2025年4月3日木曜日

AI対応や既存資産の最適化支援などを進める、NTTデータのデータセンタービジネス最新動向 柏木 恵子2025年3月11日 06:30

https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1669086.html

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株式会社NTTデータは6日、データセンタービジネスの最新の取り組みと今後の展望について説明会を開催した。

 NTTデータは、国内13カ所にデータセンターを保有し、電力容量117MWを提供している。現在、関東と関西に新しいデータセンターを建設中で、京阪奈データセンター(30MW)は2026年2月、白井データセンター(50MW)は2027年3月の完成を予定している。

 グローバル(NTT Global Data Center)では、北米、EMEA、インド、APACで合計91拠点、1455MWを提供し(2025年1月末時点)、今後も続々リリース予定だ。NTTデータの進藤数馬氏によれば、「NTTグループにおけるデータセンター事業はグローバルでシェア約6%であり、世界第3位のデータセンター事業者」だという。

NTTデータグループコーポレート統括本部事業戦略室事業戦略部DC&GB推進室 室長 進藤数馬氏

栃木市に新たなデータセンター開発計画

 国内では、栃木県に用地を取得したことを2月5日に発表している。当該用地は、首都圏エリアにおける新たなデータセンターとして開発を進める計画で、2棟のデータセンターを建設予定。合計約100MWと、関東エリアでも大規模なデータセンターの1つとなる。なお、第1棟の開業は、2028年度を予定している。

栃木データセンター

 生成AIや大規模言語モデル(LLM)では、ユーザーの近くで処理する生成のためのデータセンターの他に、距離はある程度遠くてもいいので、大量データを処理するマシンラーニング(学習)環境が必要だ。栃木データセンターは、大規模AI基盤の実現に不可欠な、複数のGPUを搭載した高発熱サーバーや、最新鋭のラックスケールソリューションに対応した高発熱高密度ラックを設置可能な設計。直接液冷方式(DLC:Direct Liquid Cooling)などの最先端の冷却技術を実現可能であり、同時に最新の省エネ技術の実装による計算能力あたりの消費電力低減や、再生可能エネルギーの利用など、環境負荷の低減に努めるという。

 通信技術面では、低遅延・広帯域・低消費電力を実現するため、NTTグループが推進するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)APNの実装を計画している。NTTグループ各社のデータセンター間や、顧客企業のデータセンターとの間でIOWN APN接続を行うことで、既存データセンターの拡張サイトとしても利用が可能となる。

遠隔地メガソーラーの再エネ電力を使用

 NTTデータは、2040年までにNet-Zero実現を目指す「NTT DATA NET-ZERO Vision 2040」を策定している。その中で自社の排出量の約7割を占めるデータセンター事業についてはエネルギーの効率化、省エネルギー、再生可能エネルギーの導入を推進している。

 取り組みの1つとして、三鷹データセンターEASTにおける遠隔地メガソーラーの再エネ電力(PPA)の使用開始を、2024年3月1日に発表している。株式会社プロメディアが埼玉県と栃木県に新設する太陽光発電所で発電した電力を、東京電力エナジーパートナー株式会社が三鷹データセンターEASTに供給するもので、太陽光発電所全拠点が2025年1月に完成した。

 年間440万kWhの電力の供給を受けるが、これは一般家庭約1000世帯に相当する。国内データセンター最大規模だが、さすがにデータセンターの全電力というわけではなく、三鷹EASTで使用する電力の約20%相当をまかなう予定。NTTデータの渋谷誉人氏は、再エネ利用について「非化石証書を買うのではなく、PPAでの再エネ化を目指す」と言う。

NTTデータテクノロジーコンサルティング事業本部テクノロジーコンサルティング事業部 統括部長 渋谷誉人氏

データセンターにおける液体冷却技術の活用推進

 2024年11月21日には、データセンターにおける液体冷却技術の活用推進に向けて、検証施設「Data Center Trial Field」を開設した。

 昨今、AIなどの発展により急増するサーバーの発熱量に対して、冷却効率が高い水冷サーバーや液浸冷却などの液体冷却技術が注目されている。しかし、現在の液体冷却技術はメーカーごとに仕様が異なるため、データセンターを利用する各企業の要望を十分に満たすことが難しい。

 また、従来の空調方式では明確に区別されていたIT領域と建物設備領域が液体冷却技術においては接近する。このため、液体冷却システムを構築する上では、双方の技術や仕組みの理解が不可欠となるが、安全な施工や運用のための関係会社間の相互理解も不足している。

 この課題を解決するため、データセンターに関わる各事業者が参画し、ITサービスの企画から運用までの各フェーズを想定した共同検証を行うフィールドが必要だというのが、同センター開設の背景だ。当初、NTTデータの他、日比谷総合設備、桑名金属工業、日比谷通称、Chemours、三桜工業、東亜電気工業といった設備関連企業で共同検証を始めたが、今年ゲットワークス(コンテナDC)とアステックス(水冷ラック関連)が新たに参画した。

 主な検証テーマには、例えば液浸冷却装置の冷却液についての検証がある。これまで2相式液浸冷却の主流であった冷媒液(フロリナート)が環境規制対象となり、大手の製造元が撤退した。環境に配慮した冷却液が求められる中で、Chemours社が環境性能を改善した新冷媒液(2P50)を開発したので、Chemours社も参画して新冷媒液の検証を進めている。

 その他、水冷サーバーについても、DLC環境で高負荷と低負荷を混在させた場合の検証などを実施している。水冷ラックは高負荷サーバーを利用する場合に限定されるが、国内のエンタープライズでは高負荷需要は多くない。水冷ラックの標準仕様ではスモールスタートや低負荷との混在に柔軟に対応できないため、水冷ラックの内部構造や冷却液、CDUなどでカスタマイズできないか、挙動を把握する取り組みだ。

データセンター資産最適化支援サービス

 データセンター関連サービスで目新しいものとしては、2024年12月25日に「データセンター資産最適化支援サービス」の提供を開始している。ITインフラ構築と不動産資産の利活用・処分のコンサルティングを、統合的に提供するものとなっている。

データセンター資産最適化支援サービス

 データセンターは、建物の耐用年数が50年、受変電設備や非常用発電機は25~30年、空調は10~15年でリプレイスというのが一般的だ。2000年より前に完成したデータセンターは設備のリプレイス時期を迎えているが、昨今のデータセンターに求められている要件に対応できない可能性が高い。企業内データセンターは、7割が2000年以前に完成したという調査結果もあり、老朽化したデータセンターをどうするか、頭を悩ませる企業が増えそうだ。

 同サービスは、NTTデータがこれまで自社所有のデータセンターで培った利活用・処分の実績とノウハウを活用して、顧客のデータセンターの資産洗い出しや用途の検証を行い、資産最適化の方針を策定する。

 実行段階では、以下の2軸で支援する。

  • リノベーションやデータセンター以外への用途変更、運用改善を通じてデータセンターの価値向上を図る「利活用」
  • 資産売却やリースバックを通じてアセットライト化を図る「処分」

 これにより、資本効率向上などの経営課題解決に貢献する。

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