こんにちは。
突然ですが、ミツバチが激減しているのをご存知ですか?

2007年春までに、北半球の4分の1のミツバチが消えてしまったという報告があります(注1)。
ミツバチが大量に消えてしまった国はフランス・ベルギー・イタリア・ドイツ・スイス・スペイン・ギリシャ・オランダ・スロベニア・イギリス・中国・アメリカ・カナダ・ブラジル・インド・台湾・ウルグアイ・オーストラリア、そして日本。
さまざまな原因が複合的に影響を与えていると言えますが、その中でももっとも直接的な原因とされているのが、ネオニコチノイド系農薬です。
 日本でも各地で、ミツバチの大量死や、ミツバチの巣に異変が見られています。

ミツバチはとっても大事
「ミツバチぐらいいいじゃない?」なんて思ってはいけません。
なぜならミツバチはトマト、ナス、キュウリ、カボチャ、レタス、ナタネなどの野菜やイチゴ、メロン、スイカ、モモ、ナシ、リンゴなどのフルーツなどの受粉を担っているからです。ミツバチがいなくなれば、このような食物の受粉を別の手段で行わなくてはならなくなります。
ミツバチがいなくなることでの経済的損失は2650億ユーロ(約32兆円)と言われるぐらいです(注2)。
経済的損失もそうですが、ミツバチがいなくなることで失われるかもしれない、桜いっぱいの景色などは、プライスレスです。 
 

ハチ大量死の主原因はネオニコチノイド系農薬
ネオニコチノイド系農薬は、タバコの有害成分ニコチンに似ているのでネオニコチノイドという名前を付けられた殺虫剤です。日本でも稲作をはじめとしてさまざまな用途に広く使用されており、この10年間で出荷量は約3倍に増えています。 
ネオニコチノイドは、水溶性で植物の内部に浸透していくことから浸透性農薬とも呼ばれています。ネオニコチノイドを生産している企業は、世界でも大手の農薬関連会社で、バイエル、住友化学、シンジェンタなどです。
この農薬は水溶性かつ浸透性なので、環境に広がりやすく、さらに作用が長期間にわたってつづきます。そして、虫の神経に作用する毒性をもち、これがミツバチ減少の主原因とされます。
もちろん、農薬会社はその影響を否定し続けています。その理由は、決定的な証拠がないからというもの。しかし、影響が決定的になってから規制するのでは手遅れです。

浸透性農薬「フィプロニル」も原因の一つ
また、最近では、ネオニコチノイドの他に同様の浸透性作用のある殺虫剤として使用されている「フィプロニル」のミツハチや赤とんぼ、その他昆虫などへの影響も指摘されています。これも神経毒性があり、ミツバチ大量死の原因として注目されています。
フィプロニルは農薬としてだけではなく、ペットのノミ駆除、アリ駆除、ゴキブリ駆除などの家庭内殺虫剤としても使われますので、みなさんも知らずに使っているかもしれません。
例えば、ゴキブリ駆除として、台所に置くタイプのバルサンなんかは、フィプロニルを使用していますし、ペットのノミ駆除として有名なフロントラインという商品もフィプロニルを使用しています。

ネオニコチノイド系農薬の規制が必要
ネオニコチノイド系農薬の規制がEUレベルではじまっていますが、日本ではまだまだ野放し状態です。
しかし、最近になって国内でもミツバチ減少の原因がネオニコチノイドであるという研究が発表され報道されるようになりました。その一つが金沢大学の山田敏郎教授らの研究です。
ネオニコチノイドのミツバチへの影響を調べた研究で山田教授は「ハチが即死しないような濃度でも、農薬を含んだ餌を食べたハチの帰巣本能がだめになり、群れが崩壊すると考えられる」と指摘して、養蜂への影響を避けるためネオニコチノイド系農薬の使用削減を求めています(注3)。
このように、私たちの知らないところで進む生態系の破壊。レイチェル・カーソンさんが、「沈黙の春」で農薬の危険性を指摘してからすでに半世紀が過ぎますが、着実に「沈黙の春」が近づいているようです。

私たちにできること
私たちにできることとして、有機農業で生産された食物を買うこと、また、むやみ多量に殺虫剤を使わないことがあります。そして、外でハチを見かけたらネオニコチノイド系農薬の危険性などについて家族や友人にさりげなく伝えてあげてください。
グリーンピースは、ネオニコチノイド系農薬の高い規制をまずはEUレベルで実現することで、世界的な規制に導こうと活動しています。署名も世界中から募集していますので、ぜひご参加ください。以下のサイト(英語)の「BEE THE SOLUTION」そして、「Sign the Petition」をクリックするとローマ字の入力欄が出てきます。

*このブログの写真類はすべてグリーンピースの運営する http://sos-bees.org/ から使用しています。

(注1) Jacobson, Rowan “Fruitless Fall: The Collapse of the Honey Bee and the Coming Agricultural Crisis” 2009
(注2) Lautenbach, S. et al., 'Spatial and temporal trends of global pollination benefit', PLoS One, 7(4): e35954, 2012. doi:10.1371/journal.pone.0035954