コメント。2ch STEREOプリメインアンプにTV対応HDMI入出力端子搭載タイプが登場。
2023年9月26日
デノンからHDMIを装備したプリメインアンプ「DRA-900H」が2023年10月下旬に発売される。希望国利価格は121,000円(税込)。「ネットワークステレオレシーバー」と名乗っているが、実態としてはHDMI入出力(セレクター)、独自のネットワークオーディオ機能「HEOS(ヒオス)」を搭載した一体型プリメインアンプだと言える。
同価格帯で言うとデノンには「PMA-900HNE」という「HEOS」対応のプリメインアンプもあるほか、CDプレーヤー一体型の「RCD-N12」を発表したばかり。HDMI入出力・CD再生の必要性や、本体サイズに応じて選び分けをするということになるだろう。
さらに言えば姉妹ブランドであるマランツからはHDMI入出力を搭載したプリメインアンプ「STEREO 70s」が発表されたばかり。こちらは薄型のマランツ、フルサイズのデノンという棲み分けになりそうだ。
「DRA-900H」の本体色はシルバーのみ
HDMI入力は6系統で、そのうち3系統が4K/120Hz、8K/60Hz信号のパススルーに対応する。なお、HDMI入出力にはジッター抑制技術を投入。音質の向上を図った。また、先行して発表された「RCD-N12」と同じく、Amazon「Fire TV Stick」などへの給電用USB Type-A端子の装備もポイントだ
待望のデノン版HDMI入出力搭載プリメインアンプ
広く知られているとおり、現在デノンとマランツは同じ企業が運営する姉妹ブランド関係にある。マランツには「NR1200」というHDMI入出力を持ったプリメインアンプがあり、2019年の発売以来その利便性の高さから人気を博している。そして上述のとおり「STEREO 70s」という上位機種も発表されたところ。
「DRA-900H」は、待望のデノン版HDMI入出力搭載プリメインアンプ。当然に基本コンセプトも「STEREO 70s」とよく似ている。現在は「PS5」などを筆頭にしたゲーム機、Amazon「Fire TV」シリーズのような動画ストリーミングのための端末など、HDMIでの接続を前提としたハードウェアが多い。そこで、HDMI入力を持ち、多機能でありながらハイファイクオリティで聴けるアンプを企画したそうだ。
HDMI入出力を持っているため、テレビやゲーム機との接続がスムーズ。MM対応のフォノ入力も備えるので、写真のようにレコードプレーヤーとの組み合わせも可能だ。もちろん、Bluetoothでの手軽な音楽再生にも対応する。「RCD-N12」などと同様にBluetooth送受信に対応しているので、本機で再生した音楽をBluetoothイヤホン/ヘッドホンでも聴取できる
余裕のある大型キャビネットに2ch専用設計が施された
パッと見てわかるとおり、「DRA-900H」のキャビネットはデノン製AVアンプの型を流用したもの。横幅は434mm、高さ151mm(アンテナを除く)ということでしっかりとした大きさだ。見た目はAVアンプ然としていても、設計はあくまで2ch専用。スペース的に余裕のある本体に2chのレイアウトをしたため、理想に近いレイアウトも実現できたという。左右対称形のパワーアンプレイアウトなどがその最たるポイントだ。
実は2019年時点で「DRA-800H」という欧米向けのHDMI搭載プリメインアンプ製品があったのだが、日本には導入されていなかった。その「DRA-800H」に改良を加えられたのが「DRA-900H」。改善点として大きいのは、デノンのAVアンプ「AVR-X2800H」に採用されたカレントミラー回路の追加で、S/Nで言えば10dB以上の改善を果たしたという。
電源を中心として、左右を分離した形でパワーアンプを配置。L/Rchの相互干渉を抑えるねらいだ。アンプの定格出力は100W(8Ω)×2
限られたコストで最善の結果を得るために、アナログ音声信号処理の回路は1枚の基板に集約されている。信号経路を極力短くするとともにノイズ源となる電源トランスから離して設置。干渉を防ぐ設計をとった
D/AコンバーターはL/Rそれぞれに2ch素子を使い、合計4chを差動合成してS/Nを稼いでいる
要となる部分にカスタムコンデンサーを投入する手法は、ほかのデノン製品と同様だ
さらに安価なAVアンプと異なるのは、電源トランスの巻線にOFCを使っていること。デノンのAVアンプで言えば、OFC巻線トランスを採用しているのは最上位品「AVC-A1H」のみ。コストの配分という意味でもそうだが、OFC巻線のトランスは背が高くなってしまうそうで、キャビネットに余裕があることのメリットはここにも表れている
ネジやワッシャーの1つひとつについても音質検討と選別が行われ、チューニングが施される。日本で販売される「DRA-900H」だけの特徴として、フロントパネルがアルミ製であることも紹介された。欧米の同等品はフロントパネルがプラスチックだそうだ
マランツ「STEREO 70s」とはキャラクター違いの見事な音質
最後に、例によってD&Mホールディングスの試聴室で試聴のデモンストレーションが行われた。接続したスピーカーはBowers & Wilkinsの「801 D4」だ。
「DRA-900H」でも近年のデノン共通の音質コンセプト「Vivid & Spacious」が標榜されているのだが、レベッカ・ピジョンのCD「Spanish Harlem」を再生してHDMI入力すると、確かに空間の広がりが気持ちよい。静かな空間にボーカルが響き、そのリバーブがしっかりと余韻を残す。デノン製品の音質決定を行う「サウンドマスター」によれば、ジッター技術が効いている結果だという。イーグルス「Hotel California」のライブバージョン(「Hell Freezes Over」収録)では、イントロのバスドラムの沈み込みをごまかしなく聴かせるドライバビリティも見せてくれた。
ぜひともマランツの「STEREO 70s」と直接比較したいと思わせる、こちらもなかなかのクオリティだ。とはいえ、冒頭のとおりマランツ「STEREO 70s」とは設置上必要なサイズで選び分けることになるのが現実かもしれない。
音質を比べたとしても、どちらが上というよりは音質キャラクターの違いをどう考えるかということにもなりそうだ。ハイファイ志向で解像感が際立っていた「STEREO 70s」か、“Spacious”な空間再現、しっかりした力感を聴かせてくれた「DRA-900H」か……ユーザーにとっては悩ましい問題だが、選択肢が増えたことを歓迎したい。
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