https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/24/00755/
物質・材料研究機構(NIMS)の研究チームは、物質中の電子のスピン*状態を可視化できる顕微鏡「イメージング型スピン分解光電子顕微鏡(iSPEM)」を開発した(図)。物質中の電子と光の相互作用を利用して、スピンも含めた電子の振る舞いを画像化する。従来の実験装置に比べてデータ取得効率と空間分解能が向上しており、「サブミクロンスケールの微小な材料やデバイスの電子構造の可視化が可能」(NIMS)という。
iSPEMは、試料を準備・分析・保管する3つの超高真空チャンバーから成る。試料に紫外光を照射すると、電子が光エネルギーを吸収して試料から放出される。そのエネルギーを光電子分析器で分析した後、スピンフィルターでそのスピン偏極度(スピンの偏りの度合い)を分析し、結果を画像として表示する。研究者は、画像から材料中の電子スピン状態に関する情報を得られる。データ取得効率は従来の装置から1万倍に向上し、空間分解能も10倍以上だとする。
量子分野やスピントロニクス分野では、情報の伝達・処理に従来の電荷に加えて電子のスピンを利用する。そのためNIMSは、スピン計測技術の進歩により、スピンを利用した情報処理や電子デバイスの新規開発・性能向上に関する研究が加速すると見る。研究チームはiSPEMを用いた研究を進め、高効率かつ高速な電子デバイスの開発の可能性を探る。
この研究は、NIMS研究員の矢治光一郎氏と津田俊輔氏によるもの。論文は、NIMSとSwiss Federal Laboratories for Materials Science and Technology(スイス連邦材料科学技術研究所、Empa)が支援するオープンアクセスジャーナル『Science and Technology of Advanced Materials: Methods』に掲載された。
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