https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/110601404/?n_cid=nbpnxt_mled_fnxth
米Apple(アップル)は2023年10月30日(米国時間)、自社開発のプロセッサー「Apple Silicon」の第3世代品として、「M3」シリーズを発表した。オンラインで実施された発表会で印象的だったのが、同社が改めて示した「脱インテル」路線だ。M3シリーズを搭載するノートパソコン「MacBook Pro」の新製品について、随所で米Intel(インテル)のプロセッサーを搭載していた従来品からの性能の飛躍を強調した。かつてアップルが米IBM製のプロセッサーからインテル製に乗り換え、話題を呼んだときとは隔世の感があった。
大口顧客が心臓部のチップを自社開発へシフトしたことに加え、インテルはプロセッサー市場を競う米AMD(Advanced Micro Devices)から猛烈な追い上げを受け、さらには新たな競合も登場している。最近では、米Qualcomm Technologies(クアルコム・テクノロジーズ)が23年10月、人工知能(AI)処理などの機能を強みとするノートパソコン向けプロセッサーを発表した。スマートフォン向けプロセッサー市場を制したクアルコムがパソコン向けでも覇権を狙う。
インテルの苦境は直近の業績にも鮮明に表れている。米SIA(Semiconductor Industry Association:米国半導体工業会)の23年11月1日(米国時間)の発表によると、同年7~9月期の半導体世界売上高は前年同期比で4.5%減少したが、この全体傾向より減少幅が大きかったのがインテルである。同社とは決算期が異なるが、データセンター向けGPU(Graphics Processing Unit)が絶好調の米NVIDIA(エヌビディア)に四半期ベースの売上高で抜かれる可能性が現実味を帯びている。
これまで種まきをしてきた事業や技術も、足元で戦略の見直しを迫られている。15年の米Altera(アルテラ)買収で始めたFPGA(Field Programmable Gate Array)事業は23年10月、部門を独立させ2~3年後にIPO(新規株式公開)を目指す方針を発表した。同月、将来の有望技術の1つとみられていたシリコンフォトニクスを用いる光モジュール関連事業の売却も明らかになった。
元凶は微細化でのつまずき
かつて半導体業界の不動の王者だったインテルの苦境はそもそも、半導体の微細化技術でのつまずきによるところが大きい。2010年代半ばに14nm(ナノメートル)世代の量産化に大苦戦したことが契機となり、台湾積体電路製造(TSMC)や韓国Samsung Electronics(サムスン電子)に微細化競争で先行を許した。このことがインテル包囲網ともいえる、TSMCやサムスン電子と組む様々なライバルの台頭を招いた。
反転攻勢を期するインテルは今後、プロセスノードの更新を急ピッチで進め、「25年までにプロセス技術におけるリーダーシップを取り戻す」との目標を掲げる。23年9月には同社として初めてEUV(極端紫外線)露光を使うプロセス技術「Intel 4」の量産化を発表し、復活ののろしを上げようとしている。ただ、先行して先端プロセスのノウハウをためるTSMCやサムスン電子に追いつき、追い越すのは容易ではない。
たとえ微細化で追いついたとしても、事業戦略の大幅な見直しは欠かせなさそうだ。パソコンはいまだ大きな市場を持つものの、もはや右肩上がりで伸びる市場ではない。しかも、x86互換メーカーであるAMDの躍進に加え、パソコンは必ずしもx86が前提ではなくなっている。ポストPCであるスマートフォンやタブレット市場ではインテルの影はほぼない。今後伸びるとみられるAI向けのデータセンター事業で、エヌビディアに対抗する道も険しい。一体、どうやればインテルは復活できるのか。記者にはその道筋はすぐには思い浮かばない。
0 コメント:
コメントを投稿