、ジャガー・ランドローバー、アストンマーティン、ポルシェ、ルノー、ピニンファリーナ、ケイニグセグなど、多くの自動車メーカーと共同開発を行い、まさに欧州EV開発のキーマンとなっていることもあり、世界の注目度は大なのです。
リマックの強みは何と言っても高性能EVをほぼ内製できること。
ネヴェーラの主要システムであるバッテリーシステム、インバータ、ギアボックス、制御システム、インフォテイメント&コネクティビティ。さらにはオールホイールトルクベクタリング、トラクションコントロール、回生ブレーキ、アクティブエアロダイナミクス、モノコックと安全構造、高電圧と低電圧ハーネス、電子制御ユニット(ECU)、オンボードチャージャー、そして業界で最も硬いカーボンファイバー製のモノコックなどなどなど。開発や製造はすべてリマック社内で行い、ネヴェーラは5年を費やして、ゼロから仕上げられたのだとか。
説明資料やプレゼン内容にはさらに注目すべきトピックが並んでいました。円筒形セルの独自の液冷式H型120kWhのバッテリーシステムや、1MWデュアルインバーターなどはリマックのために開発。モーターごとに900Nmで500kWのパワーを可能に。
制御システムは、「NVIDIA ペガサス」ベースのスーパーコンピューターと連携し、ネヴェーラのオンボードスーパーコンピューターはMacBook Pro24台分、1時間当たり6TBのデータを処理。4つのパワートレーンシステムに100回/秒の出力を計算して送信できるそうです。
試乗会にも参加してきました
そして今回は、発表会後、モビリティリゾートもてぎの南コースで行われた試乗会にも参加してきました。
鮮やかなカリストグリーンのボディカラーは、太陽の下ではより鮮やかでエクステリアデザインのスポーティさと個性を際立たせます。
リマックのデザインにはネクタイのモチーフが取り入れられています。というのは、クロアチアがネクタイの発祥の地だから。ネクタイの誕生には、17世紀のクリアチアで戦地に行く恋人の安全を願って首にスカーフをかけたことから世界に広まったそうです。
発表会会場は屋内だったので、少しダークに見えましたが、跳ね上げたバタフライドアは角度でうっすらゴールドがかっています。エクステリアの素材はほとんどがカーボンファイバー製。
EVなのに、ボンネットの中に大きな扇風機。
タイヤは「ミシュラン パイロットスポーツ4S」。前275/35 R20 、後315/35R20。
そしてここからレーシングドライバーの小河涼選手の車両の説明を聞きながらまずは同乗試乗。
まだ試乗車は開発車両なので、ということでサインして試乗。
シート+屋根、ステアリングもアルカンターラ。(この辺りはすべてオーダーかも)
シートポジションやサイドミラーなど、すべては液晶画面内で操作。ドライブセレクターほか、運転操作系はダイヤルスイッチで統一。ステアリングの左側がドライブセレクター。
ステアリング右側はドライブモード。「SPORT」「DRIFT」「COMFORT」「RANGE」「TRACK」と2つのカスタムモードを選択できます。
助手席寄りのダイヤルスイッチは前後のモーター配分。助手席の前には速度とGセンサーが表示されています。
窓の開閉スイッチなどはセンターコンソールにありますが、少し長めなのが気になります。これは、グローブなどをしていても操作しやすくするためでしょうか?
回生ブレーキの強さはスクリーン内をタッチするか、スイッチで操作し、「High」にすると減速が強いワンペダル。回生をオフも可能。
加速はもちろん、抜群にいい。
車を停止させて「トラックモード」にし、ブレーキペダルを踏みながらアクセルペダルを踏むとドンっと音がして、「ローンチコントロール」に。加速はテスラ モデルSを凌ぐ感覚!
「トラックモード」では、乗り心地も硬く、車もクイックに動きます。
そして私がハンドルを握っての試乗。
ドライビングポジションは液晶画面内で操作するのが、ちょっと面倒。
EVなので静かに加速。でも接地感もハンドルの手ごたえもあり、車からのフィードバックもしっかり。エンジン車のような骨太感を感じます。
クルーズモードでは前後の電力使用量は前後70%づつ。続くスポーツモードも70%ですが、サスペンションが硬くなります。
トラックモードは、モーターが前後とも100%に。ローンチコントロールは車を停車させたらどのモードでも可能で、100%の加速ができます。
というわけで、トラックモードで全開加速になると怖すぎるので、スポーツモードでローンチコントロールを体験してみました。私はビビッてアクセル全開にできなかったけど、加速が凄いのは同乗試乗で体験済み。
それより、何事もなく試乗が終わってよかった~。
それにしても……ジェットコースター好きの私もビビったネヴェーラ、ものすごい加速です。
日本総代理店の株式会社BINGO 武井社長になぜリマックを日本導入したのか伺いました。
「海外のモーターショーに行ったときに、リマックの人が私を探して声をかけてくれて、代理店の話をいただいました。リマックは本物ですから」。
確かにあの加速……本物です!
ちなみに車名の「ネヴェーラ」は、クロアチアの沖合で発生する予測不能の雷、伴った嵐の意味とのこと。強力な地中海の嵐、ネヴェーラ。いいですね!
最後に急速充電について。今回、日本での試乗会にはフィンランドのkempower社からコンボ規格の充電器を調達して対応。日本で販売する際には「チャデモ規格の急速充電に対応する」とのことでした。
取材・文/吉田 由美
0 コメント:
コメントを投稿