「リンゴのように赤い」という言葉は、いつか使われなくなるかもしれない――。労働力不足に悩むリンゴ農家の間で、色づきの管理が大変な赤リンゴから、手間がかからない黄色リンゴに植え替える動きが広がっている。ナシと間違えられるなど、国内の需要拡大への課題は多いが、海外では強い甘みや珍しさに人気が集まりつつある。
リンゴの収穫量で全国の6割を占める青森県。4月下旬、青森市から車で40分ほど離れた山あいに広がる約1千平方メートルの畑で、リンゴ農家の工藤武春さん(50)が黄色品種の代表種「トキ」の苗木を植えていた。約4年後に60~70個の実をつける。農家を継いだ約10年前、栽培していたリンゴの9割は赤リンゴだったが、少しずつ木を植え替えてきた。今では黄色品種が6割だ。
1年間のほとんどを果樹の手入れに費やすリンゴ農家にとって、特に重労働なのが「着色管理」。日光に当たると現れる色素が赤色を演出するため、一つひとつのリンゴにむらなく日を当てる必要がある。
収穫約1カ月前から、日陰にならないよう周りの葉を取ったり、日の当たる面が逆になるよう実を裏返したりする作業に追われる。特に大変なのが、底まで赤くするために果樹の下の地面に反射シートを敷きつめる作業。工藤さんの母(79)も手伝うが、2~3日がかりの作業で腰が痛くなる。
だが、黄色品種でこうした作業はほとんど不要だ。青森県内では高齢化と後継者不足で、農業全体の労働力はこの20年間でほぼ半減。少しでも省力化しようと、赤リンゴの木が寿命を迎えると、黄色品種に植え替える農家が増えている。2014年産リンゴの県内の栽培面積は2万429ヘクタールで過去10年で約1割減ったが、黄色品種に限れば、同期間に約8%増え、3453ヘクタールになった。
リンゴ苗木の販売会社「原田種苗」(青森市)では、5年ほど前から売り上げの約6割が黄色品種という。原田寿晴社長は「『トキ』は日持ちも良いし、甘い。今後、黄色がメインになっていくのは間違いない」と話す。
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