http://ieei.or.jp/2018/08/column180806/
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第5次エネルギー基本計画が7月3日に閣議決定された。そこで2030年の電源構成の中に占める再生可能エネルギーの比率が22~24%、かつ、経済的に自立し脱炭素化した主力電源化を目指すということが明示された。この目標の達成には様々な対応が必要だが、天候によって不規則に変動する再エネ電源からの出力を安定化させるために、余剰が発生した場合にはこれで水を電気分解して水素を作って貯蔵し、不足の場合には燃料電池などで発電することもその一つとなる。この水素製造の大きな課題は、発生する水素を遠隔地に輸送することが容易ではないということだ。この課題に対応する方式が開発されつつあるが、その一つに水素を窒素と化合させてアンモニアに変換するというものがある。アンモニアは化学工業の原料として広く利用されていて流通経路も整備されているために、遠隔地に輸送する難度は小さく、水素のキャリアーとして期待され、直接燃料として利用する研究開発も推進されている。
2015年には、東北大学の小林秀昭教授が開発した技術を利用して、アンモニアのみを燃料として50kWクラスのタービンで直接燃焼させるのに成功したと産業技術総合研究所が発表しているが、タービンの構造がかなり複雑なものだったようだ。当研究所でも、2017年5月に主任研究員の塩沢 文朗氏が2回にわたってアンモニアの特性について基本的な解説をされ、今年の2月には、中国電力の谷川 博昭氏が石炭火力発電所のボイラーで補助燃料として利用するのに成功した実証試験の経過を述べておられる。だが、アンモニアを燃料とする発電設備が商品化されるのには少し時間がかかると筆者は考えていた。
ところが今年の4月、IHIが、ガスタービンの燃料としてアンモニアを利用する燃焼技術の実用化にめどをつけたと発表したのを知り、その開発テンポの早さに少なからず驚かされた。アンモニアと天然ガスの混焼試験で、出力2千キロワット級ガスタービンで世界初めてとなる熱量比率20%の混焼に成功したという内容だから、既存のガス火力発電所に追加設置することも難しい話ではないだろう。先に述べた中国電力の実証試験のフローチャートを見ると、LNGを気化した天然ガスにアンモニアを混入した形で燃焼させているから、同じような混焼方式だと解釈できる。IHIがこれからどのような規模のガスタービンを市場に出すかを楽しみにしていた。
5月に入って、IHIのプレス発表を見てさらに驚かされた。アンモニアを燃料として発電する固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムを開発し、1kW級の発電に成功したというもので、今後業務用・産業用向けの大型化に取り組むとしている。これまで商品化されている燃料電池は、熱電併給方式であれば総合効率は非常に高いものの、水素を直接燃料として使用するもの以外、どの方式であっても燃料には天然ガスやLPGが使われ、排ガス中には温暖化ガスであるCO2が含まれるのは避けられない。しかし、アンモニア(NH3)には炭素原子がないために、燃料電池に利用しても排ガス中にCO2は存在しない。地球温暖化対応にもっとも適した燃料電池が開発されたことになる。アンモニアを水素に戻す必要もない。SOFCの運転温度域でアンモニアが水素と窒素に熱分解されるため、これまでのものでは必要だった燃料ガスから水素を抽出する改質器も不要となり、設備のコスト競争力も生まれるはずだ。早期の商品化を期待している。アンモニアの供給には、LPGの流通システムが使えるかも知れない。
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