2025年1月2日木曜日

インターネットケーブルを介した量子テレポーテーションを初めて実証

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 アメリカの研究チームが、使用中のインターネット用ケーブルで「量子テレポーテーション」できることを史上初めて実証した。

 量子通信は、量子の不可思議な性質を利用した次世代の超光速通信だ。その鍵となる量子テレポーテーションを行うには専用のインフラが必要とされてきた。

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 だが、今回それをインターネット通信が行われているごく普通の光ファイバーケーブルで行うことに成功したのである。

 この成功は、量子通信技術のために用意しなければならない専用のインフラをグッと簡素化できるという点で、大きな意味を持っている。

量子通信に既存のインターネットケーブルが利用できない理由

 光の速度にしか制限されない量子テレポーテーションは、物理的な信号送信のない超高速かつ安全な通信を可能にすると期待されている(あのNASAもまた量子通信を研究している)。

 その鍵となるのが「量子もつれ」という現象だ。量子の不可思議の性質により、2つの粒子は距離に関係なく状態がリンク(もつれ)する。

 このもつれを利用することで、粒子を物理的に移動させなくても、ある場所から別の場所へと情報を伝えることができる。

 米国ノースウェスタン大学のプレム・クマール氏は、ニュースリリースで次のように説明する。

量子状態を運ぶ光子と、別の光子にもつれた光子の2つを破壊的測定すると、量子状態が残りの光子に転送されます。どんなに遠く離れていても構いません(クマール氏)

 この新しい通信技術を実用化するうえでの問題の1つは、そのインフラをどうするかということだ。

 新たに専用のインフラを用意するのでは手間も費用もかかる。もし従来の通信用の光ケーブルを代用できるのならそれに越したことはない。

 だが現実には、すでにインターネットに利用されている光ケーブルでの量子テレポーテーションは不可能ではないかと考える学者も多かった。

 そうした光ケーブルの内部では数百万の光子が飛び交っている。そこで量子テレポーテーションをしようとしても、もつれた光子がその他大勢の光子の中で行方不明になってしまうのだ。

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もっとも渋滞が少ないポイントを発見

 今回発見されたのは、繊細なもつれた光子に渋滞を回避させる方法だ。

 クマール氏らは、光ファイバーケーブルの内部で光がどのように散乱するか徹底的に調べ、散乱が最小になるポイントを発見。ここに特殊なフィルターを施して、インターネット通信によって生じるノイズを減らしてやる。

 こうして静かになった場所にもつれた光子を配置することで、光ファイバーケーブルのトラフィックから干渉を受けることなく、量子通信が可能になる。

 これを実際に確かめてみるため、長さ30kmの光ファイバーケーブルの両端に、もつれた光子を配置し、インターネットのトラフィックがある中で量子情報を送信するという実験が行われた。

 量子テレポーテーションを実行した後、受信側で量子情報の品質を測定してみると、見事に情報がきちんと伝えられたことが確認されたのだ。これは普通にインターネットのデータが送信されている状況で行われた快挙だ。

 それが意味するところは、新たに専用のインフラを設置することなく、既存の光ファイバーケーブルで量子通信が可能になるだろうということだ。

これまで、光粒子を送信するには、特殊なインフラが必要になると仮定されてきました。ですが適切に波長を選択すれば、新しいインフラを構築する必要はありません。古典通信と量子通信は共存できます(クマール氏)

 クマール氏は今後、もっと長い距離で同じことができるかどうか確かめる予定であるとのこと。また今回実験室の光ファイバーケーブルが使用されたが、実際に使用されている地下ケーブルでの検証も試したいそうだ。

 さらに1組ではなく、2組のもつれた光子によるエンタングルメント・スワッピングも試みるという。こちらも分散型量子技術にとっては重要なステップであるそうだ。

 この研究は『Optica』(2024年12月20日付)に掲載された。

References: First demonstration of quantum teleportation over busy Internet cables: For Journalists - Northwestern University

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この記事へのコメント、11件

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  1. 量子もつれマジ理解できない。二つの光子を特定してかつ人為的にもつれ関係にするってどんな方法なのよ。

    1. 「観測した瞬間に状態は確定する」
      「この双子粒子は片方が+ならもう片方は必ずーである」
      なので双子粒子を離して片方を観測すれば何百万光年離そうが直ちに状態が確定する

      この原理を理解すれば難しいことはなんもなくない?
      理解できないのは「観測した時に状態が確定する」というシンプルな原理をあれこれ理屈つけて受け入れようとしないからだよ。
      量子論の話題だと「不確定性原理は実際は状態決まってて観測技術の問題なだけ」だのうんたらかんたらワラワラ湧いてくるからね。

      1. まるで一方に何かを乗せれば上下が決まる天秤のごとく・・・
        原理は不明だが、もつれ状態にはできるというのだから確かに意味がわからない
        なぜ片方が定まるとこうなるか不明だけど、人為的にその状態にできるとは

    2. 「もし量子力学を理解できるという科学者がいたら、その科学者は理解していない」というジョークがあるくらいだからね

      人類の誰も理解していないけど、実験するとうまくいく、それが量子テレポーテーション

    3. この量子もつれの不思議なところは、片側の粒子を観測した時点で、観測不可能なほど遠方にあるもう片側の粒子に何が起こっているのか(例えばブラックホールに飲み込まれてたり亜光速で加速させられていたりなど)の状態も瞬時に分かってしまうという事なんだよね。
      つまり情報が光速を超えて伝わるので相対性理論を破ることになり、EPRパラドックスとして問題提起されている

      1. めっちゃ離れた片側を観測して、めっちゃ離れた相手側まで伝えるのに時間かかるんでは??
        そもそも量子がめっちゃ離れてるってことからわからん!

        1. あなたが自分の部屋にいるとします。
          あなたの手のひらに一個の量子Aが浮かんでおり、その量子Aともつれ関係にある量子Bがとなりの部屋にポツンと浮かんでいるとします。
          あなたはふと手のひらの量子Aを観測してみると、量子Aは右に回転していた。
          この瞬間、となりの部屋の量子Bも右に回転してると断定できる。
          となりの部屋まで行って量子Bを観測する必要はない。
          そしてこの量子Bが浮かんでる場所が3億光年先の宇宙空間だとしても、あなたは自室にいながら量子Bが右に回転してると断定できる。

          みたいな話なんですが、「実験して実証できました」言われても、なんというか煙に巻かれてる感ありますね。

  2. 時間と空間という概念とは・・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

  3. そういえば重い飛行機がなぜ飛ぶのかも人類は証明できてないとか。とはいえ飛んているのでそのままだとか。

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