2019年10月9日水曜日

いまだに「紙とはんこ」を使い続ける会社の特徴。優れた政府は電子政府化を進めており、優れた企業はオフィスのペーパレス&クラウド化を進めております。

コメント:
世界一優れた電子政府は、アゼルバイジャン政府で、
二番目に優れた電子政府は、エストニア政府だと、
言われております。

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横山 公一:ペーパーロジック代表、公認会計士・税理士

日本で紙とはんこが必要なくなる日は来るのでしょうか(写真:uusan/PIXTA)
先の内閣改造でIT担当相となった竹本直一氏。9月12日の就任記者会見では、印鑑とデジタル化について「共栄のため知恵をしぼる」と述べ、両立させていく考えを示しました。さらには、「印鑑をデジタルで全部処理できないかという話があるが、印鑑を生業とする人たちにとっては、死活問題だから待ってくれ、という話になっている」とも述べています。
「ん?はんことデジタルの両立?」「印鑑業界が死活問題?」何のことはない、竹本IT大臣は「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」(通称・はんこ議連)の会長を務めておられる。
一方、38歳の天才プログラマーをIT担当政府委員にしている台湾との比較も相まって、先の発言は「IT担当相としてどうなの?」「デジタル法の可決により日本はデジタル国家になっていくのではなかったの?」と話題になったことは、ご存じのとおりです。

デジタル化の流れは20年前から

さて、日本では2019年5月24日、デジタルファースト法が参院本会議で可決・成立しました。従来の紙やはんこによる行政手続きと決別するものですが、この動きに呼応してビジネス文書の「電子化・ペーパーレス化」(以下、デジタル化)の規制緩和も急速に進んでいます。
日本がデジタル化に踏み出したのは今から約20年前。1998年に、会計帳簿やその根拠となる証憑類(しょうひょうるい)を電子データとして保存することを認める電子帳簿保存法が施行されたのが最初です。そこから、2001年には電子署名法、2005年のe-文書法の施行により、251の法規制を本法の改訂なく横串しでデジタル保存を可能になりました。
また、電子帳簿保存法のスキャナ保存制度に関しては、2016年、2017年の規制緩和に続いて、2019年も領収書、請求書、契約書など、重要な国税関係書類を過去にさかのぼってデジタル保存を可能にするなど緩和の流れが加速しています。日本の労働生産性の絶望的な低さ、顕在化しつつある少子高齢化の影響を鑑みれば当然の流れでしょう。
こうした中、冒頭の竹中IT担当相のような、既得権益を主張する業者や組合を守るための発言、行動は、健全な経済活動の妨害になることがほとんどです。多かれ少なかれそのような動きの中で少しずつ経済は発展していくものではありますが、今回のデジタル化は喫緊の課題であり、日本の今後の行く末を決すると言っても過言ではないものなのです。
では、日本では現在、どの程度デジタル化が可能なのでしょうか。下記の表は、一般的な取引の流れです。
取引をスタートする場合、まず社内のコンセンサスを稟議決裁の過程で形成していきます。その後、相手先を選定するために複数者から見積書を取得し取引先を決定します。選定した取引先と契約を締結し、サービス・商品の(受)発注、納品、検収と段階が進み、その後、請求書に基づき支払いを行います。このすべての帳票の流れを、紙とはんこでやり取りしている企業も多いと思います。

経理、総務、法務の現場では

稟議書には関連者それぞれの三文判や「シャチハタ」が並び、契約書には実印を用い、発注書、納品書、検収書、請求書にも担当者印や会社角印などが押されます。紙を印刷し、場合によっては製本・袋とじして捺印、それを郵送などで流通させ、受領した帳票を保管するという多大な手間と時間を要します。
もっとも、現状の法制度の下、ほぼすべての文書を紙とはんこを用いずにデジタル化できるのです。
経理業務を例に挙げれば、1998年に制定され、数度の改正を経た電子帳簿保存法があります。一定の要件を満たせば、仕訳日記帳や総勘定元帳、補助元などの会計帳簿や領収書、請求書など証憑の帳簿書類に関してデジタルデータを原本として扱うことが認められ、紙の保存を大幅に削減できます。2019年9月30日から、過去の領収書、請求書、契約書などの重要な証憑も一定の要件を満たせば、デジタルデータが原本となり紙は廃棄可能になりました。
総務業務はどうでしょうか。会社法で保存を義務付けられている書類(株主総会議事録、取締役会議事録といった会議体の議事録、定款、計算書類および付属明細書、会計帳簿など)もデジタル化が可能です。会社法の書類に関しても2005年のe-文書法の施行に合わせ、デジタルでの作成・保管が可能になりました。とくに取締役会議事録のデジタル化は、作成頻度や持ち回りで捺印を求める手間から効果が期待できる領域だと思います。
法務業務もしかりです。昨今は「電子契約」というワードを耳にする機会が増えてきました。大きなメリットの1つに印紙税がかからないことが挙げられます。電子契約は印紙税法第2条で言うところの文書ではないため、印紙税の課税対象にはならないのです。高額の印紙税が必要となる金銭消費貸借契約や不動産売買契約を扱う企業が導入を進めています。
電子契約のメリットは印紙税だけではありません。契約書の印刷、製本、袋とじ、持ち回りで行う捺印、回収、保管、検索など、紙による手間やコストを大幅に削減できます。
このとおり、紙文書の保存を義務付けている法規制が日本には約300ありますが、規制緩和の流れの中、9割近くが紙に代えてPDFなどのデジタル形式による保存が可能となっています。にもかかわらず、多くの企業がデジタル化に踏み切っていないのが現状です。
私自身、この3年間、デジタル化を日本に根付かせるべく、ビジネス文書のデジタル保存に要求される法的要件を実装し、社内外でやり取りできるプラットフォームを開発・販売しています。その過程で多くの企業のトップや現場の方々と意見交換していますが、デジタル化に踏み込めない企業は大きく3パターンに分類できます。

「既存の仕組みを変えたくない」という怠慢

① 企業トップがデジタル化に無関心または否定的
これは、高齢の経営者に多いようです。ITリテラシーの低さであったり、デジタル化により享受できる効率性のイメージが欠如していたり、さらには「自分が役員の間は新しい変革は面倒」「既存の仕組みを変えたくない」との拒否反応を感じることがあります。新しいチャレンジには失敗もあるでしょう。しかし、それを乗り越えることが次のステージへの絶対条件なのです。とはいえ、世代交代を待つしかないのでしょうか?
② 企業トップはデジタル化を推進させたいが現場が否定的
これには、いくつか理由があります。1つは、新しい知識や操作を覚えることへの抵抗感。とにかく既存の業務を変えたくないという理由です。2つ目が、効率化が促進され、人員が不要になることへの抵抗感。これは経営トップ層が明確なビジョンや想いを示しリーダーシップを発揮すべきところです。今後は少子高齢化で人手不足になることは明白なことだからです。そして、もう1つが、知識不足によるもの。「この文書、デジタル化はできないと思っていた」「電子契約だと印紙税がかからないの?」といったものです。
③ 他社の動向を気にする、受け身の企業体質
これも日本では多くみられる現象ではないでしょうか。「周りの会社もまだ紙だから」の理屈付けです。確かに請求書や契約書など、企業間でやり取りするビジネス文書は相手がデジタルでの方法で同意することが必要です。しかし、企業内やグループ会社間の文書は他社の同意なく進められることです。できるところから着手すべきです。
一方、うまくデジタル化に移行している会社にもいくつか特徴があります。まずは、「トップのお墨付きがある」こと。デジタル化移行は経営者の明確な意思が必須。「ペーパーレス化は世の中の流れだからなんとなく」では、早期実行は難しいのです。
「デジタル化の目的が明確で、全社で共有されている」必要もあります。会社のどの領域の手間やコストを削減していきたいのか、紙で眠っているどんなデータをデジタル化して有効活用していくのかなど、デジタル化をして何を手に入れるか全社で共有する必要があります。
「すべての部署を統括するプロジェクトリーダーがいることも」重要です。デジタル化は、経営、総務、法務など、さまざまな部署をまたがります。横断的なプロジェクトに昇華させ、周りの人々を巻き込めるリーダーの存在は不可欠です。
また、導入に際しては「具体的なプラン」がなければいけません。すべての領域でデジタル化を一気に進めることはほぼ不可能なので、まず「この文書から」「この部署から」など、導入に際しては優先順位をつけることが必要です。

議事録のデジタル化ならハードルが低い?

最初にデジタル化をする領域の選定は、皆さんご苦労されていますが、「いちばん手間やコストがかかっているから〇〇の部署から」だったり、逆に、手間やコストの削減の効果はそれほど期待できないものの、全社へのデジタル化の展開をスムーズに進めるため、「比較的若い社員で構成されているから〇〇支社から」など、まちまちです。
先日、導入の検討を始めた企業はさらに面白い進め方でした。経営層が高齢で、ITリテラシーもそれほど高い会社ではありませんが、まずは自分たちから取り組む姿勢を全社に示したい、との考えで取締役会議事録のデジタル化から着手することを決めました。
ある種、ほかの業務フローやシステムとの関連性もそれほど高くない議事録のデジタル化は最初に取り組む領域としてはアリかもしれません。経営者層もデジタル化を体験してみて「それほど難しいことでもないな」という自信にもつながります。
そして最後に「社内外のリソースを使い分ける」必要があります。デジタル化はさまざまな法律が関係しているほか、技術的にも電子署名やタイムスタンプなど特殊な分野でもあります。ですので、「餅屋は餅屋」と割り切り、外部の専門家に任せることもデジタル化に成功している企業の条件となります。
デジタル化はすべての企業にとって、今後ますます避けては通れない分野となります。一歩、いや半歩進んでデジタル化に着手し、きたるべき時期に備えることが重要です。さまざまな法規制の緩和状況、メガバンクの電子契約基盤の整備状況など聞こえてくる情報を鑑みると、デジタル化の波は予想以上に早くやってくるのではないでしょうか。

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