しかも、そのロボットには電池もモーターもついていないのに、空中でピタリと止まったり、くるりと向きを変えたり、壁にぶつかってもすぐに立ち直ったりするのです。
この不思議なロボットを開発したのは、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校(UCB)の研究者たちです。
彼らが作り上げたのは、翼の直径が9.4ミリ、重さはたったの21ミリグラムという「世界最小の無線飛行ロボット」です。
研究の詳細は、2025年3月28日付の科学誌『Science Advances』にも掲載されました。
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極小ロボットの飛行を可能にしたのは「磁場」だった
極端に小さいものを空中に浮かせることは簡単ではありません。
なぜなら、空気抵抗に対して極めて敏感になり、ちょっとした揺れや風でもすぐに不安定になってしまうからです。
また、従来のドローンにはバッテリーやモーター、制御回路といった装置が必要でしたが、それを数十ミリのサイズに詰め込むのはほぼ不可能だからです。
しかし、UCバークレーの研究者たちはこの難題を見事にクリアしました。

彼らが開発したこの直径1cm未満のロボットは、バッテリーもモーターも搭載していないにもかかわらず、安定して空を飛ぶことができます。
その秘密を理解するために、中学校の理科の授業で使う棒磁石を思い出してください。
磁石の近くにクリップを置くと、何もしなくてもスッとくっつきますよね。
この「見えないけれど力を持った空間」が磁場です。
今回のロボットは、まさにこの磁場の力を使って飛んでいるのです。
外からかけられた交流磁場と、ロボット内部に仕込まれた小さな永久磁石との相互作用によって、トルク(回転力)が発生します。
それによって、ロボットの回転翼がくるくると回り、空気を押し下げる力――つまり揚力が生まれ、機体が空中に持ち上がるのです。

まるで見えない“磁場の手”がロボットを支えているかのようです。
さらに、このロボットには「バランスリング」と呼ばれる構造が加えられています。
これにより、回転によって生じるジャイロ効果、つまり回ることで姿勢を安定させる力が発生。揺れや傾きを自動で補正することができます。
コマを勢いよく回すとまっすぐ立ち続けるのと同じ原理ですね。
子和得て、この新しい小型ロボットには、自然界の知恵も収められています。
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